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もっと生産性を上げるために社内で健全な対立構造を作りたいと思った話

私が取締役をさせていただいている会社は、“いいやつ”が多くて、あまり会議において、意見の対立(コンフリクト)が生じない会社な気がします。
現場への権限委譲もできている(と思います)ので、トップダウンの会社ではないと思いますが、比較的上位レイヤーが発したメッセージに対しては、反対意見がなく、そのまま抵抗なく、すんなり通ることが多くあります。
一見、対立のない会社は良さそうなイメージを持たれるかもしれません。
確かに意思決定がスムーズで雰囲気も良く、いい会社だなと思うことも実際多いのですが、本当にこのままでいいのかという焦りがあります。
あまりにも対立が多いと、会社が殺伐としてしまうので良くはありませんが、ここからさらに上を目指すには、対立があったほうがよいといつも思っています。

その理由は、下記にも詳しく述べますが、上記のような上位レイヤー発信のメッセージに対しては抵抗はないものの、すべてが定着しているかというとそうでもなく、定着しないことも多くあります。
それらはきっと現場からの無言のNoで、その過程に対立を経ていれば、もっと良いかたちで定着するのでは思います。

そもそも現在のようなさまざまな情報が取得でき、情報が氾濫している社会で、かつ、環境変化も早い時代において、経営陣がすべての情報を理解して、すべてに適切な判断ができるなんてことはまずありません。
その時点で、経営陣の提案に対して、現場がNoを突きつけることはあってしかるべきです。

あと、会議において、対立がないなら、書面の共有でいいのではないかとも思います。

なぜ対立構造が必要か?

対立構造が必要な理由としては次の3つがあると思います。
 ・多様な意見を取り入れた上で最適な意思決定ができる
 ・議論を尽くしたことで参加者の腹落ち感が増し、コミットがアップする
 ・非参加者にも決定までのプロセスを詳細に説明できる

発言者が提案する際には、自分のなかでさまざまな情報を取捨選択し、メリット・デメリットなども勘案した上で判断し、提案するというプロセスがあると思います。
ただ、一人しか経由していない時点で、さまざまな目線でそれらを捕らえて意思決定できているわけではありません。
異なる人が同じ事象を見ることで、他の懸念点が出てきたり、もっと良い案が出てきたり、その場で意見を交わすことで新たなアイデアが創造されることがあると思います。
対立構造を作らないということは、そのより良いアイデアが生まれる可能性を放棄していることに他なりません。
発言に対して、前面的にYesではないこともあると思います。
クリティカルな反対がなければそのままスルーするということも意思決定のスピードという面では良いケースもあると思いますが、「8割方Yesだが、2割Noで、懸念点はこういうところ」ということが出てくれば、その2割のリスクをヘッジする方法を考えることができます。

一番怖いのは、発言に対して、Noだが、特にそのことを表明しないケースです。
この場合、発言者はみんな納得したと思っていますが、実際はNoの人がいるわけで、その後、その施策が結局進まなかったり、進んでも目標に対する執着が弱く失敗してしまうことがあるでしょう。
そうならないためにも、その場で反対意見もすべてテーブルに上げて、しっかり議論を尽くす、その上で決まったことには当初の対立者もコミットするという過程が非常に重要になります。

喧々諤々対立構造を経て決まった結論は、その過程でさまざまな意見が交わされるので、参会者が非参加者に説明する際に、決定までのプロセスを踏まえて、説得力を持って話せますし、多様な質問に対しても回答できることができるでしょう。
議論を経ずにそのまま現場に落としてしまった場合、現場メンバーの「なぜ?」に管理監督者は答えられないかもしれません。
「決まったことだから」「社長が言ったことだから」では、現場の納得感を得られません。

対立構造を作るために必要なこと

とは言うものの、いきなり対立構造を作ることは、会社やチームに殺伐とした雰囲気を作り出し、マイナス効果となることが多々あると思うので、前提として次の4つが必要になると思います。

・信頼による心理的安全性
・対立を賞賛する文化
・威圧的にならないようにする
・ノーサイドの意識

人間は自身の「意見」を否定されると、自分「自身」が否定されたと思いがちです。
そうならないためには、発言に対して心理的安全性が確保されている必要があり、そのための土壌として、お互いの信頼関係が必要です。
信頼があってこそ初めて対立構造を作ることが会社やチームの生産性向上につながると思います。

また、会社として対立を賞賛する文化を作り、対立に対して「いいね!」と思う・言う雰囲気が必要です。
そうすることで、対立による緊張感を全員が不安に思うことがなくなります。

特に、レイヤーが上の人が下の人から反対されると、自己のポジションを悪用し、威圧的になることが多いと思います。
このあたりは個人のキャラクターもありますが、気をつけなければなりません。

会議において、対立構造になっても、意思決定者による意思決定がなされたしっかりコミットし、ノーサイドの意識をもって、会議が終われば、対立したことを忘れ、共通の目的を持つ仲間として協働する意識が必要です。

擬似的な対立構造を作る

まずは、積極的な「~~には反対です。なぜなら、~~だからです。」といった発言を求めるような明確な対立構造でなくとも、擬似的な対立構造を作る術もあると思います。

・発言者が「~~だと思います。ただ、~~という懸念点もあります。○○さんは、どう思いますか」というような質問をする
・意見ではなく、感情を聞く
・Yes or No ではなく、懸念点を聞く

こういった方法で、マイルドなかたちで、擬似対立構造を作れると思います。
結構、「論理的に考えた上での意見としてはYesだが、感情としてはNo」という事前の共有は、その後のプロジェクト進行においては非常に重要なことだと思います。

最後に…

自分自身は、比較的周りの状況による影響を受けないタイプで、思ったことは言う、反対するときは反対するというようなタイプなので、自分自身は積極的に対立構造を作っていると思っています。
現在の経営陣における立ち位置においても、会議などでの代表やその他の管理監督者に対しての態度でもそうだと思います。
この機会に改めて、自分自身が感覚的に良いだろうと思ってしてきたこのような行動の効果を言語化しようと思い、このテーマで書きました。

また、あわせて、これまでのような対立構造を作ることは適切か、そして、もっと場を働かせるようなアプローチができないかということも考えました。
特に、私は、上記のようなタイプだからこそ、周りの状況による影響を受けやすいタイプの人に対する配慮が少なく、威圧的に感じられたり、「ここは折れておこう」というあえて対立しないという判断を取らせてしまっているケースも多いのだろうなと思います。
自身のタイプに加えて、上位者としての“パワー”が存在しているからこそ、謙虚にしっかりと各メンバーと信頼関係を築いた上で、対立構造を作らないといけないなと反省している次第です。

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