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見てほしい神戸の魅力-3

<神戸の歴史を訪ねて>
NHK大河ドラマ「光る君へ」を見ておられる方も多いことでしょう。
主人公の紫式部が、藤原道長への秘めた愛をもとに「源氏物語」を書くという、魅力的なストーリーと平安貴族文化の艶やかさに目を奪われますね。
その藤原道長が59歳の時(1024)に、有馬温泉で療養したことがありました。

「伊勢物語」や「古今和歌集」に名瀑と記された「布引の滝」には後の白河天皇が1076年に見物されています。「枕草子」にも記された「生田神社」、短歌に詠まれた「生田の森」など、いずれも景勝の地として平安貴族に賛嘆されていたそうです。
そんな平安時代から有名な景勝地だった布引の滝は、新幹線の新神戸駅から歩いて10分もかかりません。
藤原道長など平安貴族がわざわざ観に行った名瀑を、是非見ていただきたいなと思います。

布引の滝(雄滝)

平清盛が神戸の福原に遷都したことはご存じでしょうか?
清盛は太政大臣を3ヶ月ほどで辞任し、かねてより進出してしていた八部郡(やたべ)の福原を拠点とし、平野に自らの別荘を建てました。
別荘の南に雪見御所が築かれ、1180年に幼い安徳天皇・高倉上皇・後白河法皇が行幸され、平氏一門、貴族たちをひきつれ、反平氏的な動きをとる勢力に囲まれた京都を離れ福原に行宮(あんぐう)が置かれました。これがいわゆる福原遷都です。
桓武天皇が奈良の寺社勢力の干渉を排除するため平安京に遷都したように、清盛は延暦寺・園城寺・興福寺などの干渉を除去するために福原遷都を強行したと考えられています。

この地域は住宅が密集し、ながらくその実態が不明でしたが、近年の発掘調査で少しずつ往事の姿をしのぶことができるようになりました。
神戸市兵庫区の祗園遺跡では、平氏一門の屋敷の庭園がみつかり、また中央区の楠・荒田町遺跡では堀で囲まれた屋敷のあと(平頼盛邸か?)が見つかっています。
僅か5か月後に都は京都に戻されましたが、福原に都があったことは確かです。
歴史の詰まった平野地区は、勉強中ですので改めてご紹介します。

祇園神社から福原方面

福原の南に大輪田泊(おおわだのとまり)があり、平清盛が大修復を行って日宋貿易の拠点となりました。
鎌倉時代には兵庫津(ひょうごのつ)と呼ばれ、国内第一の港となりました。
室町時代には日明貿易の拠点となり、朝鮮や琉球との交易も行われ、国際貿易港としての地位を確立しました。
1444年には大小2,500艘の船が入出港しており、その圧倒的な規模はハンザ同盟のドイツのリューベック港を遥かに凌いでいました。

私は兵庫津の歴史散歩に2回参加したことがあります。
最初は2022年3月の「兵庫津界隈まちあるきフィールドワーク」、次は「もくの会まちの文化研究会」の”神戸の古きよき街なみを巡る”でした。
両方の散策を基に兵庫津をご紹介します。

新開地から南西の港方面にある東出町は、かって飲食店や船舶相手の商売人が集まり、活況を呈していました。
その人々の信仰の対象であった稲荷神社が数多くあります。
その一つである「松尾稲荷神社」には日本一古いビリケンさんが祀られています。
ビリケンさんは通天閣が有名ですが、神戸が本家です(笑)

松尾稲荷神社
米俵の上に座るビリケンさん

兵庫津は日明貿易・日宋貿易の拠点として栄え、北前船の寄港地として、また灘の酒を江戸に運ぶ港でもありました。
兵庫津を3つに分けた内の一つ、岡方の惣会所です。
岡方の事業者が集まり、自治政治が行われた場所です。

天台宗の開祖、最澄が空海と共に渡った唐から兵庫津に帰国し、民衆の求めに応じて大乗の教えを説いた庵が「能福護国密寺」と呼ばれました。
現在の能福寺には、日本三大大仏である兵庫大仏があります。戦時中の金属供出で、現在は平成3年に再建された2代目です。高さは台座を含めると18mもあります。

兵庫大仏

踊り念仏で知られる時宗の開祖・一遍上人が亡くなられた真光寺(平安時代初期に創建)は、仏教の大檀林(学問所)でした。
一遍上人廟所の一番奥にある五輪塔は、阪神淡路大震災で倒壊し、中から骨灰が出てきました。

大伽藍は戦災で焼失し、再建されましたが、凍築には時宗の寺院や門徒が多く残っています。

清盛塚は、長年平清盛の墳墓として伝えられてきましたが、大正12年の調査で墳墓ではないことが判明し、近年の研究では清盛の供養塔であるとの説が有力となっています。
1286年に造立された十三重の石塔は、700年以上たった今でも、清盛ゆかりのこの地に堂々とそびえたっています。

コンクリート造りの3連アーチ橋「大輪田橋」は、神戸大空襲と阪神淡路大震災の2つの災禍を乗り越えた貴重な遺産です。
親柱が平和と安全を祈願するモニュメントとして残されています。

いかがでしたか。
神戸市民でも知らない人がいる、ちょっとDEEPな神戸の歴史をご紹介しました。

観光の際、ちょっと思い出して寄って頂けると、意外な神戸の魅力に気づかれるかも。


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