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【第170回芥川賞・直木賞】九段理江『東京都同情塔』を完全要約(※ネタバレあり)【PART1】

▼YouTubeでも公開中


◆第170回芥川賞・直木賞 PART1


◇紹介書籍

こんばんは!Kazukiです!
それでは今週もさっそく投稿の内容に入っていきましょう!
今週紹介していく書籍たちはコチラになります!

2024年1月15日に新潮社さんから発行されました、
九段理江(くだん・りえ)先生の『東京都同情塔』と、

2023年8月10日に文藝春秋さんから発行されました、
万城目学(まきめ・まなぶ)先生の『八月の御所グラウンド』と、

2023年11月20日に新潮社さんから発行されました、
河﨑秋子(かわさき・あきこ)先生の『ともぐい』になります!
今週一週間で第170回芥川賞受賞作と直木賞受賞作を一緒に読み解きましょう!

◇紹介書籍概要

また今回の紹介書籍たちの概要につきましては、
いつもと同じように下記に詳細を載せておきますので、
もし紹介書籍たちの概要が気になった方がいましたら、
そちらの方たちはぜひ下記をご覧いただければと思います!

タイトル 『東京都同情塔』
著者 九段理江(くだん・りえ)
価格 1,870円税込
発行日 2024年1月15日 発行
発行者 佐藤隆信
発行所 株式会社新潮社
装幀 新潮社装幀室
印刷所 大日本印刷株式会社
製本所 加藤製本株式会社
初出 「新潮」2023年12月号

『東京都同情塔』奥付および裏表紙から引用

タイトル 『八月の御所グラウンド』
著者 万城目学(まきめ・まなぶ)
価格 1,760円税込
発行日 2023年8月10日 第1刷発行
発行者 花田朋子
発行所 株式会社 文藝春秋
印刷所 凸版印刷
製本所 加藤製本
組版 萩原印刷

『八月の御所グラウンド』奥付および裏表紙から引用

タイトル 『ともぐい』
著者 河﨑秋子(かわさき・あきこ)
価格 1,925円税込
発行日 2023年11月20日 発行
発行者 佐藤隆信
発行所 株式会社新潮社
装幀 新潮社装幀室
印刷所 大日本印刷株式会社
製本所 加藤製本株式会社

『ともぐい』奥付および裏表紙から引用

◇紹介書籍選出理由

そして、今週の投稿に、

九段理江先生の『東京都同情塔』と、
万城目学先生の『八月の御所グラウンド』
と、
河﨑秋子先生の『ともぐい』の3冊を選んだ理由になりますが、

それがコチラになります!


九段理江先生の『東京都同情塔』は、
斬新すぎる倫理観を授けてくれますし、

万城目学先生の『八月の御所グラウンド』は、
感涙必至の青春物語を堪能させてくれますし、

河﨑秋子先生の『ともぐい』は、
美醜入り混じる人間の本性を明らかにしてくれますし、

三者三様、本当に素晴らしい小説たちだったから!


昨年の7月に、
第169回芥川賞受賞作および直木賞受賞作が発表されてから、

早6ヶ月後、

2024年1月17日(水)に都内にて、
第170回芥川賞受賞作および直木賞受賞作が発表されたのは、
皆様の記憶にも新しいかと思います。

そして、
第170回芥川賞受賞作には、
九段理江先生の『東京都同情塔』が選ばれて、

また、
第170回直木賞受賞作には、
万城目学先生の『八月の御所グラウンド』と、
河﨑秋子先生の『ともぐい』
が選ばれまして、

先月の2月中にですかね、わたくし、

一応、今回の受賞作を全て読むことができました。

感想、、、

どれもやばい(安定的な語彙力の欠如)。

というのも、

芥川賞を受賞した九段理江先生の『東京都同情塔』は、
「犯罪者は出生をミスった同情するべき人間」という、

斬新かつ突っ込んだ倫理観を授けてくれますし、

また、

直木賞を受賞した万城目学先生の『八月の御所グラウンド』は、
野球好きの方でその名前を知らない人はいないあの伝説の大投手と、

まさかまさかの共闘をするという感涙必至の青春物語を堪能させてくれますし、

同じく、

直木賞を受賞した河﨑秋子先生の『ともぐい』は、
明治期の北海道の山奥に住むひとりの猟師の半生を皮切りにして、

美醜入り混じる人間の本性を明らかにしてくれますし、

本当に三者三様それぞれテーマが綺麗にバラけていまして、

かつ、

他の書籍では味わえない圧倒的な読書体験を味わえる小説たちなのです。

さすが、
日本で最も有名な文学賞を受賞している作品たちです。
本当に読んで損はない小説たちばかりでしたね。

そして、これらの小説たちを読んで、
わたくしが感じた圧倒的な読書体験は、
ぜひ読者の皆様とも一緒に味わいたいと思いまして、

今週の投稿には、、、

九段理江先生の『東京都同情塔』と、
万城目学先生の『八月の御所グラウンド』と、
河﨑秋子先生の『ともぐい』の3冊を選ばせていただきました!

◇投稿内容とその目的

そして、今週の投稿の内容につきましては、


今回のパート1で、
九段理江先生の『東京都同情塔』を完全要約していきまして、

また、次回のパート2で、
万城目学先生の『八月の御所グラウンド』を完全要約していきまして、

そして、最後のパート3で、
河﨑秋子先生の『ともぐい』を完全要約していきます!


なので、
今週のこの【第170回芥川賞・直木賞】シリーズの投稿を、
パート1からパート3まで全部ご覧いただいた暁には、、、


斬新な倫理観、感涙必至の物語、人間の本性と美醜、
全てを孕んだ第170回芥川賞受賞作・直木賞受賞作を堪能できる!


という、そんなシリーズの投稿になっていれば幸いだと思っております!

なお、これはあらかじめお伝えしておきますが、、、

このシリーズの投稿は、
本作らの完全要約を目的としていることから、

ネタバレを完全に含んでおります。

なので、
もし、ネタバレダメ絶対!という方は、
ソッとこの投稿を閉じていただきまして、

一方で、
本作らを私のKazuki調で楽しみたい!という方は、
引き続きこの投稿をご覧いただければと思います!

それでは一緒に、
斬新な倫理観、感涙必至の物語、人間の本性と美醜、
全てを孕んだ第170回芥川賞受賞作・直木賞受賞作を堪能する読書の旅へ、
出かけていきましょう!

◇『東京都同情塔』九段理江

それではようやく今回の投稿の内容であります、
第170回芥川賞受賞作の九段理江先生の『東京都同情塔』の要約に、
入っていこうと思いますが、

本作の冒頭は、

ある一人の女性が新宿御苑近くにあるホテルの一室で、
シャワーを浴びながらひとり回想をしている描写から始まりまして、

その女性の名前は、、、

牧名沙羅(まきな・さら)さん。

彼女は東京都内に、
自身の苗字を冠した設計事務所を構える建築士であり、

また、
同じく東京都内にこれから建築される予定である、
「ある建造物」の設計担当者でして、

牧名さんは、先にも述べたように、
新宿御苑近くにあるホテルの一室でシャワーを浴びながら、
自身が担当しているその「ある建造物」について抱いていた、
ある種の嫌悪感のようなものを洗い流すかの如く温水を全身に浴びていました。

そして、その牧名さんに、
嫌悪感を抱かせている「ある建造物」というのが、、、

「シンパシータワートーキョー」という建造物になりまして、

東京都新宿御苑に2030年を目処に完成する予定の架空の建造物で、
本作『東京都同情塔』の物語における中核を担う建造物でした。

というのも、
このシンパシータワートーキョーは、
本作の中で定義づけられている、
「ある人々」の住まいの役割を果たすための建造物でして、

シャワーを浴び終わった牧名さんは、
洗い流せないまま胸に残った嫌悪感を抱えたまま、
自身のパソコンに搭載されているAIの「AI-built」に、
その「ある人々」について確認の質問をしていきまして、

その回答がこちらになります。

Al-built:【ホモ・ミゼラビリスとは、社会学者で幸福学者のマサキ・セトが提唱した、比較的新しい概念です。セトは著書『ホモ・ミゼラビリス 同情されるべき人々』において、従来「犯罪者」と呼ばれ差別を受けてきた属性の人、また刑事施設で服役中の受刑者、非行少年を指して、その出自や境遇やパーソナリティについて「不憫」、「あわれ」、「かわいそう」といった同情的な視点を示し、彼らを「同情されるべき人々」、つまり「ホモ・ミゼラビリス」として再定義しました。またセトは、従来の意味における非犯罪者を、「幸せな人々」、「祝福された人々」を意味する「ホモ・フェリクス」と定義しています。

『東京都同情塔』p18から引用

つまり、
このシンパシータワートーキョーというのは、
従来の犯罪者を、

「出自や境遇、パーソナリティをミスった同情されるべき人々」

という視点で再解釈した、

「ホモ・ミゼラビリス」

を住まわせるための施設ということなのです。

その後も牧名さんは、
AI-builtと数回やりとりをした後、

ある人物とディナーの約束をしていた、
時刻へと近づいていたことに気が付き、身支度を整えた後に、
ホテルのロビーへ降りていくと、、、

そこには約束の相手である東上拓人(とうじょう・たくと)が、
二、三人掛けのソファを独占するように斜めに腰掛けていました。

拓人は新宿御苑内で行われている、
「シンパシータワートーキョー」建設反対デモの人混みと、
ヒートアイランドと化した都心の熱にやられてしまったのか、

「吐き気がする」

と、牧名さんに告げます。

その言葉を受けた牧名さんは、
ロビーに降りてきたのも束の間に、
拓人を休ませるため、
予約していた青山のレストランには行かず、

再びホテルの自室へと拓人を連れて戻ってしまいます。

▶︎其の二

そうして、
牧名さんのホテルの部屋へと向かった拓人は、
その部屋に到着するなり、

疲労困憊で力の尽きた身体をツインルームのベッドに投げ出します。

そして、ここからいきなり濡れ場、、、

なんてことにはならず、
そこから拓人はぐっすり2時間ほど睡眠をとった後に、

牧名さんが仕事の電話をする声で目を覚まします。

拓人は自分の目が覚めたことを、
牧名さんに声をかけて伝えると、
牧名さんは振り返り、拓人の体調を少しばかり慮った後、

二人は他愛のない雑談を交わしていきます。

その際、
牧名さんが仕事のために開いていたパソコンの画面をチラリと覗き見た拓人は、
パソコンの画面に映る「シンパシータワートーキョー」の文字列を見て、

一言。

「東京都同情塔」

『東京都同情塔』p63から引用

と、特に意味もなく日本語へ直訳して口から出していました。

すると、その和訳に牧名さんはとても驚きます。

というのも、
冒頭で牧名さんがこのシンパシータワートーキョーについて、

「シャワーを浴びながらある種の嫌悪感を抱いていた」

という旨の要約を述べたかと思いますが、
その嫌悪感というのは、

ズバリ、、、

「日本人が日本語を捨てたがっている」

という現在の日本社会の現状から起因する嫌悪感だったんですね。

それこそ、
今しがた拓人が東京都同情塔と言い直した元の、
シンパシータワートーキョーなんて、

言わばただの「刑務所」ですし、

そのシンパシータワートーキョーが終の住処となる、
出自や境遇、パーソナリティをミスった同情されるべき人々である、
ホモ・ミゼラビリスなんて、

ただの「犯罪者」なんです。

それなのに、
刑務所とは言わず、
「シンパシータワートーキョー」と言い、

また、
犯罪者とは言わず、
「ホモ・ミゼラビリス」と言うように、

日本語をカタカナ英語に変えてしまえば、
自分たちがなにか高尚な人種にでもなったかのように錯覚する、

という、
そんな日本社会に対して牧名さんは、
その胸中で嫌悪感を巡り募らせていたんです。

そんな中、拓人が、
シンパシータワートーキョーを一瞬のうちに、
東京都同情塔と和訳したのに対して牧名さんは、

先の嫌悪感を感じさせない拓人の言葉選びに感心してしまいます。

その後、二人は、
20時過ぎにホテルの一階のレストランで食事を済ませた後に、
牧名さんの「競技場の辺りを散歩する」という提案に拓人ものり、

二人は煌々としている国立競技場へ向かっていきます。

そうして、国立競技場に着いた二人は、
そこから東京体育館の脇を通り抜けて、
さらに千駄ヶ谷駅の高架下を通り抜けて、

新宿御苑の千駄ヶ谷門へと向かいます。

しかし、時刻は、
先のレストランの時にはすでに20時を過ぎているので、
新宿御苑は閉門していましたが、

牧名さんは柵を乗り越え、また、拓人もそれに続きます。

閉門後の新宿御苑に不法侵入をした拓人は、
どこか不安を掻き立ててくる新宿御苑の雰囲気に、
若干ビビっていた様子でしたが、

一方の牧名さんは、
そんな御苑内の雰囲気に全く臆することなく、
どんどんと歩みを進めていきまして、

辿り着いたのは、、、

新宿御苑内にあるシンパシータワートーキョーの建設予定地でした。

そこで歩みを止めた牧名さんに拓人は、
これから自身が設計をするシンパシータワートーキョーに住むことになる、
犯罪者をただ言い換えただけのホモ・ミゼラビリスについて、

不適切な表現でも、差別的な表現でもいいから、
実際はどう思っているのかを牧名さんに尋ねます。

そして、その答え次第では、、、

自らの秘密を打ち明けようと決心します。

しかし、牧名さんから告げられたのは、
心の中に巣食う彼らへの嫌悪感とは裏腹に、
まるでAIが構成したかのような、

いかにも世の中の人々の平均的な望みを集約させ、
かつ、批判を最小限に留めた模範的な回答でした。

▶︎其の三

そうして物語の場面はガラリと変わりまして、

時は2030年、

シンパシータワートーキョーはすでに完成されており、
東京の新しいランドマークとして、
その名前は日本全国だけではなく世界にまで知れ渡っていました。

さらに物語は、
このシンパシータワートーキョーを取材した、
あるジャーナリストの手記へと入っていきまして、

そのジャーナリストの名前は、、、

マックス・クライン。

彼は過去に、

「命より大切なスポーツ:パンデミックのオリンピック」、
「美少年の笑顔は誰のもの?:性欲と沈黙が生んだ音楽」

『東京都同情塔』p90から引用

というタイトルの記事を公開した架空のジャーナリストでして、

それらの記事には、
日本人への差別を助長する表現が散見されるとの評価を受けたことで、
アメリカ本土からは「マックス・クラインはレイシスト」

つまり「差別主義者」だという残念な評価を受けていました。

そして、本人自身、先の記事内で、
そのような表現をしてしまったことに対する、
落ち目は自覚していましたが、
もちろんその名誉を挽回をするべく奮起しまして、

そうして、その標的となったのが、、、

シンパシータワートーキョーでした(日本大好きやな、こいつ)。

というのも、マックスからしたら、
シンパシータワートーキョーの中にいるホモ・ミゼラビリスは、

元を辿れば、ただの犯罪者であると認識していたため、

そんな犯罪者のために、
こんな素敵な建造物が建てられているのは、

何か裏があるに違いない、、、

という、批判を通り越した邪な視点を持っていたんですね。
まぁこういうところがレイシストと呼ばれる所以なのかもしれませんが、、、

そうして、
その取材のためにシンパシータワートーキョー赴いたマックスは、
そこで、

あの拓人と出会います。

実は、拓人は、あの後、
このシンパシータワートーキョーを運営する職員として働くことになり、

また、このシンパシータワートーキョーの職員寮に住んでいたんです。

そして、
その拓人に連れられたマックスは、
タワーのエレベーターに乗り込み、
塔内の最上階に位置する人気施設のスカイライブラリーを、
ガラス越しに見学することにしましたが、

そこで、マックスの目に映ったのは、、、

ライブラリ内のソファでコーヒーを飲みながら優雅に雑誌をめくり、
時に勝ち誇ったような表情で新宿御苑の人々を見下ろす、

詐欺罪の罪状を持つひとりの女性でした。

その女性を眺めていたマックスは思います。

この女性は、
何も金銭的な負担をすることなく、
新宿のタワマンで昼間からくつろぐセレブと同じ生活をして、
同じ眺望を手にすることができている、、、と。

その事実を把握した瞬間、
マックスはパニック状態に陥りながら、

FUUUUUUUUUUCK!!!

『東京都同情塔』p100から引用

と、ガラスを叩き叫びます。

そして、マックスは、
続けてこう拓人に告げていきます。

「タクト、君はここで働きながら、あの詐欺師のクソ女どもに腹を立てたりしないのか?日本人は一体どこまで寛容な人種なんだ?とても信じられない。こんなクソタワーを到底受け入れるわけにはいかないよ!クソタワーが!倒れちまえ!」

『東京都同情塔』p100から引用

マックス本性現れまくりです。

しかし、そんなマックスに対して拓人は一切動じることなく、
曖昧に微笑みながら、肯定とも否定とも取れる頷きを返すだけでした。

けれど、一度スイッチの入ってしまったマックスは、
自身の本性がその口から吐き出るのを止められないのか、
次々と拓人に、

このシンパシータワートーキョーが持つ気色悪さ、

引いては、、、

日本人が持つ沈黙と中立的な微笑みが生み出す気色悪さ、

さらには、
冒頭で牧名さんも嫌悪感を露わにしていた
この思考。

もし仮に、日本人が日本語を捨てたら、何が残るんだ?

『東京都同情塔』p100から引用

という、
日本人への配慮もへったくれもない、
レイシストのマックスならではの罵詈雑言や疑問を、
拓人にぶつけていきます。

それでも、もちろん拓人は、
気分を害することはありませんでしたが、

一方で、マックスのその質問に、
自分では彼の熱量に適う回答を用意できないと感じた拓人は、

そのマックスと同じようなことを言っていた、

牧名さんをマックスに紹介することにします。

▶︎其の四

そうして後日、
牧名さんは拓人からの紹介により、
マックスからインタビューを受けることになりまして、

ホテルのロビーに到着したマックスを、
牧名さんが自身で部屋まで案内するのですが、
その際、牧名さんは、

マックスの体臭に対して、多少なりとも不快感を抱いていました。

なので、ホテルの部屋に案内するなり、
マックスにまずは手を洗わせてからインタビューを始めていきます。

一方のマックスは、
牧名さんを含めた日本人の体臭の敏感さに、
初めは小言を連ねていましたが、

そんなことよりも、
牧名さんに会えたことにとても喜びを感じていたのか、

牧名さんに対して矢継ぎ早に質問を浴びせていきます。

そうして、浮き彫りになったのは、
牧名さんがシンパシータワートーキョーを建設した後の現在は、

もうすでに建築の仕事とは一切の縁を切っていることや、

シンパシータワートーキョーの建築に関わったせいで、

ここ何年か顔も知らない人間から「死ね」と言われ続けていることなど、

シンパシータワートーキョーをきっかけに、
牧名さんの人生がガラリと変わってしまったことを、
インタビュー内で明らかにしていきます。

それらの回答を受けたマックスも、
現在、自分が世間からはレイシストと認識されていることから、
日々様々な誹謗中傷を受けていると牧名さんに同情しますが、

そんなマックスに対して牧名さんはこう答えました。

「もちろん。それでもね、毎日のように『死ね』と言われ続けたおかげで、ひとつわかったことがある。世の中には、『死ね』という言葉を聞いて、自分の心臓に向かってナイフが突き刺さる感触を覚える人もいれば、単に動詞+命令形と処理する人間もいるよね。短い人生、もっと意味のある言葉を言えばいいのに、とヘイト中毒者に心からの同情をする人間もいる。『言葉』と聞いて葉っぱがざわざわ擦れる音を聞いている人もいれば、無音のテキストデータとして『言葉』を扱える人もいるわけでしょ。私はその全部であるべきだと思っている人間なんだけれど、何しろ体の方が足りていない。あなただってそうじゃない?そんな私たちが言葉を通して何かを本当に理解し合えるなんて思わない方がいい。私とマックスの耳を取り換えられるなら話は別だけれど。『手を洗って』と言って手を洗ってくれれば、私としては不満はないの」

『東京都同情塔』p131から引用

この牧名さんの言葉にマックスは、
「なるほど」とは言いつつもあまり納得していない様子で、
その後もインタビューを続けていきます。

しかし、その間にも牧名さんは、
マックスの体臭に終始悩まされておりまして、

幾度めかの生理的に好ましくない匂いが、
牧名さんの鼻先に運ばれて、
咄嗟に呼吸が浅くなったとき、

牧名さんはマックスにこう告げました。

「もし私たちの鼻が交換できたら、いくつかの問題が同時に簡単に解決するのに」

『東京都同情塔』p133から引用

◆おわりに


いかがでしたかね!

今回のこのパート1の投稿では、
2024年1月15日に新潮社さんから発行されました、

九段理江先生の『東京都同情塔』の完全要約をお届けしてきました!

第169回芥川賞を受賞した市川沙央先生の『ハンチバック』では、
障がい者の主人公が、自身の人間らしさを見出すために抱いた、
この「中絶するために妊娠する」という思考が、

人間の倫理観を良くも悪くも全方位に推し進める思考だと思いましたが、

今作の九段理江先生の『東京都同情塔』では、
作中で登場した「ホモ・ミゼラビリス」の定義である、
「出自や境遇、パーソナリティを誤った同情されるべき人々」が、

人間の倫理観、特に、、、

犯罪者への倫理観を良くも悪くも推し進める斬新な観点だと感じましたね。

やっぱり「芥川賞受賞作」の冠は伊達じゃないですね。

そして、次回のパート2の投稿では、
万城目学先生の『八月の御所グラウンド』の完全要約をお届けしますので、
そちらの投稿もお楽しみにしていただければと思います!

ぜひ一緒に、
斬新な倫理観、感涙必至の物語、人間の本性と美醜、
全てを孕んだ第170回芥川賞受賞作・直木賞受賞作を堪能する読書の旅を、
堪能していきましょう!

では、この投稿が面白いと感じた方は「スキ」!
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どちらもお忘れなきようこれからも応援してくれるととても嬉しいです!

それでは、また次回の投稿でお会いしましょう!またね!

◇紹介書籍リンク


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