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第五十七話【手当】(Vol.561-570)

Vol.561
出来上がった餅を食べながら
夜、子供達と談笑する。

「冬休み何したい?」

「映画行きたい」
「ボーリングしたい」
「釣りしたい」
「カラオケ行きたい」
「メダルゲーム行きたい」
「USJ行きたい」

「そんなら、ディズニーランドでしょ!」

・・・

好き勝手に子供達は話し続ける




Vol.562
行けるところには制限がある。

しかし、制限を取っ払って考えるところに
新しい気づきが生まれるのだ。

そんな感じで話していてら
最後はなぜか
“ホワイトハウスへいく!“までたどり着いてしまった。

子供たちの想像力は
計り知れない。




Vol.563
結局、お正月のお出かけ行事は
多数決で映画鑑賞に決まった。

さて、そこからが問題だ。

何を観るか。
これが一番悩ましい。

それぞれに興味があり
なかなか決まらない

バラバラに行くこともできないし
こんな時、人気投票によって決まる

そこは年上に権限があるとかはないのがいいところ




Vol.564
結局、映画は正月残っている児童で
決めることになった。

穏やかにすぎる冬休み。

来月のシフトを組むのは
岩兄さん

宿直室に岩兄さんが入ってきた。
「ヒロ兄さん。ちょっといい」

「はい。どうぞ。どうされましたか?」

「うん。正月の勤務やねんけどね。兄さんの予定は?」




Vol.565
ボクの年末年始は特に予定はなかった

「特にないですよ。実家にも帰らないし。」

それを聞いた岩兄さんは少し安心したように語り出した。

「そうなんや。実は年末年始の勤務表を組んでて、どうしようかなって思っててん。三が日は、特別に手当も出るねんけどどうする?」

ボクは唾を飲んだ




Vol.566
「是非!やらせてください」

大晦日からの三が日まで
連続4勤を志願した。

手当が付くことと、正月の学園はどんなのだろうという好奇心がボクをその気にさせた。

岩兄さんがいう。
「のんびりやってくれたらいいから」

そう。
大晦日から2日までは
消灯時間なしなのだ。




Vol.567
まさに子供たちにとって
特別な三日間だ。

しかも、大晦日には
年越しそば ならぬ
年越しラーメンが企画されている。

22時過ぎから
学園に残っている
小学生以上の児童を対象に

職員とラーメンを食べに行くという行事だ。




Vol.568
どこのラーメン屋が開いているか
事前にリサーチが必要になるが
ワクワクな行事である。

中には、自宅への帰省を拒み
学園に残ろうとする児童もいる。

自宅より学園で過ごす方が
お年玉ももらえて、
お出かけもできるからだ。

それを知ると
胸が痛いくなる。




Vol.569
それぞれの家庭で事情がある
経済的な面では施設の方が
安定しているかもれない。

ただ、心の安定はどうなんだ?

食事や環境が苦しくても
家族との時間を求める児童もいる

家族との時間は何ものにも
変えられない特別なものなんだ。




Vol.570
ボクは“特別手当“を若干楽しみにしながら
年末を待った。

そして、とうとうやってくる
大晦日

朝から帰省する児童の対応に追われる
「宿題持ったか!」
「忘れもないか!」
「いつ帰ってくる?」

そんな慌ただしいやり取りをしながら
大掃除をこなすボク。

だんだんと子供が減っていった。

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