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ほろほろを受け継ぐ

近所のパン屋さんというのは愛着がわく。
メロンパン、あんパン、カレーパン。
場所が変われど、近所のパン屋さんは近所のパン屋さんだ。

島にはときわベーカリーというパン屋さんがあって、ここのパンを食べて育ったと言う島民の方も多い。島というスケールだと、たった一つのパン屋さんが届けるものには、絶対的な存在感がある。

ときわベーカリーはパンだけではなく、常盤堂製菓舗として「白浪」という和菓子も作っている。砂糖と寒梅粉を混ぜた白い生地に、こしあんを詰めたもの。敷き紙から浮き出てくるような白さが、ほのかに眩しい。

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世代を二つほど遡ると、島内には幾つかの菓子屋があって、白浪の他にも和菓子を作っていたらしい。消えてしまった他の和菓子と、世代と時間を越えても残っている白浪は、一体なにが違うんだろうか。

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細かい経緯は知り得ないけど、白浪を作り続けてきた人がいることが、残っていることの唯一の理由でもあって、そこには「伝える」が必ずある。

工房の中で、「ほろほろ」という言葉が何度か出てくる。
その言葉自体を確かには掴み切れず、形にしたいが為に手を動かし続けていた。

「伝える」人という存在自体がまずあって、それが形を変えて、言葉となり感触となり、工房の中に散りばめられているように感じた。

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島では10時と15時がおやつの時間。お茶しましょ、の一言で伝わることもある。今日は後鳥羽院資料館の方もお茶に来て、隠岐神社御創建80周年祭のことを少し話した。

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夕方になり作業が終わると、外で観光バスの運転手の方が休憩していた。
すっかり肌寒くなってきたのに、この人はいつも夏のような笑顔をみせ安心させてくれる。

今日も一日が終わろうとしている。


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