転職回数が多くて書類が通らない
何度応募しても書類選考で落とされる。そういう相談を何度も受けてきました。応募書類は求職者がどんな人物かを語るものです。しかし採用者にとって求職者はそもそも赤の他人。その相手に自分を知ってもらうわけですから書き方には工夫が必要です。
私は派遣会社で面接官をしておりましたので、実にいろいろな職務経歴書に目を通してきました。日本は終身雇用という習慣があります。一つの企業を勤め上げ、定年を迎えた後に派遣会社に応募してきた例も随分目にしました。
その履歴書はきれいなものです。「〇〇年〇〇月入社。」「〇〇年〇〇月定年退職。」わずか2行。シンプルそのもの。けれどその少ない行数からは「勤め上げた」という達成感がひしひしと伝わってきます。思わず「お疲れ様でした」と言いたくなります。
一方、転職が多く紙面をぎっしりと文字が埋め尽くしている履歴書や経歴書があります。そしてこちらのパターンの方が圧倒的に多いのです。
転職回数が多いことは企業では歓迎されないという現実があります。採用してもすぐに辞められてしまうだろうと考えるからです。採用担当者は不安なのです。その不安を除くためにも回数の多さはネガティブ要素ではないと説明することが必要です。口頭ではなく書面で伝えなくてはなりません。
一番問題なのは、回数が多いうえに業種がバラバラだという場合です。営業職からスタートして事務職に転職し、販売の仕事に就いた人が応募しているのがIT企業。こうしたパターンも実に多く見かけました。
これが20代なら自分自身を模索中だと想像できますが30代なら人間的な問題点として捉えられ、40代なら社会への不適応さすら疑われかねません。
こうした場合、書類をどう書いたら良いのでしょうか。ジョブ・カードの職務経歴シートを見てみましょう。「職務の内容」の隣に「職務の中で学んだこと、得られた知識・技能」を書く欄があります。
営業の仕事で何を学びどう成長したのか。次の事務職で得た技能は何なのか。続く販売の仕事では得た価値観は何か。今IT職に就こうとしている理由は何か。そうしたことを書くための欄です。外的キャリアに加えて内的キャリアも書くというわけです。
採用者は、あなたがかつて所属した会社の一つ一つに興味があるわけではありません。他の会社を経てきたあなたが、新しい会社でこれから何をしてくれるかを知りたいのです。職務経歴書はあなたの成長歴です。あなたが、どういう道を辿って成長してきたかのストーリーとして読みます。
あなたは今、希望するIT企業の門の前に立っています。そこに至るまでには様々な紆余曲折がありました。その過程が流れるようなストーリーとして成立しているならば、回数が多くても一貫性が無くても納得できるものになります。
在籍した会社名を羅列したものか、物語の要素として会社名が語られるのか。書き方次第であなたの人間像はすっかり変わってしまいます。
ジョブ・カードの様式をそのまま提出する必要はありません。ジョブ・カードはあなたの内面にあるものを文字化するためのツールです。そこで内容の文字化ができればそれを土台にして好きな経歴書の形に編集していけば良いのです。見せ方を工夫するというのは読み手を思いやるということですのでとても好感を持って迎えられます。
転職回数が多いと悩んでいる方、一度自分の経歴書を成長歴という視点で見直してみませんか。そこに成長を感じますか。感じたら、それを他人にも伝わるようにキャリアの棚卸をしてストーリーとして組み立ててみてください。きっとあなたの人間像が鮮やかに伝わるものになると思います。