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詩作

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kazumaの詩を書く試み。試作、思索、詩作。
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記事一覧

詩作Ⅷ 雨の水曜日

こないださ 水曜さ 水曜っていつさ? 雨が降った日さ 僕さ こうもり傘を差しててさ さよならってさ 言い忘れててさ 雨を踏んでたらさ 水たまりの向こうにさ 僕のさ 僕の傘がさ さかさまになっててさ さかさまになった僕はさ きっとさ さみだれの花火をさ 観ててさ あまだれのシロフォンをさ 聴いててさ みぞれあめのあめだまをさ ひとみから落としてさ あのさ 明日さ 明日っていつさ? 水曜日に雨が降ってたらさ 【詩作のあとがき】 スーパーの

詩作Ⅶ 折り紙の星

 折り紙の星を見上げる  小さな樅の木のてっぺん  シャンシャンシャン きみは口ずさむ  凍えた口びる トナカイのそりすべり  ぼくのポケットには二枚の銀貨  この街に サンタクロースはいないみたい  あたし いい子じゃなかったかしら?  両手にシュトレンの包みひとつ  どこから来たの?  ぼくは雪の子 きみは星の子  名前も知らない ベルが鳴る  銀貨をひとつに シュトレンはふたつに  あたし 行きたいところが あるの  シャンメリーの瓶を傾けて

詩作Ⅵ「青い鳥の話」

ねえ 青い鳥を 知ってる? 知っているよ チルチルとミチルの話さ 青い鳥は どこへ 行ったの? 最初から 家にいたのさ 青い鳥を 見たことある? あるよ ほら 図鑑の中に描かれてる ねえ あたし ほんとうに 青い鳥を探しているの あなたは まだ 何にも 知らない ここが おとぎ話の国だと 思ってる ここに チルチルとミチルは いない 青い鳥は 最初から家に いたわけじゃない あの美しい カワセミの尾羽根が 開くところを その眼で見たことがない あたし

詩作Ⅴ『蛙の雨合羽』

蛙の雨合羽 着込んだ少年は 五月雨雲の 橋の上 「蛙の子は、蛙。」 はやし立てる声がする 細い腕に 合羽の袖を通し  向こう岸へと消える がらんどうの街に 蛙の子が紛れ込み、 ひとっこいない高架橋  霧雨の朝 君は川へ飛び込んだ この合羽は取れなくて、 剥がそうとしても駄目で、 雨の日じゃないと息が苦しい、 ねえ、ひとに生まれればよかったな、 だからさ 橋の欄干で 鯉みたいな 雨粒が跳ねて ドレミファソラシの音がする 高い方のド、の音は聞こえな

詩作Ⅳ「海辺のナポリタン」

海辺の街に 君はいて ナポリタン 作ってもらう 夢だった、 カモメと 飛行機が 空を追いかけっこ 僕はテトラポッドのない街で暮らす ピーマンと、玉ねぎを、炒める 貝殻のなかで眠っていた頃 潮騒は遠く 夜は更けて 背中合わせに歩いていった 砂浜の先は十字路 口を拭う 硝子みたいな真夜中 波の音がする そして、ケチャップを口につけた君を 忘れた <作者あとがき> ナポリタン、誰かに作ってもらうのが夢でした(が、今日も自分で作りました)。ピーマン

詩作Ⅲ 鳥に生まれなかったわたしは

鴨は 飛べる アヒルは 飛べない 合鴨は 鴨とアヒルの 合いの子だから 飛べるかどうかは 分からない 父と 母は 羽根を持たない 鳥に生まれなかった わたしは 水辺を離れ 家を去り 遠い よだかの翼に 抱かれて あの星のひかりを つかんで 飛ぶ わたしは 合鴨のもとへ 降り立ち 君は 飛べる とささやく よだかは かならず 君を 迎えに来る 鳥に生まれなかった すべてのものの 朝 【作者あとがき】 あけましておめでとうございます。もの書きのka

詩作Ⅱ 「星のまたたき」

星が瞬く 君がまばたきする 私は草 砂上にくずおれる 一本の葦 目を瞑って、遠い夜空へと駆けるとんびの羽根を拾う 私の目に帳が降りるころ、あなたは目を覚ます この世の果てまで鳴り響く鬨の声を聞いて 午前二時 布団をめくり上げ、頭を掻きむしり 蛇口から捻り出した水道水にすがりつく私を あなただけが見つめている 烏が朝を目がけて飛び、樅の木の天辺を明け渡したあとも あなただけがそこにいる 君の瞳の中には夜がいて、 その夜の中には星があり、 私はただ一枚の羽

詩作Ⅰ 「月の泪」

 月面は湖上に在らず、天上の水面に映るのみ  湖上を覗き見て、映るは雪の燈明、世の幻  鏡面世界に人は棲みて、愁えることを知らず  未だその眼で月光を看ることは能わず  霧の中で嬰児のごとく眠る   夢は儚く散りぬるを  落葉、煎じ詰めればひとに同じ  湖上に落つる葉 葉面に降り注ぐ月の雨  誰がこの幻を覚えていよう  我等は唯、水面をかき分け  鏡の中の月光を浴し  疑いもなく水底に沈む  月から落つる泪 さざれ石  kazuma あとがき