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レバナスはどんな時に有利になるのか!?(数学的観点からの考察)

最近、特に日本でレバナス(レバレッジを掛けたNASDAQ100に連動した商品)が流行っています。

2021/6/30に金融庁からもレバレッジ商品に対する注意喚起されました。
(参考)レバレッジ型・インバース型 ETF 等への投資にあたってご注意ください
https://www.fsa.go.jp/user/20210630_levETF2.pdf

金融庁が注意喚起するぐらい、レバレッジがかかった商品の特性を知らずに人気になっているということである。
まずは特徴を説明する。
▼特徴
1日の変動率にレバレッジがかかっている(トータルの変動率ではない)

▼どんな動きになるのか?

通常ナス: +5% → -5% → +5% → -5%
      ↓ 1日の変動率が2倍
レバナス:+10% → -10% → +10% → -10%

となる。すると、初期からの総変動率は、

通常ナス:(1+0.05)×(1-0.05)×(1+0.05)×(1-0.05)=0.995  ⇒ -0.5%
レバナス:(1+0.10)×(1-0.10)×(1+0.10)×(1-0.10)=0.980  ⇒ -2.0%

上記の例の場合は、通常ナス>レバナスとなることがわかるだろう。
レバレッジをかけている方が儲けが大きいとは限らない!のである。

なら、レバレッジ商品の購入の観点は何なのだろうか?
それを確認していく。

▼投資判断の観点は?

レバナスに投資判断する場合
『ある期間の上昇幅』に目を向けてはいけない!
(例)
×NASDAQはこれまで平均して右肩上がりだから、レバかけた方が得だ!

ならどこに目を向けて投資判断をすべきなのか?
それはある期間内の変動幅の大きさである。

(参考)上記の根拠を知りたい方は下記記事を参照
『レバナスと変動幅の関係性を深堀りしてみた(数学的観点からの考察)』

▼シミュレーションしてみる

【前提条件】
・まずは2日間のみで計算(その後、期間を拡大して適用)
・2日の変動幅を1日目-A[%]、2日目+B[%]とする(A>0、B>0)
・変動はー+ー+交互で発生するとする。
・レバは2倍で計算する

  すると2日後のトータル変動率は下記で計算できる

  通常ナス:

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              ・・・・・・・・・①

  レバナス:

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              ・・・・・・・・・②

レバナス>通常ナスとなる条件は、②-①>0より

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A>0,B>0なので、AB>0より

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              ・・・・・・・・・③

Aは下落率、Bは上昇率であることから、
この右辺の定数項+3がレバの上昇率を妨げる要因であることがわかる。
つまり、レバナスは下げに弱いことがわかる!

例)A=20[%]の下落の場合

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よって、A=20%下落率に対して、B=50%以上の上昇率がないと
レバナスは通常ナスに勝てない!ということがわかる!

▼A、Bの比率を考えた場合の損益分岐点は?
B=nAとおくと③式は、

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              ・・・・・・・・・・・④

1)A<100/3(33.33%以下の下落率)の場合
  ※現実的には全ての日において当てはまると思われる

下記でグラフを描く
縦軸:n[倍]  ※B/Aの比率
横軸:A[%]  ※下落率

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(例1)A=16.66%の下落率の場合、2.00倍の33.33%の上昇率が必要
(例2)A=  3.00%の下落率の場合、1.10倍の  3.30%の上昇率が必要
(例3)A=  2.00%の下落率の場合、1.06倍の  2.12%の上昇率が必要
(例4)A=  1.00%の下落率の場合、1.03倍の  1.03%の上昇率が必要

グラフから大きな下落ほど、大きな上昇が必要であることがわかる。

▼実際のNASDAQ100の1日の変動率はどうか?
コロナ時に-6%はあるものの、大きくても3~4%程度かと思われる。

4/1からの現時点までの価格は、
2021/04/01:13268.88$
2021/09/30:14689.62$
より1.107倍。つまり6ヶ月間で騰落率は+10.7%である。

単純計算、半年で平日は365×5/7×1/2=130日
よって、2日間での平均上昇率は
10.7÷130×2=0.1646[%]  ・・・・・・⑤

仮に3.00%の下落率に対して、2日で1.10倍の 3.30%の上昇率が必要
(1-3/100)×(1+3.3/100)=1.002 ※2日で0.2%の上昇が必要。・・・・・⑥

⑤⑥より、⑥>⑤より、
たった半年の運用ですら通常ナスの方が得であったことがわかる。

【結論】
・レバナスにおいて、右肩上がりは必要条件であり十分条件ではない
・レバナスは変動幅が小さいことが重要
長期運用(半年ですら)では、通常レバの方が得である
・レバナスは連続して上昇するときに短期投資なら可
※仮にやるならば、ナスダックが短期で上がる可能性が高い、長期国債利回りが低い量的緩和政策がなされている金融相場時ならありだろうが、現時点では、逆行しており、レバナスとしてはよい環境ではないと思われる。 

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