言語ゲーム

「この映画、面白そうだよね」

「どんな映画?」

「結構、気持ち悪いかも、人とか死んだりするやつ」

「わたし、そういうの得意だよ」

「ほんと?」

「うん、あ、ちょっとトイレ行ってくるね、コーヒー飲みすぎちゃった」

「うん」



「ごめん、それで、なんだっけ?」

「映画の話」

「そうだった、結構、グロいのとか、見るの?」

「あんまり、ただグロいのは見ないかも」

「この映画はただグロい?」

「わかんない、見てみないと」

「そうなんだ、見てみたい」

「ただそれだけって、つまんないじゃん、あ、映画の話ね」

「映画じゃなくても、つまんないよ」

「そうかな」

「わたし、映画の感想言うの、苦手なんだよね、面白いか面白くないか、それだけしか出てこないことがほとんどで」

「そうなの?どのシーンが良かったとか、そういうの、ないんだ」

「言われればわかるけど、自分からは、出てこない」

「変なの」

「だから、あんまり誰かと映画に行ったりするの、苦手なの、絶対帰りに映画に話になるから」

「なんでそんなこと、俺に言うの」

「だって、映画の話になったから」

「そうだけど」

「あんまりこのこと、人に言ったことないんだよね、言ったらみんな、わたしと一緒に遊んでくれなくなっちゃいそうじゃない」

「それはずるいよ」

「なんで」

「そんなこと俺に言わないでよ、今遊んでるのに」

「あなたは彼氏だからいいじゃない」

「そうだけど」

「彼氏にはなるべく内緒なことを少なくしたいんだよね、わたしは別に、彼氏に何か内緒にされてもいいんだけど」

「(彼氏だから)って、いい言葉だよね」

「まだ付き合って2週間くらいだけどね、新鮮でしょ」

「そういう意味でもあるんだ」

「そうだよ」

「付き合う前からそうだったような気もするけれど、君は回りくどいのか、ストレートなのか、わかんない時があるよね」

「付き合う前からそうだったかしら」

「わかんない、そんな気がするだけ」

「わたし割とはっきりした性格なんだけど、前にね、はっきりしすぎて喧嘩になったことがあったから、あ、君って、元彼とかに嫉妬するタイプだっけ」

「話による」

「じゃあ、自分で判断してね、やめてって言ったらやめることにするから」

「そんな怖いこと言うの」

「映画よりグロいかも」

「え、じゃあやだ」

「でもグロいだけじゃないよ、そういうの好きって言ってたじゃん」

「映画はね?」

「なんだ、じゃあしない方がいいか」

「やめといて」

「うん」

「君の元彼とか、元好きだった人とか、一体どんな人だったんだろうって気になってるくらいが、君のこと好きでいられる気がするから」

「小説みたいなこと言うんだね」

「だって本当だもん」

「そんなこと言うあたり、あなたも相当、元好きだった人に心をやられている人間だとみた」

「(君も)ってなんだよ」

「そういうことよ」

「なんか、君と同じにされると、すっごい恥ずかしいんだけど」

「そう思ってくれるなら、うれしい」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?