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迷子のナビとウィスキーの夜

俺は古いバーのカウンターにひとり腰を下ろし、ウィスキーを頼んだ。タポツとの旅がまだ頭の中を駆け巡っていた。旅の目的は特にない。ただ、動きたくなったのだ。

「また行ってきたのか?」バーテンダーがグラスを俺の前に置く。

「ああ、タポツと。」俺はグラスを持ち上げて軽く挨拶した。ハードボイルドな映画のワンシーンみたいだ。

「彼との旅はいつも面白いな。」バーテンダーは笑う。それはそうだ、タポツはいつも何か面白おかしいトラブルを引き寄せるタイプだ。

「今回はどこに?」彼の問いに答える前に、俺はウィスキーを一口飲んだ。

「南の小さな町。でも、途中で道に迷って、結局どこに行ったのか分からなくなった。」

「タポツの車のナビはまだ壊れてるのか?」バーテンダーが大笑いした。

「あのナビは生まれつき壊れてるんだ。でも、それが面白い。」俺も笑いながら答えた。

その夜、バーの明かりの下、ウィスキーとタポツの話で時間を忘れていた。タポツのナビのせいで迷子になるのはもう慣れっこだ。そしてそれがこの旅の醍醐味だった。

結局、俺たちは目的地にはたどり着かなかったけど、それはそれで良い。タポツとの旅はいつもそんな感じだ。目的地よりも、その途中での出来事や笑いが大事なんだ。

「次回はどこへ行く?」バーテンダーの質問に、俺はにっこりと笑って、「タポツのナビ次第だな。」と答えた。

だから、旅はまだ終わっていない。

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