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日本中に広がるブランド牛の源流「宮古島」。牛農家の朝に密着したインタビューから見えてきた、新たな可能性。

密着インタビュー動画は上の動画を御覧ください。記事は下から始まります。

東京から飛行機で3時間。東洋一の絶景ビーチがある島「宮古島」。みなさまはその「宮古島」が、日本中に広がるブランド牛の源流であることをご存知でしょうか。実は宮古島および八重山諸島周辺は、血統の良い子牛の繁殖で有名な地域であり、全国の農場からブランド牛の原点となる子牛の買い付けに訪れる島でもあります。

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共進会と呼ばれる子牛の品評会もあり、毛並みから立ち姿、骨格、肉質など、より良い子牛を育て上げるための取り組みも盛んです。

ただ宮古島産和牛となると、「幻の和牛」と呼ばれるくらい少なくなってしまいます。どうして幻と呼ばれるほど、生産が限定的なのか。その理由を調べたことが今回の取り組みのはじまりでした。

牛農家の朝に密着

ブランド牛の源流、ミネラルと自然が豊富な宮古島、温和な気候。これだけ聞くと、もっと宮古島で肥育された牛を外に売り出していくことができそう!と思うのですが、なぜそうではないのか。その理由を知るために、宮古島の牛農家の朝に密着インタビューをしてきました。

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宮古島の日が昇る前、午前5時頃に牛舎に向かいます。「朝は牛の様子を眺めるんだ。調子が悪いのを見落とすと大変だから。」コーヒーを片手にそう語るのは牛農家の喜屋武さん。一頭づつ、昨日と変わりはないかを眺めていく。日々生活の中で自然に行っている朝のルーティーンなのだろう。その目線は仕事としてテキパキという感じではなく、ゆったりとした時間が流れていた。牛が鳴いてうるさいのかなと思っていたが、おとなしく静かで、島の時間という感じだ。

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システム化された牛舎の掃除

牛の状態を見るのが終わったら、牛舎の掃除に入る。牛の状態に清潔さは直結するという。おいしい牧草をたくさん食べた牛は排泄物も多い。どのように清潔に保つかも、牛農家の重要な仕事だ。

「うちの牛舎は内勾配になっているので、掃除しやすいよ。俺はずぼらだから、楽にできる方法を考えるんだ」そう言いながら外に向けて牛を移動させながら排泄物を固めていく。そのあとに登場するのはホイールローダ。大きなシャベルがついた農業機械で、ぐるっと2周する。スムーズにきれいな牛舎になっていく。

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イメージ的に朝の肉体労働で、大変だとおもっていたので、驚いた。「辛いと思ってるでしょ?牛農家思ってたより楽だろ?」と喜屋武さんは笑う。「この牛舎は新しく立てたときに、楽できるように作ったんだ、牛のスペースも余裕をもたせてあるので、調子が悪くなる牛も、ずいぶん少なくなったよ。」牛も距離が近いとストレスを感じるようだ。このへんは人間も一緒だなと思った。

餌の時間は1日2回。宮古島で育てた牧草。

掃除が終わったら、朝の餌の時間だ。近くの牧草地で育てた牧草を与える。元気良く食べる牛がほとんどだが、あまり食べない牛がいた。「実は今回の牧草は、ちょっと育ちすぎて、最高ってわけではないんだ。その証拠にほら。あの牛は美味しい草しか食べないよって顔してるだろ。」たしかにその牛は、餌の牧草があるにも関わるず、横になってすぐに食べようとしない。おいしい牧草を作るのも牛農家の重要な仕事のようだ。

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餌の時間は牧草のいい匂いがあたりに広がる。「餌が散らばっても、ほら内勾配だと掃いて入れるだけ。昔と比べて腰にも負担がないよ。」と牧草を掃きながら語る。実は島のゆっくりした時間は、色々な工夫によって成り立っているのではと思うくらい、意外に効率化されている。そのことはずぼらだからと語るところに宮古島らしさを感じた。

牛農家もITの時代

「これで一旦休憩。あとで今度子牛が産まれる牛にセンサーを付ける、牛農家もITの時代。これで出産の時に子牛が死ぬこともほとんどなくなった」とセンサーの説明をしてくれる喜屋武さん。

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センサーができる前は、産まれるまで徹夜して待つ必要があったという。また立ち会えないで生まれてしまうと、子牛が死んでしまう場合があるという。子牛一頭育て損なうと、30万円から80万円の損失になるため、牛農家にとっては切実だ。この辺からだんだん、なぜ肥育を行っていないのかの理由が見えてくる。

休憩しながら聞いた。肥育についての現状

「今インターンで働きにくる農業大学の学生がいるが、儲かって、楽で、面白いから牛農家に戻ってこいよっていうんだ。だから戻ってきたときにがっかりされないうように、肥育にもチャレンジしたいとは思ってるよ。夢はたくさんある。」と語る。子牛の繁殖を続けながら、まずは少頭肥育など規模を大きくしようとしている喜屋武さん。

「ただ牛農家だけでは、今どんな肉質の牛が求められているかはわからない。肥育には、子牛を購入してから20ヶ月かかる。20ヶ月後にどこに売れていくかが想定できないと、肥育をはじめることは難しい。」

もともと肥育をしている事業者は、その先の肉のバイヤーや買い付け先がある程度決まっているので、肥育した牛が流通に乗っていくが、子牛繁殖の宮古島では、肥育牛は八重山諸島付近での消費がメインとなっており、全国の流通に乗っていくわけではない。肥育した牛は1トン近くにもなる。売り先がない状態で、牛舎においておける日数にも限界がある。宮古島内で効率を考えると繁殖のほうが良いのだ。

宮古島内にいけば安く食べられ、島外では他のブランド牛に引けをとらない宮古島産和牛。これを増やしていこうとする個人農家の取り組みを応援する方法はないだろうか。

「20ヶ月かかる」「ブランド牛の源流」「買い付け先が決まっていれば育てられる」この気の長い話は、もしかすると一つの可能性があるのでは思った。20ヶ月という気の長い時間を体験にできないかということ。20ヶ月まつことを楽しみにしてくれる、20ヶ月の間の過程に価値を感じてくれる、時代にあった少頭数で、丁寧にそだてあげることを求めている。そんな人達とつなげてあげることで、チャレンジとビジネスを両立できるのではないか。

クラウドファンディングや、東京都の飲食店との協力で実現できるかを現在模索中。3月にまた牛農家と現地の飲食店の方と、協力して進められないか、引き続き進めていく予定です。

これからも、牛農家の写真や、インタビュー動画をアップしていきますので、ご興味のある方は購読よろしくおねがいします。

inteview&映像:黒沼勇太、加藤修平


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