チベットで展開するアメリカの謀略
さて、またまた刺激的なタイトルで失礼致します。中国が香港で起きた「外圧による民主主義を偽装とした暴動」を許さないことの本質が、ほとんどの日本人にきちんと伝わっていないことは以前書いた通りです。
情報には多面性があり(少なくとも二面性)、アメリカと同盟国である日本の国民が、あえて中国側から見ることが重要です。
香港の暴動を支援してきたアメリカが、同じ構図の作戦を新疆ウイグル自治区とチベットでも展開していることを、やはり知らない日本人も多いです。多いというか、99%知りません。
これは、日本人が英語をほとんど理解しないばかりか、英語の情報ソースにアクセスすらしないことにも問題があります。同盟国であるアメリカのソースにアクセスしないというのは、言葉は悪いのですがずっと属国のままでいることを認めているようなものです。敗戦国のメンタリティを戦後数十年と引きずっている、なんという情報閉塞感。アメリカが正義なのです。
前置きはここまで。実際に公文書として公開されている、アメリカのチベット作戦について日本語訳して公開したいと思います。
ちなみにソースはアメリカ国務省です。同省のサイトで公開されているHistoryですので、疑う余地は0%です。
<まとめ>
1.1960年代から、アメリカは反共産党のためにチベットを支援
2.反産党勢力を支援するために毎年資金を拠出
3.反共産党勢力を米国で極秘トレーニング
4.アメリカ国務省と国防総省が調整してきた
以下は、原文(英語)と対訳(日本語翻訳)です。
1.Summary—The CIA Tibetan Activity consists of political action, propaganda, and paramilitary activity. The purpose of the program at this stage is to keep the political concept of an autonomous Tibet alive within Tibet and among foreign nations, principally India, and to build a capability for resistance against possible political developments inside Communist China.
1.要約―CIAによるチベット活動は、政治活動、プロパガンダ、準軍事活動で構成されている。この段階でのプログラムの目的は、チベット国内およびインドを中心とした諸外国の間で、自治チベットの政治的概念を存続させ、共産主義中国の内部で起こりうる政治的展開に対して抵抗するための能力を構築することである。
2.Problem—To explain Agency expenditures in support of the Tibetan program.
2.問題点―チベット・プログラムを支援するためのエージェンシーの支出を説明すること。
3.Background and Objectives—At a 13 December 1963 meeting “The Special Group approved the continuation of CIA controlled Tibetan Operations [1 line of source text not declassified].” Previous operations had gone to support isolated Tibetan resistance groups within Tibet and to the creation of a paramilitary force on the Nepal/Tibet border of approximately 2,000 men, 800 of whom were armed by [less than 1 line of source text not declassified] airdrop in January 1961.
3.背景と目的―1963年12月13日の会議で、"特別グループは、CIA が管理するチベット作戦の継続を承認した[機密解除されていない原文の1行あり]。それまでの作戦は、チベット国内の孤立したチベットの抵抗勢力を支援し、ネパールとチベットの国境に約2,000人の準軍事部隊を創設し、そのうち800人が1961年1月の空爆で武装した[機密解除されていない原文の1行あり]。
In 1963, as a result of the [2 lines of source text not declassified] and as a result of the cited Special Group meeting, the Agency began a more broadly based political program with the exiled Tibetans.
1963年には、[機密解除されていない原文の2行あり]の結果として、また、特別グループ会議の結果として、エージェンシーは亡命したチベット人との間で、より広範な政治的プログラムを開始した。
This included bringing 133 Tibetans to the United States for training in political, propaganda and paramilitary techniques; continuing the support subsidy to the Dalai Lama’s entourage at Dharmsala, India; continuing support to the Nepal based Tibetan guerrillas; the reassignment of a part of the unarmed guerrillas to India for further training; and the [6 lines of source text not declassified].
これには、133人のチベット人を政治、プロパガンダ、準軍事技術の訓練のために米国に連れてくること、インドのダラムサラでのダライ・ラマの側近への支援補助金を継続すること、ネパールを拠点とするチベット人ゲリラへの支援を継続すること、非武装ゲリラの一部をさらなる訓練のためにインドに再配置することが含まれていた。
Operational plans call for the establishment of approximately 20 singleton resident agents in Tibet [less than 1 line of source text not declassified] two road watch teams in Tibet to report possible Chinese Communist build-ups, and six border watch communications teams [1 line of source text not declassified].
作戦計画では、チベットに約 20 人の単身駐在員[機密解除されていない原文の1行あり]、中国共産主義者の進出の可能性を報告するためのチベットの2つの道路監視チーム、および6つの国境監視通信チーム[機密解除されていない原文の1行あり]を設置することを要求している。
The [Page 732][less than 1 line of source text not declassified] will stay in direct touch with Dharmsala and will conduct political correspondence with Tibetan refugee groups [less than 1 line of source text not declassified] to create an increased Tibetan national political consciousness among these refugees. The [less than 1 line of source text not declassified] was established in October 1963, and the communications center serving it, [1 line of source text not declassified] is presently being built with a completion date scheduled in February 1964.
[Page 732] [機密解除されていない原文の1行あり]ダラムサラと直接連絡を取り合い、チベット難民グループ[機密解除されていない原文の1行あり]との政治的な通信を行い、これらの難民の間にチベット民族の政治的意識を高めることを目的としている。この通信センターは1963年10月に設立され、現在、1964年2月に完成予定の通信センター[機密解除されていない原文の1行あり]を建設中である。
One of the most serious problems facing the Tibetans is a lack of trained officials equipped with linguistic and administrative abilities. The Agency is undertaking the education of some 20 selected Tibetan junior officers to meet this need. A United States advisory committee composed of prominent United States citizens has been established to sponsor the education of these Tibetans. Cornell University has tentatively agreed to provide facilities for their education.
チベット人が直面している最も深刻な問題の一つは、言語能力と管理能力を備えた訓練を受けたスタッフの不足である。この問題を解決するために、米国政府は選抜された約20名のチベット人下級官僚の教育に取り組んでいる。これらのチベット人の教育を支援するために、米国の著名な市民で構成される米国諮問委員会が設立された。コーネル大学は彼らの教育のための施設を提供することに暫定的に同意した。
The Agency is supporting the establishment of Tibet Houses in [less than 1 line of source text not declassified] Geneva, and New York City. The Tibet Houses are intended to serve as unofficial representation for the Dalai Lama to maintain the concept of a separate Tibetan political identity. The Tibet House in New York City will work closely with Tibetan supporters in the United Nations, particularly the Malayan, Irish, and Thai delegations.
エージェンシーは、ジュネーブとニューヨークに[機密解除されていない原文の1行あり]Tibet Houseの設立サポートをしている。Tibet Houseはダライ・ラマの非公式な代表としての役割を果たすことを目的としており、ダライ・ラマはチベットの政治的アイデンティティーの概念を維持する。ニューヨークのTibet Houseは、国連のチベット支援者、特にマレー、アイルランド、タイの代表団と近密に連携する。
The cost of the Tibetan Program for FY 1964 can be summarized in approximate figures as follows:
1964年度のチベット・プログラムの費用は、おおよその数字でまとめると次のようになる。
a. Support of 2100 Tibetan guerrillas based in Nepal—$ 500,000
ネパールに潜伏する2,100人のチベット人ゲリラ支援―500,000ドル
b. Subsidy to the Dalai Lama—$ 180,000
ダライ・ラマへの支援―180,000ドル
c. [1 line of source text not declassified] (equipment, transportation, installation, and operator training costs)—$ 225,000
[機密解除されていない原文の1行あり](機器設備、輸送、設置、運営訓練費)―225,000ドル
d. Expenses of covert training site in Colorado—$ 400,000
コロラドにある秘密訓練場の費用―400,000ドル
e. Tibet Houses in New York, Geneva, and [less than 1 line of source text not declassified] ( 1/2 year )—$ 75,000
ニューヨーク、ジュネーブ、そして[機密解除されていない原文の1行あり]にあるTibet Houseの半年経費―75,000ドル
f. Black air transportation of Tibetan trainees from Colorado to India—$ 185,000
コロラドからインドへ、チベット人訓練生のブラックエア輸送―185,000ドル
g. Miscellaneous (operating expenses of [less than 1 line of source text not declassified] equipment and supplies to reconnaissance teams, caching program, air resupply—not overflights, preparation stages for agent network in Tibet, agent salaries, etc.)—$ 125,000
雑費(偵察チームへの装備品および消耗品の運営費([機密解除されていない原文の1行あり])、キャッシング・プログラム、航空補給(オーバーフライトではない)、チベットでのエージェント・ネットワークの準備、エージェントの給与など)―125,000ドル
h. Educational program for 20 selected junior Tibetan officers— $ 45,000
選抜された20人のチベット人下級将校のための教育プログラム―45,000ドル
Total—$ 1,735,000(合計1,735,000ドル)
4. Coordination—This Tibetan operational program has been coordinated with the Department of State for a number of years. Specific operational activity has been coordinated with the Department of Defense and the [less than 1 line of source text not declassified] as necessary.
4.調整―このチベット活動プログラムは、数年間にわたって国務省と調整されてきた。特定の活動は、必要に応じて国防総省および[機密解除されていない原文の1行あり]と調整されてきた。
5. Recommendations—Barring sudden developments inside Communist China and Tibet, expenses for this long-range, politically-oriented [Page 733] Tibet program are not expected to exceed this amount in the foreseeable future. In fact, there are a number of probable economics, [1–1/2 lines of source text not declassified] for example. Nonetheless, this program will continue to require fairly large expenditures over a long period of time to keep the possibility of a non-Communist government alive to the Tibetan people. We recommend continuance of this program.
5.提言―共産主義中国とチベット内部の突発的な進展を除いて、この長期的で政治的に志向された活動のための費用は、 [733ページ]チベット計画は、当面この金額を超えることはないと予想される。実際には、いくつかの可能性のある経済学、例えば[機密解除されていない原文あり]がある。それにもかかわらず、このプログラムは、非共産主義政府の可能性をチベットの人々に存続させるために、長期間にわたってかなり多額の支出を必要とし続けるだろう。我々は、このプログラムの継続を推奨する。
いかがでしょう。アメリカが、アメリカ国務省のウェブサイト上に、中国を解体しようと「外圧」としてチベットとダライ・ラマに資金援助してきたことを証明しているのです。反共産主義のためのアメリカの「代理エリア」を、チベットに置いてきた。
この構図は、前述した新疆ウイグル自治区や香港、台湾で見られるのです。中国がいかに「外圧による勢力」を制圧し、国内平和を維持しようとしてきたのかが分かるでしょう。いかに「許容できないか」が分かると思います。徹底的に潰し続けないと、アメリカからの資金援助が止むことはないのです。
弾圧が進んでいる言われ、ムーラン撮影でも批判されている新疆ウイグル自治区が、画像のような平和的発展を遂げているのは、なぜでしょう。
アメリカが空爆してきた国々が、ボロボロに破壊されてきたのと正反対です。新疆ウイグル自治区に行き、街を歩き、100人くらいに実態をヒアリングしてみてください。いかに狭い視野・価値観で生きてきたかを、思い知ることでしょう。
もちろん、中国が100%正しいとは言いません。ここで言いたいことは、アメリカが100%正しいことはないということ。そして、情報の二面性を考えるクセをつける重要性です。
中国をトップに立たせないアメリカの遅延謀略の、歴史の長さ。突然解決することはないわけですねぇ。
お読み頂きありがとうございました。