【Vol.1】サッカークラブのロゴ製作プロセスの裏側:『なぜロゴは丸いのか?』
今シーズンから監督兼CBOを務める鎌倉インターナショナルFCの「ロゴ」及び「ビジョン」をリニューアルしました。去年の2-3月頃から準備を始めた記憶があるので、先日のリリースまで約1年くらい時間をかけたことになります。このロゴやビジョン製作に関しては、クラブのブランディング責任者を務める立場として様々な意味を持ちます。またクラブを「リ」ブランディングするための大きな一歩であり、また最も重要な作業であると言えます。
もちろん私は素人なので、この1年リブランディングの準備を進めていく中で、たくさんのことを学び、吸収しました。
今回はロゴに関して狙いを持っていたこと、プロセスの進め方、得た知見、反省点などを、共有していきたいと思います。
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■ロゴ製作のフロー
まず今回のプロセスに主に関わった組織構造ですが、
「クラブ(オーナー・GM)」⇄「クラブのブランディング責任者(私)」⇄「クリエイターグループ」
の3グループで機能していたというイメージです。それぞれ3セクションがそれぞれの仕事をし、コミュニケーションやアウトプットが3セクションを行ったり来たりして、徐々に完成に向かっていったというイメージでしょうか。
主にブランディングをまとめる私が「ブランディング的に(あるいはデザイン的に)」こうしたいというアイデアを出し、クリエイターグループのディレクターに伝え、それをディレクターがデザイナーに伝え(あるいは私から両者に一気に伝え)、「デザイン的に(あるいはブランディング的に)」これはどうだ、という形でアプトプットをもらい、ある程度まとまった段階で「クラブ的に」判断してもらうためにオーナーやGMに投げる、というのが基本的なフローでした。
この組織構造やフローは、いろんなことを考慮してベストだったと思います。ブランディングの素人が考える「デザインにおける組織構造」に関する詳しい話は、後ほど書いていきます。
■なぜロゴは「丸」ではければならないのか?
少し最初のプロセスを飛ばして、今回出来上がった新しいロゴが、どういう意図で(どういうスタートで)出来上がっていったのか、つまり「こういうロゴにしてほしい」と1番最初に告げた内容はなんだったのか、について話していこうと思います。
私がサッカークラブのロゴをつくる上で1番最初の「(デザイン的)条件」としてクリエイターチームに伝えたことは「丸いロゴにしたい」ということでした。その理由を書いていきます。
①:「エンブレム」と「ロゴ」の中間をとるため
エンブレムとロゴの正確な定義はわかりませんが、ここでは、いわゆるサッカークラブとしては伝統的な「盾」の形をしたシンボルをはじめ、「ぱっと見でサッカークラブ(あるいはスポーツ系)とわかる」シンボルのことを「エンブレム」と呼ぶことにします。
バルセロナ
一方で、それ以外の「一見何の組織なのかわからない」形をしたシンボルのことを、「ロゴ」と呼ぶことにします。
ユベントス
ユベントスが斬新な「ロゴ」に変えてからしばらくが経ちました。世界では真似するクラブが出てこない中で、日本ではいくつか出てきているのはなぜなのか、ということにも通じる話だと思うのですが、やはり『「ロゴ(一見何の組織なのかわからないシンボル)」では勝負ができないから』だと思います。ユベントスほどの既に世界的にみて「サッカークラブ」と認知されている組織であればできることかもしれないですが、それ以外のクラブは認知度という点で薄く、何をするにしても「自分たちは(そもそも)何者なのかが示せない」という問題点が発生します。そうすると、他の世界に埋もれてしまいます。
これは「サッカー以外の領域に進入したい」と考えているクラブ(私たちもそうですが)が陥ってしまうミスだと個人的には分析をしていて、本来「“サッカークラブが”他領域に入り込む」からこそ(私たちがやる)価値があることなのに、「我々はサッカークラブ(あるいはスポーツ系)である」ということが全く示せないロゴになってしまうとあまり意味がないからです。他領域側から考えてみると、「サッカークラブだから」コラボレーションをする意味(価値)がある、という場面が圧倒的に多いのです。
ここで発生するジレンマは「エンブレムだと他の領域に入りづらい(ビジュアル的に難しいことが多い)」点で、それゆえ日本のスポーツクラブは「アパレル用(?)」のロゴを別で製作してしまいます。すると、そのロゴの認知を考慮してブランディングをしなければならず(2つのロゴに相互性があるのであれば別ですが、日本では別文脈のものが多い)、結果2つ(エンブレムとロゴ)の両者が弱くなってしまう、のです。
そうならないためには『エンブレムとロゴの中間をとる』ことが必要だと考えました。つまり「サッカーサッカーしていない(他の領域に進入しても馴染める)のだけれど、サッカークラブとわかるシンボル」にするということです。
そのために私の考えでは「丸」であることが第一の条件でした。
②:文字を組み込める
そのために必要なのは、全体のビジュアルもそうですが、何より『FOOTBALL CLUB』や『F.C.』あるいは「スポーツっぽいチーム名」などの文字を「ロゴの一部として(自然に)組み込めること」だと思っていました。文字さえ組み込めれば、それ以外の要素はある程度自由にやれると思ったのです。
NEW YORK CITY FC
このように、ロゴの一部として文字を組み込むことができるので、サッカークラブっぽさは残しつつ、全体がサークルであることで次のような利点が効いて来ます。
③:分解できる=馴染める
つまり「要素の分解ができる」という利点です。ロゴの用途やコラボレーションのニーズによって、文字を取り除いたり、中央のモチーフのみ取り出すことができるデザインにしておけば、どこにでも馴染むことができるようになります。
パリ・サンジェルマン
"サッカークラブとの"コラボレーションを強調したい場合はそのまま(サークルなので基本的にはどのような物にでも馴染みやすいと思います)、逆に"サッカークラブであること"をそこまで押し出す必要のない場合は、中のモチーフのみで展開することが出来ます。
パリ・サンジェルマン
サークルの中をいじっても、それ以外の要素が保存されるので「その」クラブのであることが認識されるので、上のような応用も効きます。
ただしそのような計算をして行う場合、真ん中のモチーフのみである程度クラブのアイデンティティを何かしらの方法で示しておかなければなりません。それについては、この先のプロセスで鎌倉インターナショナルFCのロゴを例に説明していきたいと思います。
大切なことは、形、色、要素などを変化させることで、色々な応用が効き、なおかつ分解してもクラブのアイデンティティが残る、という点でした。
バルセロナ
その点で先ほどのバルセロナの「エンブレム」に戻ってみると、要素を分解しづらいことがわかります。それは「エンブレム」というものが「エンブレム」という「形」に(サッカークラブであるという)アイデンティティを見出しているからではないか、と私は考えています。もちろん、バルセロナのエンブレムが悪いと言っているわけではなく、むしろバルセロナだからこそめちゃくちゃかっこいいわけですが、新しいクラブがこれをやっても、ただのサッカーやってる人たちになってしまい兼ねません。ので、私たちのシンボルはこれではダメだったのです。
④:SNSのプロフィール
最後に「ロゴが丸でなければならなかった理由」として、SNSのプロフィール画像が丸だから、というのがあります。つまり丸にすれば情報をそのまま伝えることが出来ますが、それ以外の形だと無駄な余白が出来てしまうということです。
RB Leipzigがファン以外にはわからないほどのエンブレムのマイナーチェンジを行いましたが、それもこれが理由で、下の記事の冒頭で少し触れました。
現代は、特に私たちのようなアマチュアのサッカークラブは、人々が「現場で」クラブに接する機会より、「ソーシャル上で」クラブに接する機会が圧倒的に多いので、そういう点ではソーシャル上の見え方は重要になります。
現在ほとんどのプラットフォームのプロフィール画像がサークルなので、その点も考慮して「丸のロゴでいきたい」と伝えました。
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今回はこの辺にして、次回は私たちの完成したロゴを見ながら、ビジョンとの兼ね合いや狙い、プロセスの中で起きたことなど、もう少し詳しく説明していきたいと思います。
鎌倉インターナショナルFC|Kamakura Inter FC
Twitter:@kamakura_inter
Instagram:@kamakakura_inter_fc
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