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熊と高菜明太マヨおにぎり

岩手県の栗駒という山の中で熊に遭遇した。樹木がいったん途切れ窪地になったその向こうの木々の中に熊はいた。 直線距離でおよそ70メートル位
その目測はかなり正確。 誤差±5%以内。
まず最初にわかることはある程度の距離があったとしても
相手の存在がわかる同じ空間にいるとそれだけで緊張感、緊迫感は凄い。

人間対態の場合、あきらかに熊が追いかける側で人は逃げる側という
構図が完全に決まっている。 その時点で勝負はついている。ある程度の距離があったとしても背中を向けてゆっくり離れるということができない。
相手をじぶんの視界から外すという行為が怖いからだ。
だから人は後ずさりをする。
この時に一番気にかかるのは背中に背負ったナベやヤカン、フライパンなどだ。そんながらくたは取りあえずその辺に放り投げて逃げることを考えればいいのだが持って逃げなければならないという思いに駆られる。リュックの中にある一関の駅で買った名物、 ごま摺り団子も死んでも渡さないかんな という思いが湧く。 その辺だけでもすでに愚かしい。
熊はじわじわと近づいてくる。その距離50メートル。
リュックの中には東京駅で買った高菜明太マヨおにぎり(280円)が入っていたが、同行者の友だちが、こんなものを持っているから熊が来るんだといいつつオレの高菜明太マヨおにぎり(280円)を奪いとり熊の方に向けて高菜明太マヨおにぎり(280円)を投げた。
もと高校球児のその友だちの投げた高菜明太マヨおにぎり(290円)の軌跡はじつに情けなく大きく斜めにそれ
手前の樹木にあたり枝を転がり落ち洞にあいた何かの動物の穴に吸い込まれてしまった。まさしくおむすびころりん事件。
オレは、熊と対峙する前にこの友だちを丸太で殴り倒すことが先だな、と考えていた。

緊急事態宣言発令の距離になった。

この実話は
     …続く

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