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私たちはどういうサッカープレイヤーを育てるべきか——。致命傷になり得る5つの能力

育成世代におけるメソッドのようなものは世に溢れていますし、欧州や南米で構築されたものをそのままコピーする(しているつもりになる)ことも多いと思います。

私が思うに、そのほとんどが、タクティカルな部分、テクニカルな部分、あるいはフィジカルな部分の習得に重きが置かれていると思うのですが、それだと具体度が高すぎます。〇〇メソッドと名が付けられているもののほとんどがそうです。

私の考えでは、あるひとつの哲学やスタイルを子供たちに習得させることによってではなく、"サッカーというゲームに要求される"普遍的に必要となる能力、つまり「習得していないと(サッカーというゲームをプレーする上で)大人になってから致命的になる能力」を取りこぼしなく身に付けさせることによって、その「育成」という役割を確かにするべきだと思うのです。そのように考えると、例えばキックとか、トラップとか、マークとか、そういったことは表層部分であり、武器にはなろうとも、致命的にはなりません。


5つの能力

今回は殴り書きですので、5つ、私が"ピッチ上において"選手が身に付けていないと致命的になると思っている(=育成世代で絶対に身につけるべき)能力を軽く説明して終わりにします。これらはサッカーというゲームにおいて普遍的であり、どのどうな戦術でサッカーをしようが、どのようなスタイルや哲学のチームでプレーしようが、一向に変異しません。

1.コミュニケーションを成立させながらプレーする能力
2.マルチタスク能力(同時実行能力)
3.ピッチ上で感情を表出させる能力
4.相手を見ながらプレーする能力
5.共感能力


1.コミュニケーションを成立させながらプレーする能力

サッカーをプレーするにあたって最も重要であると言っても過言ではありません。私の中で「コーチング」と「コミュニケーション」は異なる概念ですし、「コミュニケーション」と単に言っても言語によるもの以外にも様々な方法がサッカーには存在します。詳しくは私の著書をお読み頂ければと思います。


2.マルチタスク能力(同時実行能力)

Tweetした通りですが、サッカーのピッチ上では基本的に「同時性」と「連続性」が伴います。これを避けて通ることはできませんし、ハイレベルになればなるほど、マルチタスクをこなす能力は必須になります。そのように考えると、「何かをしながら何かをする」ことを、トレーニングでも、あるいは私生活でも訓練していくべきではないかと私は思います。もちろん、"サッカーをするなら"です。


3.ピッチ上で感情を表出させる能力

これに関しては、賛否がある部分かもしれませんが、サッカーを深く理解しようとすると、適切なタイミングで「感情を表出」し、素早く「感情を回復」をする能力というのは、必須であることがわかります。こちらも詳しくは著書を参考にしてください。


4.相手を見ながらプレーする能力

相手を見ながらサッカーができるかどうかというのは、習慣であり、大前提であります。サッカーというゲームの場合、技術を発揮するゲーム(競争)ではなく影響を与え合うゲーム(闘争)ですから、「チームメイトよりも相手を見て」サッカーをする必要があります。これを大人になってから身につけるというのは、不可能ではないですが、なかなか難しいものがありますので、育成世代で「当たり前のこと」として身に付けておく必要があります。相手を見てプレーできれば、それはつまり戦術や状況に縛られず、その局面を解決(打開)するできる可能性があるということを意味します。

「相手とって嫌なこと・怖いことをする」のはまた必須ですが、それには相手を見ることが大前提になります。「相手とって嫌なこと・怖いことをする」というのは、何も「戦術」のような高度なことではなく、相手が右に行こうとしたら左に行くとか、相手が怖がってたらさらに怖がらせるとか、相手が前に行こうとしたら後へ行くとか、相手を右に誘導して左に行くとか、そういった簡単なことを言っています。これができないと、致命的になります。


5.共感能力

これは、チームメイト(時には相手)の表情や仕草、動作によって「共感」できるか、全くできないか、ということです。例えば表情や仕草を見て仲間が「苦しい」と思っているときに一緒に苦しめるか、それを感じ取れるかというのは、プレーや振る舞いの選択に大きな影響を"与えなければなりません"。感情への共感も然り、また、例えば仲間が「パスをしたがっている(パスを通したがっている、パスで逃げたがっている)」などの、プレーへの共感もまた然りです。

表情や仕草によって、仲間の行動や言動、発生する現象を予測しようとする能力が身についていないと、サッカーのゲームをプレーするのは難しくなってしまいます。

この能力に関しては、サッカーの練習をしているだけでは身に付かないものである可能性が高く、私が育成世代のメソッドを体系化するのであれば「ピッチ外」における“トレーニング”に、より重要度を置くだろうと思います。


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これらの5つの能力が身に付いて、初めて、タクティカル、テクニカル、フィジカルの能力向上が意味を成してきます。これら5つの能力が基盤として構築されていないと、選手たちは、いつかレベルをあげたいとき、上手くなりたいとき、苦しむことになります。

育成年代に取り組むべきことは、最新のトレーニングメソッドでアクセサリーを身に付けることではなく、裸でピッチに立つ子供たちに、洋服を着させてあげることです。意味不明かつ微妙にスベっている比喩表現で、この記事をしめたいと思います。


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