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「三菱の至宝展」に行ったら三菱創業四代のことが知りたくなった番外編①古典籍と蔵書印のはなし

文字を手に入れた人間は文字を見るとどうしても読みたくなってしまうもので、意味が取れそうで取れない漢字の配列を眺めるのはなんだかスッキリしません。本質的には中身が分からないことには古典籍の本当の価値は伝わらないのかもしれませんが、古典籍は文字以外にもたくさんの情報を持っており、実際に様々な側面から史料として研究されています。

例えば、「三菱の至宝展」で展示されている古典籍には様々な「蔵書印」が押されているものがあります。これの蔵書印は所有者を明示するという目的以外にも、貴重な古典籍を手にしたということを誇示する意味合いや、かつて偉大な人物の元へ渡った史料がいま自らのものであることを示すという自己アピールのためにも使われていました。本を手にした歴代の富豪がニヤニヤしながらはんこを押していたと想像するのもなかなかおもしろいでしょう。

そんな、自己アピール要素も多分に含む蔵書印ですが、それらをたどっていくとその史料が誰の手によってどのように伝えられたのかがわかります。これは、私人間の交友関係や情報伝播の経路、地域間の交流、流通網の状況などを紐解くためのヒントとなることがあり、時に書かれている内容以上に重要な物証となることもあります。また、書籍に使われている紙や綴じ糸の素材、字体、印刷方法や版数(版のヤレ具合)、製本方法なども書籍の背景に存在する社会や人間関係を紐解く重要な証拠になることがあります。このように、古典籍は物理的要素も含めて重要な史料価値を有する存在なのです。

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