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「サッカー」と「ホルモン」についての考察

医療系の学校に通っていた学生時代、ホルモンのことはよく勉強しました。焼肉で食べるホルモンではなく、私たちの身体にあるホルモンの話です。

ある本を読んでいた時、興味深いトピックがあったので考えてみたいと思います。


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そもそもホルモンてなんぞやという方のために、軽く説明します。

Googleでホルモンと検索すると1番上にこれがきます。キレそうです。ホルモンというのは、専門用語で言うと内分泌系(外分泌系は汗とか唾液などです)と呼ばれるもので、血液中を移動する「情報を伝達するもの」だと思ってください。私たちに何らかの刺激が加わった際に、細胞などからホルモンが分泌されることによって、特定の機能を発揮します。

サッカーやスポーツをしている人なら「アドレナリン」というホルモンを聞いたことがあると思います。「試合中はアドレナリンが出ているから痛みを感じない」みたいな話です。要は、人間が何か行為をするとき、特定のホルモンが多く分泌されることが科学的にわかっているので、「このホルモンにはこういった効果がある」という視点で研究が進めやすい、ということです。「座禅を科学する」みたいな話になってくると、座禅はなぜ良いのか?的な曖昧な部分を(本来曖昧でいいのだけど)、ホルモンという視点で「〇〇ホルモンが多く分泌されるから、科学的に良い」とか何となく言えちゃうわけです。

サッカーの話をします。


競争の科学

アルゼンチンに住んでいた時に、確かフォローワーの方からお勧めしていただいた本で、Kindle版がないので日本に帰ったら読もうと思っていたものです。ただ読み進めてみると、昔読んだことがある本でした。あるあるです。ただ時期によって同じ本でも得られるものが違うので、良しです。

本全体の感想としては、2014年の本なので(和訳版がそこということは諸般はもっと前?)、少し見解が古いなと思う部分もあります。特に組織論とかです。その点『ティール組織』と一緒に読むと良いかもしれないです。

それは置いておいて、本書の第9章『競争とホルモン』のところで、「テストステロン」というホルモンが出てきます。有名なホルモンの一種です。

『20年前、ネブラスカ大学教授のアラン・ブースは、州都リンカーンの名門チェスクラブに行き、メンバーに次の大会でテストステロンレベルを調べさせて欲しいと依頼した。メンバーがするのは、コップに唾を吐くことだけだ。』

つい20年前の話なんで、言われているようにホルモンに関してはまだまだ不明な点が多いみたいです。あと、脱線するんですが、アメリカの本を翻訳した本を読むと、このように必ず「実験」のエビデンスを見せてきます。まあ実験結果が全てだとは思わないので、実験が行われて(実験の中で)証明できたからといって、おおじゃあ事実やん、とはならないですが、英語から翻訳された本は実験結果を入れてくることが多いです。その点純日本の本は、それ以外の方法でエビデンスを提示したり、納得させようとすることが多い気がします。

話を元に戻します。

『実力が1番の選手は、初戦の前にテストステロン値が上がっていなかった。おそらく自信がありすぎたために、本気で勝負する準備を身体が怠っていたと思われる。結果として、彼はこの試合に負けてしまった。一方、実力が下から2番目の選手は、厳しい戦いを予想していた。この選手のテストステロンレベルは、全試合の前に大きく上昇しており、彼はすべての試合に勝った。テストステロンは、チェス選手に悪影響を及ぼしたりはしなかった。それは、彼らを強くしていたのだ。
この研究の結果、さらなる研究を必要とする、2つの興味深い疑問が生じた。1つ目は、その攻撃性で悪名高いホルモンが、チェス選手が頭脳で相手に勝つうえでも役立った理由は何かということだ。2つ目は、極めて興味深い可能性についてだ。つまり、私たちの身体の精神内分泌物質が、競争が始まる前から勝敗を予言する反応を示すのはなぜかということだ。
競争は体内の化学反応を変化させる。競争が激しくなると、この変化はさらに大きくなる。』


テストステロン

本書では、競争においてテストステロンが果たす役割と重要性を説明しています。これ、だからといって何やねんという話なんですが、「闘い」であるということを理解していないサッカー選手や指導者には重要な視点で、モチベーションを高めることや、士気を高めることは、サッカーというゲームにおいては常に重要で、何よりも先に来るものです。ただそれは根拠のない精神論のように日本では捉えられてしまうため、このように「エビデンスで示すことができる(可能性がある)」というだけでも、わかっておいて損はないということです。

例えばアルゼンチン人にサッカーで「闘え」と言ったら「そりゃそうだろサッカーなんだから」と全員が納得します。そこの余計な議論は発生しません。しかし日本の場合「ちっ精神論かよ」派閥があるので、納得させるというコストがかかります。だからまず、日本人とアルゼンチン人の指導者は選手に対して役割やスタート地点が異なります。

『重量挙げ選手やホームランバッターだけでなく、エリート外科医やチェス上級者のパフォーマンスも同じように引き上げるという事実が判明したことで、テストステロンへの見方は根本的に変わった。
「私はテストステロンを、攻撃性ではなく強烈さの面から考えたい」ブースは、過去20年のテストステロン研究を振り返ってそう言う。「このホルモンは、活動に取り組むときの強烈さの度合い、挑戦に対する反応の度合いを高めることなのだ」「テストステロンは、モチベーションだ」


ホルモンが作用する時間

重要なのはここから。

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