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石川善樹さん-Wellbeingいよいよ企業投資・教育方針などに組み込まれる〜幕府政府の次は何か?《中編》-190号-

(2023年7月10日サロン向け対談動画を記事化しております。)

前編はこちらをご覧ください。

世代を超えた影響力

尾原和啓氏(以下、尾原):長期間統治する中で、2世代後まで考えて何かをすると、必然的に長期志向になるから外部不経済をあまり考えなくなる傾向がありますよね。

石川善樹氏(以下、石川):昔の法律にも、「自分で土地を開墾したら孫の代まで所有していいよ」という「三世一身法」がありました。人間には限界があるので、これが4世代とかになるとわからなくなるんです。

尾原:そうですね。でも、最近は寿命が延びているので3世代前までご存命で、おじいちゃんやおばあちゃんは物語として憧れられる存在ですよね。僕もおじいちゃんやおばあちゃんへの憧れから、魂を引き継いでいる部分がありますからね。

石川:確かに。影響を受けるという点では父親や母親もそうですが、おじいちゃんやおばあちゃんからの影響を素直に受けることが多いですね。それに比べて父親や母親は、意外とアンチテーゼ的な部分が多いんじゃないかなと思います。

尾原:そうですよね。やはりエディプス・コンプレックスのようなところもありますからね。

石川:はい。最近は、「時間軸を入れた時に世の中はどう見えるんだろうか」ということに興味があって、いろいろ見ていますかね。

尾原:たまたま僕らの世代は、おじいちゃん世代が昭和を作ってくれました。勃興期におじいちゃんやおばあちゃんがいたから、特に影響が強くなってしまうのかもしれません。

地方分権と政策の焼き直し

尾原:企業や政府も、おじいちゃん世代の影響が色濃く出ています。例えば大平元首相の「デジタル田園都市構想」を、今年の骨太の方針に載せていますからね。

石川:そうなんですよね。あるいは、竹下元首相のふるさと創生事業が「地方創生」として復活したり。

尾原:そうそう、またね。

石川:焼き直しが多いのは、地方分権がずっとできていなくて、地方の多様性を花開かせたいというのがあるんですよ。

尾原:そうですね。

石川:田中角栄氏の『日本列島改造論』も、「道路を作ったらみんな地方に行くんじゃないか」と思ったら、逆に都心に来ちゃった、みたいな(笑)。その結果、「デジタル田園都市」とか「地方創生」とか、政策の焼き直しが多く見られるんですよね。

尾原:地方の方々が、もう1回乗りやすい物語なんでしょうね。だから今年の骨太の方針には、「デジタル国土」という不思議な言葉が復活しているんですよ。「デジタルなのに、国土って何?」という。物語として「国土」という言葉がわかりやすいんだろうなと思いながら、今年の予算計画などを読んでいますけどね。

株主還元と国富流出のリスク

尾原:最近、善樹さんは企業もサポートされていますが、アイデンティティ型に戻ったり先々代に戻ったりと、同じような感じですか?

石川:そうですね......。「時代の要請に対応しなければならない」というのはあると思います。

尾原:はい。

石川:上場企業などで、人的資本経営とか健康経営とか、いろいろ言われているじゃないですか。上場企業は、せっかくがんばって付加価値を生み出しても、この30年間を見ると分配のバランスが偏っていて。株主に偏った配当が行われている状況があります。

尾原:そうですね、はい。

石川:東証を含めた日本取引所グループがありますよね。

尾原:はい。

石川:日本取引所グループも上場しているという、謎の状況があるんです。

尾原:はい(笑)。

石川:データを見るとおもしろくて。上場って、理論的には資金調達のためにするじゃないですか。

尾原:そうですね。理屈の上では、次に何かをするための資金調達として上場するわけですからね。

石川:「システムを作るのにお金がかかる」とかいろいろあるんですけど、東証って、上場してからの資金調達額が16億円なんです。

尾原:はい?

石川:株主への配当とか自社株買いとかで、上場してから三千数百億円も株主に配当しているんですよ。

尾原:はぁ~。

石川:傍から見たら、エクイティファイナンスのためではなく、株主還元するために上場する会社がほとんどなんです。上場企業全体で見ても、株主に対する還元と投資家から企業への資金流入額を見ると、とんでもない開きがあるんですね。

尾原:なるほどね~。確かに、言われてみればそうだよな。

石川:日本のような成熟経済になると、投資に対する高いリターンが期待できないので、企業がため込んでいるものを引き出したほうがお得というか……。

尾原:「内部留保を分配しろ」という圧力が高まりますからね。

石川:その株主に対する還元ですが、「株主は誰ですか?」と言った時に、約4割が外国人なんです。つまり、日本の上場企業ががんばって生み出した国富の4割が、そのまま外国に流れているということです。

尾原:そうですね。

石川:そのことに危機感を抱いたのが、岸田首相です。

尾原:はい、はい。

石川:だから、「新しい資本主義」を提唱されているわけですね。もちろん成長を目指すんだけど、成長と分配の好循環は、株主が従業員や日本国民だったら何の問題もないと思うんです。

だけど、そのまま外国に流れてしまっているということは、今の日本の経済状況が外国にハックされて、壊れたATMのようになっていませんか? ということなんですよ。

尾原:そうですよね。でも、壊れたATMになっているというのは、「株価を値上げによる投資収益でしか見ていない」みたいなところもあると思います。配当収益のようなものをあまり見ていないから、他の国と比べると現金で保有している比率が高くて、利回りが0.2〜0.3パーセントなんです。

一方、アメリカなどではインフレがなかった時でも3〜4パーセントです。言い方が悪いですが、日本人は無知でい続けているところをハックされたということですよね。

石川:そういう日本の経済、社会状況を踏まえていろいろ仕掛けてくる人たちに対して、どう立ち回っていくのがいいのかですね。

尾原:そうですね。

石川:対投資家でいうと、企業価値を作っていく時に、「どこから考え始めるのか」という原点です。そこまで一緒に戻って考え始めることは、相変わらずよくやっていますね。

尾原:そこは株主含めて、仲間をどう定義し直すかですよね。もともと株主というのは、投資を分散してリスクを軽減するためのものじゃないですか。

石川:そうですね。リスクとリターンだけで物事を考えればいい世界から、最近はインパクトを考慮しないと説明責任を果たせなくなってきています。

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