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週刊金融日記 第411号 ジョンソン英首相の集団免疫戦略の恐ろしさがわかることが新型コロナウイルス問題の定量理解の試金石、トランプ大統領がCOVID-19に宣戦布告、政府要請によりレストラン紹介コーナーは休止、就活市場は新型コロナでどうなりますか、他

// 週刊金融日記
// 2020年3月17日 第411号
// ジョンソン英首相の集団免疫戦略の恐ろしさがわかることが新型コロナウイルス問題の定量理解の試金石
// トランプ大統領がCOVID-19に宣戦布告
// 政府要請によりレストラン紹介コーナーは休止
// 就活市場は新型コロナでどうなりますか
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 新型コロナウイルスはマジでとんでもないことになってきました。ご存知のように、僕は1月の終わりに香港ディズニーランドに行く予定がいきなり香港政府により閉鎖されてしまい、仕方なくマカオに行くという経験をしました。マカオはガラガラだったんですが、なんとその直後にほとんどの収入をカジノに頼っているマカオがカジノを全閉鎖することになったんですね。
 そういうこともあり、ほとんどの日本や世界の識者にとって、新型コロナウイルスがまだ中国のよく知らない都市で起こっている疫病程度の認識で、日本にとっても当然のように他人事だったころから、僕はこの問題に注目することになりました。

★1月の終わりに香港ディズニーランドに行く予定だったのですが突如閉鎖されてしまい、仕方なくマカオに行きました。ここから僕の新型コロナウイルス研究がはじまったわけです。

★僕も最初の頃は楽観的でした。なぜならマスコミが騒ぐリスクの十中八九が大したことなくスルーが正解だからです。しかし、今回は違いました。

 いろいろ調べて自分で手を動かして計算してみると、これはヤバいな、ということに2月の初旬ぐらいに気づきはじめました。まだ日本のインテリ系のインフルエンサーのほとんどが楽観的で、こんなのはインフルエンザと同じようなものだが、ただ新しいからマスコミが騒いでいるだけだ、と言っているときに、いやこのままなら東京も世界もマジでヤバいことになる、と僕はブログに書いて警鐘を鳴らしはじめたわけです。

●新型コロナウイルス(COVID-19)の次の感染爆発の地は東京になりそうだ 2020年2月15日
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52168377.html

 幸いなことに、まだ日本は持ちこたえているのですが、イタリアで感染爆発が起こり、もうあと数日でイタリアの犠牲者の数が中国を抜くことになるとは想像以上でした。いまやイタリアだけでなく、フランスもスペインも戒厳令が出て、市民はかつての中国政府と同様に外出禁止になっています。

●イタリア 死者2000人超える わずか4日間で1000人以上増加
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200317/k10012334731000.html

★まさかパリやバルセロナまで、封鎖された武漢のように街から人がいなくなるとは、まったく想像を超えた事態になっています。

★そして、ニューヨークでも……。

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 鼻炎・咳に対する新しい対症療法
- マッチングアプリで出会う女性とも初回から狙うべきですか
- アナリストの予測は「長期的には」ある程度当たるそうですが本当でしょうか
- 就活市場は新型コロナでどうなりますか
- 藤沢所長の現在の金融資産を教えてください

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.ジョンソン英首相の集団免疫戦略の恐ろしさがわかることが新型コロナウイルス問題の定量理解の試金石

 僕は新型コロナウイルス問題にどっぷり浸かりすぎていて、論戦に参加してくるインフルエンサーや識者の知識レベルをたまに測りかねる。先日、イギリスのジョンソン首相が、一部で根強い人気があるノーガード戦略(=新型コロナウイルスなんてマスコミが騒いでいるだけだから、適当にやりすごすのが一番経済にいい。ちょっと老人が死ぬぐらいピーピー言うな)と思わしきことを演説したため、隠れノーガード戦略支持者たち(彼らの多くが個人的、あるいは仕事で株式市場をロングしている)が称賛していた。僕は個人的にはノーガード戦略が株式市場にプラスとはとても思えないのだが、驚いたのは、僕が当たり前だと思っていた知識を多くの人が持ち合わせていなかったことだ。

●新型コロナウイルスに対するイギリス政府の「ギャンブル」
https://www.rieti.go.jp/jp/columns/a01_0548.html

 新型コロナウイルス問題を考えるとき、いろいろなパラメータがあり、まず致死率だが、見積もりに幅があるもののインフルエンザよりはだいぶ高い、おそらく桁違いに高いということはよくわかっている。基本再生産数R(平均して1人の感染者が二次感染させる人数)はインフルエンザと同等かそれ以上で2~3程度と言われている。いま日本では休校したり、不要不急の外出を控えたりしているのは、このRをなんとか下げるためだ。これが1以下になれば、感染者数は増えていかないし、いずれ終息することになる。逆に大きな値のままだと、指数関数的に感染者が増えていき時間の問題で武漢やミラノのようになる。ヨーロッパ諸国は未だに大きな値のままだ。
 感染者を見つけて隔離することにより、感染の鎖を断ち切っていくことが、どこの国でも基本戦略である。そして、新型コロナウイルスは、インフルエンザと同程度のRといっても、感染の仕方がインフルエンザとは随分と違い、クラスタを形成することがわかってきた。多くの人は誰にも感染させないのだけれど、たまに屋形船やライブハウスのような閉鎖空間で飛沫(咳などで口から飛び散る水滴)がよく出るところに感染者が行き、一気に感染を広げ、感染者のクラスタを作る。日本は、この分野の一流の研究者が集まり、こうしたクラスタ潰し(クラスタを発見して隔離)が重要だと早い段階で気づき粛々とそれを実行してきた。こうしたクラスタ潰しの戦略がいまのところうまく機能しているように見える。
 ところで、外出禁止などがどのような効果があるのかについては以下のシミュレーションがとても面白い。

●Why outbreaks like coronavirus spread exponentially, and how to flatten the curve
https://www.washingtonpost.com/graphics/2020/world/corona-simulator/

 しかし、感染爆発が起きて、医療キャパシティを超えて重傷者が続出すると、武漢やイタリアのように助けられる命も助けられなくなる。この場合、新型コロナウイルスの致死率は、万全の体制であれば1%程度のものが5%を超えてくる。病院がいっぱいになり、医療崩壊が起こる。こうなると病院も戦場にようになり、武漢でもイタリアでも医療スタッフまでどんどん感染してしまうようだ。こうした事態は何としても避けたい、というのがいますべての国で目標になっている。イギリスも同じだ。

週刊金融日記 第408号 いまさら人に聞けない新型コロナウイルス(COVID-19)問題の勘所を解説する
週刊金融日記 第409号 新型コロナウイルス(COVID-19)問題の最新の論点を解説する

 じつは、この辺までは、Web記事などでもよく解説されているので、だいたいの人はよく理解している。では何を理解していないかというと、病院の集中治療室がいっぱいになるのは意外と早い、ということだ。
 イタリアの人口は約6000万人だが、このような医療崩壊はすでに確定感染者数が数千人のときに起きていた。6000万人の1%は60万人、0.1%で6万人、0.01%で6000人だ。検査でわかる確定感染者数の裏に、その十倍以上は感染者がいるだろう。同時感染者数がおそらく人口の0.1%にも達したら、だいたいの先進国でも医療崩壊が起こるということだ。これはイタリアのケースからトップダウンでも見積もれるし、実際の病院の病床数と重症化率などからボトムアップでも計算できる。だいたいの推計で、0.1~0.3%程度で医療崩壊する。

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