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こういうのも人生かもね

小説を書き始めてもう20年以上になります(マジ?)。
投稿数は(歴の割に)多くはないと思いますが、これまでいくつか賞にも投稿して、結果は散々です。
ちょっとここ最近創作について、自分が創作すること、書くということについて考え方が少しずつですが変化してきているので、ちょっとそのあたりを含め今までどういう創作をしてきたのか振り返ってみようと思います。
同じような立場の人に何かしら考えるきっかけになっていただければ。

1:目覚める(中学〜高校)

僕はあまり読書をする方ではありませんでした。活字が嫌いとか好きとか以前の問題で、あまりそういうこと自体に意識を向けていないタイプの子供だったと思います。勉強はまあ得意な方でした(成績は悪くなかったです)。
そういう自分が小説を書くようになったきっかけ。
普通だったらここで気の利いたエピソードの一つや二つが出てこないといけないのかな〜とも思いますが、自分にとって一言で言えばそれは『圧倒的な衝動』でした。
とにかく急に、『あ!なんか書きたい!』と思って、それで書き始めました。
とある作品の二次創作からスタートして、中学生ながらサイトを作って載せたりしました(当時はネット黎明期で、投稿サイトなんて当然ありません)。ほぼ同時期(高校受験が終わったくらい)に「小説を書くならちゃんと本を読まないとダメだ」と読書をスタート(普通は逆ですよねこれ……)。
年100冊くらい読んだりしつつ、高校生になってから初めて賞に応募しました。
当時の自分の中では小説を書くことと小説家になることはイコールでしたので、自然な流れです。
応募先はあのファウスト賞。
まあ、詳しい説明は割愛します。若者限定の短編賞、ジャンルは割となんでもあり、といったところでしょうか。
編集者のコメントが全作品もらえるのがウリの賞で、初投稿作品へのコメントに『16歳とは到底思えない文章力』と書かれていました(厳密にはもうちょっと色々書いてあったんですけど)。
思えばこれが私の人生を狂わせました。
まだ若く青臭い僕は素直に思いました。
――おっしゃ!俺は文章力で勝負するで!
まあ、もともと自サイトの小説でも割と文章(表現)を褒められることは多く、そうかあ僕はそれが得意なんだな!と思ったのですが、
それは茨の道です。
その言葉を間に受けてはいけなかった……。

これを間に受けた僕は、あろうことか純文学に手を出すのです。

2:純文学に挑戦する(大学〜20代)

まあ、僕の最初期の作品はかなり暗くて鬱々としてる、ブンガク!って感じの作品でした。あくまでカタカナですが。
ファウスト賞に出した二つ目の作品もそういうものを出したのですが、一言だけのコメントで撃沈しました。しかしそこで自分は書きたいものがそれだったので、そのままいくつか純文学の賞に応募します。
結果は軒並み撃沈。
惨憺たる成績でした。
いやあ。
(もしかして原稿をダブルクリップ以外のもので留めてたのが原因なのかもしれない…と最近思いましたが、まあいずれにせよダメなものはダメです。もうこれはどうしようもないこと)
このうちの一つの作品をひっさげて初めて文学フリマにも参加しましたが、売り上げは0でした。や〜すごいね。笑っちゃうくらいうまくいかない時期です。
文学フリマはまあ、左右のサークルがものすげえ呼び込みをしてて人が逃げまくったというのが実感としてかなり強く、その後しばらくしてから参加したら「過度な呼び込みは禁止です」ということが明記されていたので、多分(他のところでも)同様のトラブルがあったんだろうなと思ってます。
この時期、私は本当に孤独な戦いをしていて、賞に出しても雑誌に名前すら載らず、他に創作をしている人の姿が見えておらず(良くも悪くも見ようとしてなかっただけだとも思いますが)、自分が書いているものは一体何なんだろう、というふうに悩んでいました。
僕は(これは今もそうですが)基本的に自分が書いているものが超超超大好き人間なので(多分ここが本当にダメなところ)、こんなに素晴らしいものを書いているはずなのになぜこんなに結果がついてこないのか、ということに愕然としていました。
いやあ、若いね。
そしてこの時期、私の人生に二つの転機が訪れます。

3:性の自覚・メンタルが終わる

【1:同性愛者として】

自分が同性愛者かもしれない、という気持ちは高校くらいからまあ持っていなくはなかったのですが、なんというかそれが確定していなかったというか、保留している時期が長く続いていました。もしかすると高校が男子校だったのが逆にダメだったのかもしれないな!?と今はちょっと思います。それって選択肢がないことが理由になっちゃうんですよね、女子がいないから男子に惹かれてるだけなんじゃないのかなーという風に。他の人がそうなるのかはあんまわからないですが。
大学くらいでああやっぱそういうことかなーとうっすら自覚します。
そんなこんなで『ゲイ』をテーマにいくつか作品を書きました。
『沸騰』『Please make me gay.』という作品で、前者は同性婚、後者はアイデンティティをテーマにしている作品です。同人誌にも収録したのでもしかすると読んでいただいた方もいるかもしれません(同人誌は頒布終了)。
この二作品は文藝賞に出しました。
当時は今ほど同性愛・ゲイをテーマにした作品は少なくて、文藝賞ではそういう受賞作が少なからずあったのが理由です。受け入れられる素地があるかな、という判断でした。
まあ、ダメだったんですけど。
出すのもね、ドキドキしましたよ。
あ〜これを出すことで俺は周りにもカミングアウトしてないのにゲイであることを公表するんや〜とか色々。完全に取らぬ狸のなんとやらでしたが。
まあそんな僕が今では『ゲイが書く文学とBL』というポスターをでかでか掲げて文学フリマに参加しているのですから、時代は(時代も)変わったなという気がしますね。

【2:メンタルの終わり】

大学前、就活が始まる前くらいでしたが、父が急逝しました。病名などは伏せますが、病気がわかって二ヶ月でという感じでした。
まああまり仔細には書きませんがそれまでも僕はずっとメンタルがぐらぐらで(もともとの気質も、自分がゲイであるということも、色々が理由だったと思いますが)、だからきっとずっと小説を書いていたんだろうと思います。
そしてこの父の死をきっかけにバランスが一気に崩れてしまって、私のメンタルは終わりました。
就活もなんとかして内定をいただきましたが、結局お断りしました。
電車で椅子に座りながら、自分の精神が破裂する音をしっかり聞いたのを覚えています。

4:また書き始める(30代〜)

そんなこんなで、小説を書く以前に生きていくのがやっとの状態になってしまい、もう毎日何もできずという感じでした。書くなんてのももう全然無理。
変なことに本はこの時期結構読んでました。
そんな中で一つ自分に大きなきっかけをくれたのは読書会でした。
同性愛者のひとによるいわゆる社会人サークルで、ゲイの友達が欲しかった僕はそこに参加します。
そこのサブ活動みたいな感じで創作活動があり、僕は久しぶりに小説を書きました。
さらにその活動の一環でアンソロジーを作って文学フリマに再び参加することになり、ありがたいことに多くの方に手に取っていただけました。
そのとき、アンソロジーには「大人のゲイ」というテーマがあり、僕は『何度も燃えあがる』という作品を書きました。
これが僕の初めてのBL作品です。これを書いて、あ、BL書くの楽しいかも!?と思いました。
それは茨の(以下略)

そして文学フリマで「手に取ってもらえる」という体験をした僕は、個人サークル活動も再開しました。幸い書き溜めたネタなどもあったので、ゲイ文学作品集などを出し、いろいろな方に手に取っていただきました。

いろいろとあったりなかったりで(人間関係って難しいね)読書会はやめてしまいましたが、自分の人生にいい影響の(も)あった場所だったなと思っています。だいぶポジティブになったな。

5:そして書き続ける

そうこうしながら公募にもちょっと応募したりしましたが(『屹立』/第3回ことばと新人賞)、やっぱりダメでした。
前述の通りBLを初めて書いたり、BLの創作イベント(J.garden)に参加したりもして、BL公募に応募してみるという選択肢が自分の中に生まれます。
これは結構大きなできごとでした。
今まで自分にとって 作家になる=純文学作家になる ということだったので(ファウスト賞は?というのは置いておいて)、他の選択肢が出てきたことが大きかったんです。
そしてweb公募だった第3回ビーボーイ創作BL大賞で、応募した作品『手品もしくは魔法』が初めて最終候補になります。
本当に嬉しかった。今までボールを投げても闇に吸い込まれてただけだったのが、ぽんっと不意に手元に戻ってきた感じです。
まあ、その後の選考過程なんかを見るとこれは実質的には一次通過なんだろうなと思いますが、公式に最終候補だと言っているので、ヨシ!です! ポジティブ!
イベントの際に出版社に持ち込んだ同人誌も概ね高評価だったりと、あ、ここでいけるかも!?とちょっと思います。
と言いつつ次に出したディアプラスBL小説大賞(『カラスが飛ぶように、』)が『その他の作品』という謎分類にされてしまい、ウワ〜やっぱりBLわからねぇ〜〜〜〜となってしまいました。

6:創作は楽しいですか?

と、まあ色々書いてきましたが、メンタルが終わってからももう15年?くらい経っていて、色々と自分の機嫌の取り方もわかってきた部分もかなりあり(もちろん他の人ほどじゃないけど)以前よりはずっと安定してきたなと思います。
(余談ですが、ライフログを書くのが自分はメンタルの安定に本当に役立っているので、自分は調子が乱高下するなって人はぜひ一度やってみても良いと思います。「あ、ここ最近調子悪いな」とか把握できるだけでだいぶ違うので…)
あとは、ここ最近なんか自分自身への評価を他者に依存させないってことができるようになってから、気持ちはだいぶ楽になりました。シンプルに自分のことが結構好きになってきたと思います。できるようになった理由はあんまわかんないんですけど…。
とはいえ公募はね、これと真逆で、他者(出版社)の評価がすべての世界なので、なかなかね、厳しいものがありますね。

プロになりたいのか
小説が書きたいのか
飯が食いたいのか
評価されたいのか
名作を書いて名を残したいのか
人を感動させたいのか
自分が満足したいのか

当たり前のようにこの辺がぐちゃぐちゃになっているので(そもそも切り離せるものでもない)、少しずつ自分と向き合ってやりたいことを見極めていかないと。じゃないと続けられないですね…。
昔はすごいシンプルで
自分が満足いく作品を書いてプロになって小説を書いて飯を食って人を感動させて評価されて名を残すんだよ俺は!!
って思ってたけど、さすがに20年経つと
おめーにそれは無理なんだよ
ってのはわかるので、ね。
頑張ります!

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