将来の夢
“君たちは受験生”
大学2年生になった私に降りかかる教授の声。
教員採用試験が来年に迫った私たちはどうやら受験生らしい。
しかし正直なところ、3年後の自分が何をしたいのかなどよく分からない。
指導案を書く日々。板書計画をする日々。
初めてやった模擬授業でダメ出しを食らって少しだけ落ち込んだ日。
余計に分からなくなった、自分が何をしたいのか。
なんとなく自分を見失ってしまったから。
小学生の頃からの漠然とした夢だけで生きてきた自分。
それは建前だけで生きている夢。
学生で居られなくなることがとてつもなく怖い。
「将来の夢は」なんて声高々に言っていた日々に戻りたい。
数年後のあなたはこんなにも悩んでいるんだよって無邪気に話す私に教えてあげたい。
好きな人が出ていた某密着番組。
なんだか少しがっかりした。
見なきゃ良かったとも思った。
何より羨ましく思えた。自分でない何者かに成って、それに感情移入できる姿が。
なりたいものが分からない私には、彼の努力も幸せも全て残酷な姿だった。
そんな彼の舞台を見に行った。
彼は彼じゃない誰かだった。
そいつに成って女を抱きしめて、そいつに成って悲しんで、そいつに成って女を怒鳴りつける。
やっぱり羨ましい。
私も私じゃない誰かを演じてみたくなった。
将来を見失った私は好きなものを好きなまま受け止めることもできなくなってしまった。
夢ってなんだろう。やりたいことってなんだろう。
それを叶えるための努力ってなんだろう。
生きるって難しいね。
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