フツメンが婚活パーティーで、人気者になれちゃうテク

婚活パーティー、というイベントをご存じだろうか。

規模は様々だが、結婚したい男女が近い比率で集められ、カップリングを目指してしのぎを削り合う、熾烈なサバイバルゲームである。

私は婚活中、軽く20回は参加した。

多くは男女が15人ずつくらいの規模感であり、運営会社によってシステムや雰囲気は異なるのだが、共通しているのは「プロフィールカード」なるアイテムが存在していること。

これは小学校高学年の女子に流行る「サイン帳」のようなもので、個人情報や好きなタイプといった項目を埋めていく。

事前にネットで回答したものが当日印刷されているケースもあるが、多くは手書きで、婚活パーティーがはじまる前に各自記入するのだ。

このプロフィールカードは、会話をする異性と交換し、お互いのカードを眺めながら話題を模索していくのだが、女性が真っ先にチェックするのは「年収」と「職業」で、男性が注目するのは「年齢」と眼前のルックスである。

ちなみに女性側のカードには、「年収」の欄が存在しない。
私はこの事実に気づいたとき、婚活ビジネスのパンドラボックスの表面を撫でたような、ゾワリとした気まずさを味わった。

迅速に上記の項目を確認し、一次審査を通過したプロフィールカードの中で、続いて目が行くのが、男女共通して「趣味」の項目だ。

初対面同士の会話のとっかかりで、一番無難であるし、動かせない事実である年収や年齢と異なり、書き方が工夫できるこの欄に、婚活パーティーの運命はかかっている、と私は考えている。

婚活プロフィールは"趣味欄"がすべて

婚活パーティーで200人近い男性と出会った私が集計する、男性が趣味欄に書いてくる内容トップ3は以下だ。

1、旅行(海外旅行)
2、映画鑑賞
3、美味しいモノを食べる(食べ歩き)

タイムリーに婚活中で、俺もこれ書いてるよ!という紳士の皆さん、ごめんなさい。突き刺してしまうかもしれない。。。
先に謝ってから続けたい。

「これ、嫌いな人、いる?」

「旅行と映画と美味しいモノ、嫌いな人、いる????」

もちろん、旅行はめんどくさいから好まないとか、映画は滅多に観ないとか、食事にあまり関心がない人がいるのは知っている。

しかし、そんな人も、好きだ、と主張する人に食ってかかるほどの強いヘイトではなく、「自分はあまり興味ないけど、たまにするといいもんと思うときもある」くらいの温度感ではないだろうか。

そう、この「俺の趣味・御三家」は、多くの人にとって、ご褒美、娯楽的な意味をもっており、貴重な趣味欄をつかってアピールするには、あまりにも普通すぎるのだ。

同じ理由で、スポーツ観戦、お酒を飲む、カフェ巡り、音楽鑑賞などもやめたほうがいい。いずれも多くの男性が書いてくる。

「え?好きな人が多いなら、共通の話題として盛り上がるからいいんじゃない?」と思うかもしれない。

確かに大衆受けする趣味を書くことは「無難」ではある。

だが思い出してほしい、ここは婚活サバイバル

どの女性も、短時間に15人~20人の男性に会うのだ。
よっぽどイケメンであるとか、年収1000万越えであるならば別だが、フツメンで平均年収の男性が「趣味・旅行」と書いていたら、まず記憶に残らない

旅行記のブログを書いていて、月間100万PVです!や、うどんが食べたくなったら、香川県にひとッ飛びっすね!というガチな方は書いてくれて構わないが、それくらい突き詰めた「趣味」でない場合は、安易に手を出さないほうがいい。

「無難だから」と埋めた趣味欄に、自分の首を絞められてしまうのだ。

では一体何を書いたらいいのか?
ここからは男女別に考えていきたい。

婚活向きの趣味とは?【男性篇】

婚活は顔勝負だと思っている方も多いが、男女ともに上位10%くらいのグッドルッキングパーソンは、滅多に婚活市場に参上せず、いても凄まじい倍率か、サクラだと思われて敬遠される。

参加者は見た目が清潔で適度に会話も楽しめる、「普通の人」が男女ともに多いので、なおさら初期の印象勝負になる。

そこに効いてくるのが「趣味欄」であり、実際に私の印象に強く残ったものは、以下の回答だ。

①ゲートボール
②郵便番号の暗記
③水

①サッカー、野球、バスケ以外のスポーツ。

スポーツに精を出す男性は、いくつになっても魅力的だ。

だが競技人口が多くメジャーな種目だと、やはり印象が弱いので、五輪種目に採用されていない認知レベルの競技経験者は、試しに書いてみて欲しい。

フリータイムで「誰だっけ?」と思われていた印象が、「ゲートボールの人だ」と脳内で名前がつくことで、他の参加者よりも一歩も二歩もリードできる。

印象に爪痕を残さなくてはいけない婚活では、これが何よりも大事なことなのだ。

②めずらしい特技

私はこの男性とカップリングしてデートまでしたのだけど、郵便局の職員でもないのに、「職場は中目黒なんですね、152-0001だ。お住まいは○○ですか、××番ですね。」と独創的なアイスブレイクをされたことは、強烈なインパクトであったし、単純にすげーー!!と思った。

結局お付き合いはしなかったのだが、「この人何を考えているんだろう?」とプラスの興味が湧いた。

なかでも、自分の身長が165センチだから、郵便番号165から始まる中野区に引っ越した、という狂気のエピソードがとても好きで、もう顔はあまり覚えていないが、宛名を書くときに存在を思い出しては、元気にしてるかしら、と考えたりもする。

「ニッチな趣味は引かれるから書くな!」が婚活指南本の口癖だが、どうせ1人としか結婚しないのだ。
全員に好かれる必要はないので、アニメでも昆虫でも郵便番号でも、趣味があるなら、正直に書いたほうがいい。

面白がってくれる女性も、一定数いる。
それが趣味マイノリティに必要な「モテの本質」である。

③水

これは「効きミネラルウォーター」ができる、という人で、②と同様、「ちょっと変わった人だな」に加えて「なんか頭よさそう」と感じさせもする。

しかも日常的に誰もが口にするものなので、会話の糸口もつかみやすく、「ほんとだって~じゃあ今後試してみようよ!」にもっていきやすい、「うまいな」と感じるチョイスであった。

以上、男性の婚活プロフィールでは、他の人とかぶらないこと、さらに多くの女性が結婚相手に期待しがちな「知性」「たくましさ」「少年ぽさ」がにじんでいる趣味を書くことが、モテへの大手である。

次に女性の場合なのだが、男性の趣味よりもNG要素が多いので難しい。

婚活向きの趣味とは?【女性篇】

女性が多く書く趣味も男性のランキングと似通っていて、「映画鑑賞」が「ヨガ・ピラティス・ショッピング・ディズニー」にかわった感じだと思って欲しい。

男性の場合はとにかく「個性」がでることが大事で、オンリーワンを探すため、いくらか尖ってくれてもいいのだが、女性の場合は、もう少し複雑だ。

自己紹介後の「フリータイム」と呼ばれる、決まった順番ではなく、好きな相手に話しかけていい時間が婚活パーティーの勝負所なのだが、女性は自席を離れることができず、男性のみに自由に話したい相手の席に行く権利がある、というシステムのイベントが多い。

そのため、人気女性には長蛇の列ができる一方、誰もきてくれず、一人でポツン…としているしかない女性も爆誕する。
かなり、悲しい。すっごく、ツラい。

この状態は婚活継続を揺るがすほどのダメージを与えるので、「たった一人がみつかれば…」などと言っていられない。

女性の「趣味欄」は、他の参加者と差別化して印象に残りつつ、なおかつ幅広い男性に好まれるような内容でなくてはいけない。

婚活男性に大枠で支持される趣味の傾向は、あまりお金がかからず、女性らしく、品があり、専門的すぎず、ささやかで、見た目がかわいらしいモノだ。

そんな都合のいい趣味、なくね?と思うかもしれない。

しかし私は、1つの答えにたどり着いた。

美人ではないし太めな私が(婚活中は12キロ落としていたが)、毎回のように人気女性の一角入りしたパーフェクトな趣味

それは、「紅茶」だった。

嘘から誠を…ひねり出す!!

手ごたえのなかった、2回目の婚活パーティー後にこの回答を導いた私は、すぐに動きだした。

結婚相手になるかもしれない相手に、嘘はよくない。
なので、「午後ティー」くらいしか飲んだことのない紅茶レベル2から、早急に知識と経験値を仕入れ、紅茶賢者にレベルアップする必要があった。

まず初心者向けの書籍と、紅茶をテーマに描かれた漫画本を購入した。

そこで初めて、紅茶と緑茶は同じ植物であること、世界的な有名店の屋号、それぞれの葉種の特徴、製造方法などを知った。

紅茶といえばイギリスのイメージだったが、産地としてはスリランカが有名なことも。

そして冬以外のシーズンに収穫できる紅茶には、「フラッシュ」という概念があり、春摘みのファーストフラッシュは若葉なので香りがいいとされ、夏詰みのセカンドフラッシュが最も価値が高い。

特にダージリンのセカンドフラッシュはブランド茶葉で、秋摘みまでいくと、渋めで玄人好みの味になる。

私は決めた。
「秋摘みのダージリンを愛する女」になろう、と。

紅茶の王様であるダージリンの、ちょっと旬をすぎた頃に美学を感じるなんて、めちゃくちゃイケてる…と我ながら震えてしまう。

休日になると、「紅茶専門店 東京 オシャレ」の検索で1番に表示されているお店にいき、実際に、秋摘みと夏摘みのダージリンを飲んでみた。

ホッとした。ちゃんと「ちがい」がわかったのだ。

よしよし、同じ茶葉でもこんなに違うなら、種類の違うものは楽勝だ、と息巻いて、順番に5種類くらいの本格紅茶を飲み比べた。

男性とのつかみは身近な話題がいいと思い、「午後の紅茶に使われている茶葉もありますか?」と聞いたときにチラついた、タキシードを着た店員さんの、ちょっとさげすんだ目も気にならない。

大丈夫ですよ、次にきたときには、私が「このディンブラっていう茶葉が、午後ティーのストレートに使われてるよ☆」と連れの男性に言いますので!と、心の中で宣言する。

この日の会計は7500円くらい支払ったが、結婚への投資と思えば高くない。

本だけではわからない、リアルな色や風味だけでなく、葉をこす器具の正しい扱い方、甘みと香りがつよいお菓子と一緒に飲むと、味がわからなくなるので、紅茶のお供にはスコーンが最適なこと、などを身をもって学んだのだ。

こうして「趣味=紅茶」の婚活女子は完成した

Shall we  お紅茶?

「趣味は紅茶です効果」は、驚くほどに、高かった。

今まで2~3人来てくれるかな、程度だったフリータイムに、5人以上の列ができるようになった。

男性たちは想い想いに、「午後ティーと紅茶花伝のちがいってなんですか?」であるとか、「今まで飲んだ紅茶で一番おいしかったのはなんですか?」と話題をよこす。

私も「バカが!ディンブラとセイロンはまったくちげーわ!」などと毒づくわけもなく、そうなんですよー、お店で飲むと確かにちがう感じがしてーと、控え目に話を合わせる。

すると、去り際には「今後一緒に紅茶のおいしいお店にいきましょうね」というお誘いが入る。

実際に約束をした男性の多くは、待ち合わ時、紅茶販売店で購入した、店員さんオススメの茶葉をプレゼント包装にして持っていた。

「紅茶」は婚活パーティーの印象に残るだけでなく、その後のプレゼントにも手ごろで、なおかつデートの口実にもしやすい、まさに完璧な趣味だった。

紅茶専門店は1杯700~1500円程度であるから、スターバックスよりは高いが、ディズニーランドや高級フレンチに連れて行くより、ずっと安く済む。

そして何より、「紅茶専門店で初デートをする俺」に男性自身が満足していたように思う。

婚活において、はじめてのデートスポットの提案は、男性のセンスと懐具合が試される、なかなか悩ましい選択だ。

しかし、紅茶が好きな女性が相手なら、そこを考えなくていいし、非日常でオシャレな場でもあるので、お互いに幸福度の高い滑り出しとなれる。

結局、紅茶には食いつかなかった男性と結婚したのだが、あの時期、デートとプレゼントで本格紅茶漬けの日々を送っていた私は、本当に紅茶が好きになり、ずいぶん詳しくもなった。

婚活終了からもう4年。
娘も2歳半近くなり、ずいぶん落ち着いてきたことだし、しまったままの茶器を出して、また紅茶を入れてみようか。

アールグレイすら知らないであろう夫にウンチクを垂れて、娘には、茶葉入りのクッキーなんてどうだろう。

あの頃とはまたちがった「幸福な時間」が、飴色の水面に映りこむ気がしている。

先に先に送ってしまいがちだが、急いだほうがよさそうだ。

オータムナルのダージリンが、あの、旬をすぎても尚、誇りを失わない王様の深みが、売り切れてしまう、その前に。


記:瀧波 和賀

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