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5ヶ月振りの社会復帰

そしてとりあえずの生活費が必要なため日払いの派遣バイトを探した。
創業○○○年の老舗旅館の配膳の仕事に応募したが、程なくして決定し、3日間限定の中居さんをやる事になった。
仕事内容自体はごくシンプルで、器やお膳のセット、簡単な接客、清掃など。
1日6時間の仕事だったが、

「長時間畳の上を歩き続ける事」

が俺の人生の中にはほぼ無かったのもあってか、
足の甲が腫れたかと思うように痛くなり、膝にも腰にもかなりの疲労が溜まってしまった。
ただ歩くという事にも、靴を履いて地面を歩くのと、靴下を履いて畳を歩くのでは、使う筋肉がこんなにも違うんだと思い知らされた。
尚且つ、小休憩もないまま6時間ぶっ通しで立ちっぱなしで働かされるのだ。

そして極め付けは最終の3日目、配膳や片付けが終わりそれまで一緒に働いていた人達の内1人が、

「テーブルを拭いておいて!適当に拭いたらやり直しさせるからね!」

と、今日に至るまで大してちゃんと拭いてなかったような四隅の汚れたそのテーブルを指差しながら
妙に激しく申し付けて、その後、彼女達はどこかに消えた。
「まあ他に仕事があるんだろう」とこの時は思っていた。

やがて丁寧にしっかりと一つずつ取り行ったテーブル拭きも終わり、掃き掃除に取り掛かろうと思い帚🧹を取りに通路に出ると、仕事を指示した人達は奥の方で何やらモグモグとのんびり食べているじゃないか。俺が視線をやるとテーブル拭きをお申し付けになられたお局様(っぽい人)と目が合ったが、悪びれるわけでもなく、そんなの当たり前だと言わんばかりの態度で口を動かしている。
その状況に気付いた他のスタッフ(この人も勿論隠れてモグモグしていた)が、宴会場で掃き掃除をしようとしていた俺に
「もうテーブル拭きはその辺でいいから、ドリンク飲んだ?今のうちに飲まないと飲めないよ。」

と、お客様朝食用の余ったドリンクを指差し俺に気を遣う仕草を見せた。

まあ、派遣バイトの扱いなんてこんなもんか、とも思ったが、この○○○年続いているという老舗旅館は
その外観やボロボロ崩れ落ちてくる宴会場の土壁だけでなく、何もかもが昭和のまま時間が止まっているんだなと感じた。(その他畳が汚すぎるからとマジックリンを染み込ませたタオルで拭くようにと指示するのだ。これは流石に、温泉に入った後裸足で来られるお客様の事を考えたら受け入れ難く、勝手に水拭きにしたが。なので、オンボロ温泉旅館の畳を歩く時は注意しましょう)

しかし極め付けは、その人達は正社員もしくは旅館直属のパートだと思い込んでいたのが、実は同じ派遣会社のアルバイトだったということ。

いやはや、なかなか面白い3日間でした。

この経験が、後に始まる何かの礎にもなるのだけど、それはまた、別の、話…





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