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人生を変えた占い師との出会い⑥

僕の人生を大きく変えた占い師との出会い
嘘のような本当の話の続編⑥です。

占い師に「君、ラーメン屋になりなよ」と言われてラーメン修行へと飛び出した。そこでの苦悩の日々と葛藤。


苦難の日々の末に

僕にとってのラーメン修行の日々は苦難の連続だった。

それまでの23年間は、器用だった僕は出来なかったことはなかった。
人がやっていることを見て、ある程度の練習をすれば形にはなっていた。

しかし、来々亭での日々はいくら先輩方の真似をしても上手くいかなかった。調理の基本や味付けは上手くなってきたのに、実際にお客様が入ってくると上手く出来なかった。

まるで1日1日が、初めてその場に立ったかのような感覚だ。

それでも平日はなんとか、チャーハン場の調理はこなせるようになった。

しかし休日のお客様が多い時間帯は、調理が間に合わず

店長に「もういい」と追い出されることが多かった。


<補足>来来亭では麺場1人、チャーハン場1人で調理をして、あとはホール数名で店がまわっています。


悔しい

自分の持ち場を追い出されるのは、本当に悔しかった。

唇を噛み締めて隣にあった皿洗い場に立っていた。

その時は、自分でもひどい顔してたと思う。

だからホールに出てお客様に接すなんて、出来なかった。

あの時に前だけでも向けていたらと今は思う・・


自己否定

持ち場を追い出されて悔しいけど負けてたまるかって気持ちも、何度も同じことが続くと自分ってダメなやつなんじゃないかと思えてくる。

皿洗い場に追いやられても、初めは店長や先輩の動きを観察して何か掴もうとしていた。だが、しだいに俯いて洗い物ばかり見ていることが多くなっていた。

正直、調理場に立つのが怖かった。

その頃の僕には、面接を受けた時の「来来亭を鳥取にも作りたい」と想いは消えていた。

心の中にあったのは「怒られないように仕事しよう」と思いだった。

そんな気持ちではいつまでも厳しいラーメン修行に耐えられるはずもなく、終わりが訪れる日がやってくる・・


戦力外

調理場に立つのが怖くなってからも、出来ないことが悔しいと言う気持ちで挑戦はしていた。

どこかやけになっていたのかもしれない。

そんなある日の日曜日の営業中に事件は起きた!

僕はチャーハン場に立っていた。

その日はいつもに増して、昼前の時間からお客様が多く来店された。

僕は必死に注文を聞いては調理をした。

土日になると平日には注文のないものが多く舞い込む。
定番の餃子、唐揚げの他に、白身魚フライ、豚キムチ、etc・・

だんだんと調理が遅れていく・・

そしてまだ営業開始から1時間という、12時を回ったとこだというのに、店長から

「おまえ出て行け」

と怒声が飛んできた。

さらにその日、言われたのは洗い場ではなく

「そこの隅で鍋を磨いとけ」

と言われ営業からも外された。


糸が切れた

僕は調理場の隅っこに追い出され、空になったスープ用の大きな鍋を
昼の営業が終わるまで磨き続けた。

時間にすると2時間か・・3時間か・・

同じ鍋の底を、何度も何度も磨きながら涙が溢れていった。

もはや時の感覚などなかった。

とてつもなく長い時で、店内はスタッフやお客様の声で賑わっているにも関わらず、僕の耳にはほとんど届いていなかった。

時折、隣をとおる同僚の視線が突き刺さったが、それも涙でうっすらとぼやけていった。


店内のお客様がほとんどいなくなった頃、店長が調理場を離れて僕をバックヤードに連れていった。

そこで店長から言葉をかけられた・・

正直、記憶に残っていない・・


その日、今まで必死につなぎとめていた心の糸が切れた・・


無断欠勤

僕はその日、初めて無断欠勤をした。

これは後にも先にもこの時の1度しかない。

ちょうど同日、深夜1時から月1のミーティングと、翌日の朝は仕込み当番だった。

僕は行かなかった。

帰宅してからずっと塞ぎ込んでいた。何も考えることが出来なかった。

仕事にいくのが怖いという感情だけがあった。


深夜1時に店長からの電話が何度も鳴るが、出れなかった

翌朝も電話が鳴っていた・・


逃げ

僕はこの時初めて嫌な仕事から逃げた。

どうしても店にいくことが出来なかった。

当時を振り返ると、少し前から逃げるタイミングを探していたように思う。

このような形で希望を持って始めたことを終わりにするのは辛かったが、この時の僕には店長に辞めさせてほしいと言う勇気がなかった。


退職

無断欠勤をした次の日の夕方、店長からの電話が鳴った。

この時は迷惑をかけて申し訳ない気持ちもあり、電話にでた。

すると店長は悟ったように

「鍵だけは持ってきてな」

と優しい口調で言った。

僕は

「すいません」

以外に言葉は出てこなかった。


そして翌日に店に行き、鍵を返した。

その時、店長と座って話をした。その時の店長の顔にはいつもの厳しい表情はなかった。寂しそうに言った「もったいないなー」という言葉を覚えている。


ここで僕の「鳥取に来来亭というラーメン屋を作る」という夢は終わったのだが、この話にはあと少しだけ後日談がある。

そして、この回のなかで「僕の中で変わったこと」を書こうと思っていたのだが書ききれなかった。

申し訳ないのだが、あと1話お付き合い頂きたい。


次回 ~後日談・僕のなかで変わったこと~

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