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第二十四話【喫茶】(Vol.231-240)

Vol.231
ロマンスグレーの髪型が
また一段と渋さを醸し出している。

ケンタ兄とボクは校舎を回りながら
子供たちの様子を見て回った。

珍しい校舎の造りに驚くボク。

「これな、円形校舎っていうねん」
ケンタ兄が教えてくれた。

階段を囲むように
教室がぐるっと配置されている。




Vol.232
山の麓にある学校では
敷地がなかなか取れなかったためだろうか
適当な予想をしながら
子供たちの姿を見て回った。

どの子も
「あっ!ヒロ兄!ケンタ兄!」

と手を振りながら
まるで自分が宝物を見つけたかのように
はしゃいでいる。

(先生に破ることをしたな)と
ボクたちは顔を合わせた




Vol.233
罰が悪い少年のように
ボクとケンタ兄は職員室に戻り
挨拶をして小学校を後にした。

「子供たち、元気そうですね」
そう切り出したボクに

ケンタ兄は
「そやなぁ、まぁ、今はこの調子でいってくれてるけど
一旦コケたら大変やからな。登校しぶりだしたら大変やで」

「そうなんですか」




Vol.234
ボクはケンタ兄の話をそれほど重く受け取っていないかった。

この後、登校しぶりの戦いが始まることはまだ想像できなかったのだ

ブルン
車のエンジンをかけて
学校を後にした

「えっと、今何時かな?」

「まだ昼前ですけど、どうしましたか」
ボクが尋ねると

ケンタ兄がニヤリと笑った。




Vol.235
車は学園を過ぎ、
JR駅の方へと進んでいる。

「どこいくんですか?」と尋ねるボクに

「まぁーまぁ〜」
と曖昧な返事で交わすケンタ兄

駅から少し離れたところにある店で車を停めた。

「着いたで」
ケンタ兄に言われるまま降りると

喫茶檜と書かれた看板が目に飛び込んできた。




Vol.236
喫茶檜?なんだろう?
と思っていると、

「入るで」とケンタ兄。

カランコロン♪
カフェ独特のあの音が心地よく店内に響く。

「おう!いらっしゃい。」
サイフォンでコーヒーを淹れるマスターが
声をかけてくれた。

「こんにちは。来ました」
ケンタ兄が挨拶すると

ボクもその後に続いた




Vol.237
「はじめまして、今年から学園で働くことになりました。ヒロです。よろしくお願いします」

挨拶をすませると、マスターがどうぞとカウンターを進めてくれた。

「何する?」
ケンタ兄はカフェオレを注文。

ボクは「ホットで」とこたえた。

「あいよっ」
笑顔で対応してくれるマスターだ。




Vol.238
「ここな、いつも学園がお世話になってるねん」
ケンタ兄が教えてくれた。

聞くと、マスターと福祉会の常務が友達だとか。
そのつながりで、学園の行事にも協力してくれているのだ。

マスターのような地域の方の力によって
学園や施設の子どもたちは守られている。
もちろん、我々職員もだ。




Vol.239
マスターは手際よく
ビームヒーターに火をつけて
ロート・フラスコをセットした

いつも思うのは
サイフォン式は
まるで理科の実験のようだ。

湯が温まると
ポコポコ沸騰してくる。

湯がロートへ上昇し
中の豆と出会い
絡み合う。

タイミングを合わせて
ヒーターの火を落とすマスター




Vol.240
フラスコへと
コーヒーが流れこんできた。

出来上がったコーヒーを
「どうぞ」とマスターが出してくれた。

(いい匂いだ)
ボクは、いただきますと伝え
一口いただいた。

コーヒーの味には詳しくないが
ホット落ち着くすっきりとした味が
口の中に広がった。

コーヒーの風味が鼻から抜ける

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