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『宗教の経済思想』要約

『宗教の経済思想』 保坂 俊司 光文社新書 2006年10月

時代背景 2001年 エンロン破綻/2006年 ライブドア事件 村上ファンド解散/2008年 リーマンショック

<目次>
はじめに
第1章 キリスト教の経済思想
第1節 ゲイツとバフェットの選択
多額寄付の真意とは/近代資本主義の象徴
第2節 資本主義の胎動
近代資本主義の原資は略奪から/スペインの拡張主義とイスラームの影響/金融業者の台頭/キリスト教における利子
第3節 資本主義を支えるキリスト教的論理
近代資本主義と世俗化/カルヴァンの宗教改革と聖職思想/近代資本主義経済の光と影
第4節 アメリカ型資本主義と宗教
アメリカ社会の精神/フランクリンと宗教倫理
第5節 21世紀の経済倫理の可能性
インド哲学と経済学の出会い/近代経済学の超越としてのセン経済学/センと仏教思想の共通性
第2章 イスラームの経済思想
第1節 「味の素事件」とイスラーム
グローバリゼーションのもたらした事件/オリエンタリズムをどう克服するか
第2節 タウヒード(聖俗一元)の経済思想
宗教が優先する経済論/シャリーアへの服従
第3節 イスラーム金融の考え方
イスラームにおける財貨の尺度/イスラーム金融と利子/利子と利潤の違い/禁止される利子/奨励される利子/イスラーム銀行の節度/
第4節 イスラームにおける労働と蓄財
直接性の経済思想/異教徒との交易は対等か/ムハンマドを理想とする職業論/イスラームと勤勉/戦利品も正当な財である/奴隷は合法か
第3章 仏教の経済思想
第1節 仏教と経済の関わり
仏教思想の伝達と変遷/インド仏教と十事論争/
第2節 原始仏教と商人階級
ゴータマ・ブッダの経済思想/縁起思想と経済理論/ブッダと商業階級/仏教の説く経済倫理/道徳的ルールと経済倫理/小乗仏教における救済と経済行為/「菩薩道」の経済学/
第3節 大乗仏教の経済倫理
世俗化という倫理的大改革/中国仏教における世俗主義の展開
第4節 日本の「仏業即世俗業」
日本における経済思想の展望/神仏共生の経済倫理/専一思想と日本的労働観/天台本覚論と現世肯定/道思想と職業倫理/仏道としての芸道
第5節 日本型資本主義思想と鈴木正三
鈴木正三思想の意義/仏教の伝統と鈴木正三/正三思想の近代性/ピューリタニズムと鈴木正三の思想/正三の商業正化の論理/真宗と職業倫理
第4章 日本教の経済思想
第1節 日本的勤労観の核
身を持って他を生かす思想/「瑞穂の国」の勤労思想/神事としての勤労思想/日本の政策と労働観/民衆教育と経済思想
第2節 滅私奉公的勤労観の形成
責任感の欠如はどこから生まれたか
第3節 日本独自の実践倫理
石田梅岩の思想/国学の経済思想/二宮尊徳の思想/合理的信仰と既存宗教の否定/尊徳とフランクリンを隔てるもの/近代経済と道徳の融合/松下幸之助の思想/使命としての企業活動/
おわりに



1. キリスト教の経済思想
 新大陸発見後、18000tの銀と200tの金が1521~1660年にかけて新大陸からスペインにもたらされた。1世紀の間に、インディオの民は90%殺され、2500万人の人口が150万人に激減。ペルーでも住民の95%が消滅。300万人の先住民がカリブ海から姿を消した。略奪行為がヨーロッパの近代資本主義形成の基礎の一つとなった。
金銀の流入が物価の急騰を招いた。(小麦価格1520年→1599年 3.3倍)
スペインが800年間イスラムの支配下にあったことがこの略奪行為にも大きく影響。近代資本主義の基礎にイスラム文明の影響があった。
 富の形態が領土から金融資産に移行した。数量化でき、流動性が高く、計算可能で、細かく分散化可能、共有できるため、領土の様に国王や貴族が独占する富が全てでなくなり、各個人が富の分け前にあずかす構成員となった。商業・金融業が急激に台頭し、金融資産を豊富に持つ商人・金融業者がブルジョワ市民階級を形成した。
 金貸しはキリスト教では、隣人愛を踏みにじる職業ということで憎まれていた。(金を借りるものが生活のために借りていたので、一度借りればその返済は不可能だった)しかし、教会も各地から貨幣で送金を受けていたため、金融業者無しでは運用していけない実態があった。金融業者が台頭し、世俗社会で最も貢献する者が、宗教的にも優遇される救済理論が望まれた。
 ルター・カルヴァンの宗教改革により、日常生活から呪術的な非合理性(カトリックの伝統的な祭礼や儀礼)が排除され、民衆の代わりに禁欲的な生活を送っていた聖職者が独占していた神の救済への道が民衆へ開かれたことで、民衆一人一人が神と向かい合い、その救いを個々人の倫理的な生活によって獲得するものとなった。
 それは従来、宗教的な救済業とは無縁とされた世俗業(生業)が、救済(修行)の手段、あるいは場となったことを意味し、これが召命思想、天職思想となり、職業聖化の思想につながっていく。
 カルヴァンの予定説では、神は全知全能であるため、救われる人はすでに決まっていて人間の努力ではどうしようもない。ただし救われるものはその兆候が必ず現れ、あたかも神に救われている者のごとくに行動する。戒律を厳しく実践すればするほど、自分が救われることの確信が得られる。これが近代資本主義を支えた禁欲プロテスタントの倫理であり、修行僧のように家業に励み、自ら稼ぎ出したもの惜しげもなく与えねばらない。

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