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全世界株式に投資するのは理論的に効率的なポートフォリオだから

2023年に政府より打ち出された「貯蓄から投資へ」の元、個人金融資産は着実に積みあがってきた。2024年からは新NISAが開始し、それらの受け皿としてeMAXIS Slim 全世界株式(通称オルカン)等が注目を集めているが、それらが長期の資産形成に有効である理論的な裏付けを説明する。


全世界株式が連動する指標


オルカンをはじめ、全世界型株式のインデックス投資を目標とする投資信託・ETFは以下のいずれかのインデックスに連動(ベンチマーク)するよう設計されている。

  • MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス

  • FTSEグローバル・オールキャップ・インデックス

これらの指標は①全世界の株式に対して、②時価総額加重平均で算出している。時価総額加重平均では、株式全体の時価総額に対してその銘柄がどの程度の割合を占めているかで重みづけを行い値を算出する。

資本資産価格モデルと市場ポートフォリオ


現代ポートフォリオ理論を発展させた資本資産価格モデル(CAPM)において、全てのリスク資産の時価総額加重平均ポートフォリオとして市場ポートフォリオを定義している。

現代ポートフォリオ理論およびCAPMの詳細はここでの主旨ではないため解説は他に譲るが、前提条件を置きながらもCAPMにおいては市場ポートフォリオはリスクを加味したリターンの期待値(リスク調整後リターン)が他のあらゆるポートフォリオよりも高いことを証明した

全世界株式は株式の市場ポートフォリオ


株式に限れば、全世界の株式を時価総額加重平均でもつ投信・ETFは市場ポートフォリオに近い存在と考えることができる。

全世界株式に投資するメリットはパッシブファンドであるがゆえに手数料が低い事や分散されている事だけではなく、リスクを加味したリターンが最も効率的という点も大きい。

ほとんどの人は全世界株式でOK


上記から、我々のような普通の人が資産形成する場合、ほとんどの人にとって全世界株式が最適解だろう。

株式投資は本来、金利・企業の決算・経済指標をインプットした上で行うものである。しかし、金融を生業とする人達ですら長期ではインデックスをベンチマークとしたパッシブ運用のリターンには及ばないとする分析結果がある。

市場観察が趣味ならば問題ないが、我々のような普通の人間が本業の片手間に好きでもない投資情報を集めて投資しても良いリターンは期待できない。

であれば理論に裏打ちされた効率的なポートフォリオへ投資すると決め、他のことに時間を使った方がQOLが上がる。

米国株式でもOK


全世界株式を中心に展開したが、全世界株式の6割を占める米国株式のインデックスでも問題ない。

米国のみでも市場ポートフォリオの大半をカバーしており、過去10年に渡り世界の成長をけん引してきたがそれは今後も継続することが見込まれる。

米国株式の場合は同じく時価総額加重平均の大型株top500を対象とするSP500指数や、大型株から小型株まで対象として時価総額加重平均でポートフォリオを組むCRSP米国総合指数(CRSP US Total Market Index)に連動するような投信・ETFに投資すれば良い。

個人的にはより市場ポートフォリオに近いCRSP米国総合指数が好みである。CRSP米国総合指数に連動するETFにはバンガード社のVTIやVTIに間接的に投資する国内投信の楽天VTIがある。

過信は禁物


だが全世界株式への過信は禁物である。CAPMは1960年代に始まった理論であり90年にノーベル経済学賞を受賞しているが、半世紀以上もこの理論を擦り続けている事になる。

研究が進みより正確に市場の動きを説明するために、CAPMを発展させたFama-French 3ファクターモデルやスマートベータ運用も提唱されている。ただし、この理論に基づく投資商品は存在するが、歴史が浅く商品数も多くないためまだ個人投資家には手が出しにくい。

恐らく5年、10年という単位ではあると思うが、研究が進み市場ポートフォリオよりも効率的なポートフォリオが提唱され実用化された時には、現在の最適解である時価総額加重平均に基づくインデックス投資から柔軟に投資方針を変更する必要がある。

余談


硬派に個別株投資を行うなら決算情報は必ず目を通す必要がある。その点で四季報は有用である。

名作と言う程ではないが金融業界を舞台とした映画を視聴していた。
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