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安倍首相支持の中国人と8/15に靖国神社に行ったはなし

8月15日。終戦記念日だ。各地で先の大戦の犠牲者を悼む式典が行われる。靖国神社も例外ではない。幕末の動乱以降、国家のために一命を捧げられた方々の霊を慰め、その事績を後世に伝えることを目的としているため、先の大戦での戦没者も多く祀られている。
元々は歴代の総理大臣なども終戦記念日に公式参拝をしていたのだが、A級戦犯も祀られていることなどが理由となり政治問題化。この日に関わらず参拝しただけで大騒ぎになってしまうようになった。

私は2015年の夏に中国留学をした。上海外国語大学での語学留学だったのだが、単に語学を勉強するだけでは面白くない。そう考えた私は、当時受講していた授業の担当だった吉見義明教授に相談して、上海の戦争遺構を調べることにした。
ちなみに高校時代にこばやしよしのりさんのマンガに熱中していた。「先の対戦は正しい戦争だ」「A級戦犯は無実だ」などという主張に、これまで想像もしなかった視点を与えられ、衝撃を受けたのだった。その中で、従軍慰安婦に関する論争で登場したのが吉見先生だった。私は、自分の目で確かめないと気が済まない性格だったので、吉見先生の授業を選択したのだった。ちなみに後日こばやしよしのりさんにもお会いした。
※なお、諸問題に対する私の見解はまだ定まっていない。勉強中なのでいずれ自分なりの見解を出したいと思う。

吉見先生はゼミ生でも無い一受講生に対して大変親切で、上海師範大学教授で、中国で大変有名な歴史家である蘇智良先生をご紹介いただき、上海留学中にご多忙にも関わらず大変お世話になった。
蘇先生が忙しい時は、ゼミ生の方が私の研究を手伝ってくれたのだが、その方がなんとも面白い人だった。
独学で日本語を勉強していたので、普段は日本語で全てのコミュニケーションが成立した。
彼は日本の政治にも詳しく、ある時当時の安倍政権についてどう思うかという話題になった。私は恐る恐る自分の考えを話したところ、彼はこう言った。
「私は安倍首相を支持します。彼は国際社会の通念に照らして至極真っ当なことを言っている。国防軍もやればいい。」
私は想定しなかった言葉にただただ驚いた。
なんせ彼は、日本の戦争責任の追及で有名な先生のゼミ生なのだから。

そんな彼が、上海留学した翌年の2016年夏に研究も兼ねて来日することになった。
留学中のお礼もかねて私が東京の案内をすることになったのだが、彼の依頼にまたまた驚かされた。
彼は、終戦記念日の靖国神社に行きたいというのだ。
靖国神社は彼がずっと言ってみたかった場所だったという。
どうしても、とのことで断れず、決死の覚悟で向かうことにした。

午前11:00頃。九段下駅に着いた。出口から靖国神社方面に向かう。すでに多くの人々で混雑している。道路脇にはさまざまな政治思想を主張する人々が旗を立てたり演説したり署名活動をしたりしている。鳥居に近づくと、物々しい雰囲気の街宣車が並んでスピーカーから軍歌を流したり、演説をしたりしている。

境内に入ると、大小様々な集会が行われており、登壇者が強い言葉を叫んでいる。大東亜戦争は聖戦だ、とか従軍慰安婦問題はでっち上げだ、とか。
また、軍人のコスプレをした人々や、黒ずくめのスーツの人々の集団も増えてきた。
そうこうしていると本殿までたどり着いた。

本殿あたりでは、日本武道館で開催されている全国戦没者追悼式の様子が、ラジオ放送で流れており、人々は聞き入っている。
正午が近づくにつれ、騒がしかった境内は自然と静まり始め、ラジオから流れた黙祷の合図と共に人々は1分間の黙祷を行った。
その後、天皇陛下のお言葉が始まると、境内にいる多くの人々が最敬礼に。そして、お言葉が終わるとともに「天皇陛下万歳!」と人々が叫び始め、万歳三唱が行われた。
さらに、国家君が代や軍歌海ゆかばなどの合唱が行われるなどあたりは異様な雰囲気に包まれた。

私は戦死した先祖の研究で、豊富な資料を持つ靖国神社に何度か足を運んでいたので、普段の静かな靖国神社と比べてこの日の雰囲気には驚きを感じた。
一方で、中国人の彼と共にいることでヘイトスピーチや最悪の場合暴力を振われる可能性も覚悟していたのだが、その点は全く何も起こらず一安心であった。
大変興味深い1日であったが、個人的には静かな靖国神社で戦死した先祖に想いを馳せる方がいいかなと思った。

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