第三十八話【歓迎】(Vol.371-380)
Vol.371
ふぁ〜いっ ってなんやねん。
コンマ0.1秒かもしれないが、
確実に時間が止まった感覚を得た。
(恥ずかし)
ふと気がつくと
振り返って礼をしているボクがいた。
おそらく顔は真っ赤だろう。
やっちまった。
一発ガツンと気合いを見せるはずだったのに。
ハジを見せてしまったぜ。
Vol.372
完全に失敗してしまったボクは
その後のことはよく覚えていない。
新着任メンバーの代表挨拶があり
(ボクではない)
各園長からのお祝いの言葉と続く。
こうやってボクは
正式に福祉会の一員になれたのだ。
辞令交付式の後は、
1階に降りて食事会となった。
Vol.373
1階は保育園。
保育園の遊戯室というか、ホールがある。
そこに座卓をガッと並べて簡易の食事会場が用意されていた。
きっと前日、保育園の職員さんが
この日のために準備してくださっていたのに違いない。
見えないところで準備に動いてくださる方に感謝する。
#心のメモ に書き残した。
Vol.374
6階の神殿から移動へすると同時に、
食事が運ばれてきた。
オードブル。
乾き物。
お茶に
ビール。
えっ。ビール?
酒っすかっ!
いいんすかっ!
まじっすかっ!
そこには大人の世界が広がっていた。
Vol.375
一同が着席し
司会が話し始めた。
「新たに福祉会の一員になられた皆様。おめでとうございます。それではこれより、歓迎食事会を行います。初めに、福祉会を代表して・・・」
関係者のお祝いの言葉を聞きながら
ボクは周りを見渡す。
縁あって一緒に働くことになった人たちだ。
Vol.376
「それでは、乾杯へと移らせていただきます。」
気がつけば、周りはビールの缶を
プシュプシュ開けまくりながら
注ぎ合戦が繰り広げられていた。
・・・
(しまった。乗り遅れてしまった。)
積極性が求められる
乾杯の儀式。。。
率先力を学んだ。
Vol.377
「それでは、乾杯を当施設・常務よりいただきます。」
司会の声に合わせて登壇したのが常務。
どーんした体格
長い耳たぶに
食パンのように真四角のフェイス。
外で見ると、福祉といより
そっち系の方かと思われる風貌に
頭が下がる。
会場もどこかピリッとした空気が流れた。
Vol.378
「えぇ〜では、僭越ながら
この度、当福祉会に来てくださった皆さん。
ありがとうございます。
私たちは皆さんが来てくれるのを楽しみにしていました。
今日から仲間であります。
当施設の理念を受け止めつつ、子どものために一緒になって前進してまいりましょう。
それでは、乾杯」
Vol.379
常務の話の後
乾杯に移った。
グラスに入ったビールに軽く口をつけて
拍手が起こる。
お決まりの流れである。
“子どもため“
何事も、この一言に尽きるのだが、
この一言をかざせば 何でも通ると勘違いしている人も多い。
が、まだ理想に燃えているボクには
理解することができなかった。
Vol.380
乾杯のあと歓談となった。
ボクはこの後の仕事を考えると
(ビールを呑むわけには行かない)
と判断し、口をつける程度で我慢した。
(チクショウ!本当は呑みまくりたい)
自分のテーブルに座っている職員さんに
挨拶を交わして歓談を楽しむ。
実は、ボクは歓談が苦手だ。
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