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わかめラーメン

砂浜で一人 僕はわかめラーメンを食べている 顔に乾いて少し白くなった一筋の線 鼻をすする 君は両手いっぱいにわかめをもって横に座る スペシャルわかめラーメンだね 精一杯の笑顔の君を 滲む瞳で見つめていた

    • 夕陽

      こんな時、僕は 何て言葉をかければいい 重い扉が開く時 過去と未来が入り混じる白黒の世界 サヨナラとまたねの間 言葉が喉に詰まり 僕は口を噤んだ それでも僕は言葉を紡ごう この気持ちを忘れないように 今すぐ君を連れ出して 丘の上夕陽を見に行こう 西の空を見上げ祈るのさ 明日はきっと晴れるから 明日はきっと晴れるから

      • 命絶日

        朝、いつもより早く起きる 軽く響く頭痛をあしらって朝食の準備をしよう 今日はなんの服を着ようか いつも会わない友達とランチの約束 まあいいか お気に入りの食器を買って いい香りがする花を買った 小さな痛み、棘が指に刺さる いつもより鮮明な赤 大丈夫、私はまだ生きてる 最初はほんの一瞬 魔が刺したように 思っただけだったんだ でも揃えたパズルのピースが 一つずつ剥がれていくのを 私は耐えられなかった 私たちはピンと伸びた糸の上を歩く その緊張がいつ弾けてしまうか いつも

        • わたしの影はわたしが忘れた言葉を食べる 伝えたかった気持ちを 足元に積み上げては 影はわたしの言葉を食らう そうしてわたしは真っ暗の部屋の中で 忘れた言葉を額縁に入れ とびきり甘いコーヒーを飲むのだ

          彼女

          出会った日、彼女は海だった 次に出会った日、彼女は一杯のホットコーヒーだった そして彼女は音楽に ペロペロキャンディに ビー玉のたくさん詰まったガラス瓶に 次々と姿を変えていく 今日も彼女は昨日の自分を上書きしていく 刹那にもそれを愛していかなくてはならないのだ 大きな破裂音がして、頭が上を向くのに合わせ目線が追いかける 早すぎた花火が空虚に花開いている 耳にジンジンとした痛みを感じながら 水溜りに映る色とりどりのひかりを眺めていた

          警報

          突如、緊急の警報が辺り一面の空気を掌握する スローでコマ送りのように 刻一刻と針は進み 人の声と人の足音を微かに耳にしながら 自分の鼓動だけが 痛くしっかりと聞こえる ああ、まだ生きていたいんだなあ そんな心に呆れたり、少し和らいだりした

          張り紙

          人を愛することは 無限のエネルギーみたいな不思議な力ではなく 日々の思いやりの積み重ねです 嘘だと言うのなら あなたは一体 どれだけ愛を感じ どれだけその愛を忘れて来たのか 数えてみたらいい 今その愛を忘れてしまう前に 愛する人の事を思い描いて 眠りにつくといいでしょう

          灯り

          ベタベタ さらさら ぐちゃぐちゃ バラバラ 重なって 通り過ぎて また重なる だらだらな手を握って 僕はとぼとぼ歩く 夜11時 市街地を抜けた 細い街頭の立つ小道で

          ハサミ

          もし今ここで手元のハサミを手に持って 自分の首元にグッと近づけて 君の手を取り一緒にハサミを握ったならば 君は僕の波打つ頸動脈に 泡が立つほどの血の海を 見る事ができたのかもしれない

          オレンジ

          オレンジの信号 オレンジの飲み物 オレンジのカーテン オレンジのネコ オレンジのパジャマ オレンジは危険 オレンジはいい香り オレンジは暖かい オレンジはちょっとすっぱい オレンジは過去 オレンジは不安定

          オレンジ

          踏切

          僕の頭上に広がる 分厚く薄暗い雲は 今にも暴発してしまいそうだ 僕は踏切で倒れた遮断機の前に立っていた 通り過ぎる電車の揺れ動く窓越しに ぼんやりと君の姿が見えた気がした

          女の子 ショートヘヤー 26歳くらい 一人暮らし2ldk 一階 ゲストルーム 畳 きれい ベッドルーム きたない 放置された下着 ソファー ぬいぐるみ 犬を飼っている 裏口から繋がる裏の家がハンドクリームのお店 電話が鳴り 裸足で出て行く 草を踏んで歩く お茶を麺つゆに交換 仕返し 部屋のいたるところにしこみ 物の下に爪楊枝 糸とつながっている 刺さる

          はじまり

          僕の父は電柱だ 僕の母は小鳥だ そして僕はハサミとして生まれた なんて突拍子のない人生だ

          はじまり