見出し画像

逢うこともかなわなかった きみに             *詩*


会ったことのない きみに
手紙を書こうとおもったんだ
なぜって 
きみは もうひとりのわたしだから

きみは すべてを手放したんだね
〈 きらきら 〉と呼ばれ 愛されていた 
スポットライトと きみを愛する多くの観客のまえで
かぎりなく輝いていたはずなのに
きみは 時間をとめた

まやかし ? そう思えたのかもしれない
 まぼろし ? そう信じたのかもしれない
  ままごと ?  それでもきみは生きていた

なにがのぞみ
なにがゆるし

だれも きみを奪えないのに
きみは きみの未来を奪った

まだみぬ未来を葬って



会うこともなかったきみに
逢いたいとおもったんだ
なぜって 
きみのこころにふれてしまったから

わたしは すべてを抱きしめたかった
疎ましくさえおもえてた きみのその痛み
終わりなくおもえた そのトンネルも暗闇も
歓喜の序章にすぎなかったはずなのに
きみは こころをとめた

うそつき ? そう思えたのかもしれない
 うらぎり   ?  そう信じたのかもしれない
  うんざり ? それでもきみは生きていた

なにがゆめ
なにが救い

だれも きみを奪えないのに
きみは きみの未来を奪った

まだみぬ未来を葬って



逢うこともかなわなかったきみを
愛おしいと思ったんだ
なぜって 
あなたとわたしはひとつだから

きみの笑顔を守りたかった
重く 苦しい この道にも
かならず 花は咲くことを

痛みが ただの痛みではなかったことを
ただ きみに伝えたい

かえられる   ! 過去も未来も きっと
 かんじてる  !  きみのいのちを ずっと
  かなえたい !  きみのあしたを ここに

それが 願い
それが 祈り

みんなが きみを愛してる
みんなで  きみの未来を紡ぐ

きみも きみの未来を信じて



「 うんざりするような痛みを
   歓喜にかえる方法を
    だれも教えてはくれなかった 」

あなたが みずからの人生に
終止符をうったことを
ずいぶん月日が流れたあとに知った

ごめんなさい
なまえも お顔も その歌声も 輝きも 
なにも知らなかった

あなたを応援していた みんなの
うんざりするような痛みを
あなたは 歓喜にかえてくれていたにちがいないのに

なぜ ?

いつか きみに会えたなら
いつか きみに逢えたなら

あの日に かえろう
まだ なにも終わってなどいないのだから


              おひさまみたいに 
              だれよりも輝いていた

                  あなたへと 捧ぐ

             

                           宮下 和江


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?