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Xaviは偶然か必然か——。サッカークラブの基盤と採用

昔読んだ本が今になって価値を出してくることは、ままある。自分の経験値や知的レベルが追いついていなかった場合もあるし、あるいは興味のあるトピックや従事している事柄などの違いから、当時と現在では違う効用を示している可能性もある。私にとって『ゴールは偶然の産物ではない FCバルセロナ流世界最強マネジメント』は、まさにその一例であろう。本書を読んだのは10年も前の話だが、今まさに読むべきものだと感じている。

現在私は、監督という立場でありつつ、これから先の未来があるサッカークラブのブランディングやその他の領域に携わっている。クラブは創成期(一番最初のフェーズ)で、量的・質的に大きな変化が日々起こる。そのような流れに身を置き、今何が起こっているのか、組織はどう成長していくのか、どう失敗し成功するのか、それらのことを身をもって経験できることは非常に幸運なことで、本当に学ぶことが溢れている。

本来サッカー監督という仕事は、どこまでいってもクラブに雇われる側の人間である。雇われる側の人間は、雇う側の組織を正しく評価できなければ、自分の身を守ることができない。特にサッカー監督は「責任」を担わされる職業であるから、だからこそ、自分の身を守る術を知っていおかなければならない。良い監督は、良いクラブにしか生まれない。それゆえ、私は今、サッカークラブそのものを内側から学ぶことができていて、幸運なのである。将来の自分は、今の自分に感謝するだろう。


“基盤”とは何か

基盤を構築することが、すなわち創成期に必要なことである。基盤は明確なコンセプトのもと構築されていなければならず、また改良を重ねていけるシステムとして機能しなければならない。サッカークラブは1年、1年、1年、と時間を刻んでいくが、それぞれの年ごとにバラバラの方向を見て歩いていたら、再現性がなく、検証ができず、時間を有益に積み重ねていくことができない。

属人的になりすぎないように注意する、ということがつまり基盤を作ることである。もちろん個人のタレントによって色々なものが左右されるだろうし、「〇〇でなければできなかった」と後から振り返ることも多々あるはずだが、それでも可能な限り人に依存しない基盤を構築しておく必要がある。ピッチの中も、ピッチの外もである。ナイル川に流れる水は日々が入れ替わっているが、どれだけ水が入れ替わろうとも、ナイル川なのである。


“採用”とは何か

前述したように、私は採用される側であり、また自分の身の回りを固めるスタッフや、一緒に戦う選手を採用する側でもある。そこにはまた精度の高い基盤が

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