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ずっと避けてきたBtoBtoCビジネスの難しさについて考えてみようと思った件

(最終更新日:2020/06/23)

今の会社ではずっとWEBでのBtoBtoCのリボンモデルのビジネスをやってきました。
比較サイトと呼ばれたりもします。
その中で日々悩んだり、ずっと答えが出せていないことについて考えつつ、まとめていきたいと思います。
同じような悩みをもつ方(特にサービスの責任者)のご参考になれば、幸いです。

BtoBtoCビジネスモデルのいいところ

私は、BtoBtoCのビジネスモデルは、インターネットが生み出した成功パターンの1つだと思います。

BtoBtoCのビジネスのいいところは、
・B側のニーズが「集客」で明確。そのため、マーケティングコストが見合えば、事業者の獲得コストは高くない。=B側の集客のハードルが低い
・B側でマネタイズできるので、C側が無料で使える=C側の集客のハードルが低い
・マッチング機能の提供なので、有形商材のECと比べると、在庫管理・商品開発・決済・物流などのコストがかからない
あたりだと思います。

特に、B側もC側も集客のハードルが低いことは、BtoBtoCビジネスの"イケている"ところです。

BtoBtoCに比べると、CtoCサービスの集客は難しい

同じマッチングのサービスでも、CtoCのビジネスの集客は難しいです。
それは、2つのCのニーズを"いい"感じに揃えないといけないどちらかのCを先に集めるというのが難しい、という点です。

例えば、出会い系サービス。
男性も女性も集めなければならないわけですが、先に男性だけを集めるという戦略ができるかというと、せっかく会員になってもそのサービス内に女性がいないと、マッチングというニーズが満たされないのでできません。
会員になった時点で、ある程度女性会員もいないと、せっかく会員になった男性も離脱してしまいます。
そのため、先に男性だけを集めるという戦略は現実的ではなく、最初から両方のCを集めるべく、最初から大きく広告を投下しなければなりません。
また、片方だけの集客がすごくうまくいっても、もう片方のCの集客もうまくいかないとサービスとしては成功しません。

CtoCのサービスの集客戦略は、かなり難易度が高いと思います。
鶏が先か、卵が先か、的な議論に毎回なりそうな気がします。
(このあたりは、経済学で言われるネットワーク外部性に近い概念だなと思うのですが、あまり詳細に調べたことはありません。)

さらに、この両方の集客がうまくいっても、マネタイズもうまくやらなければなりません。
いろんなCtoCのサービスを思い浮かべていただければいいと思いますが、マネタイズは多様で、工夫されています。
出会い系だと(あまり詳しくないですが)メールのやりとりや相手情報を見たりするのに課金するとか、月額のサービスとか(もあるのかな、たぶん)。
あと、女性側は無料にしているものもあると思います。
女性無料は集客的にいいのですが、女性側からは売上が上がらないということになりますね。

つまり、CtoCのビジネスは、集客がすごくたいへんでお金がかかる、かつ、マネタイズもしっかり知恵を絞らないといけない、ということで、非常に難しいビジネスだと思います。

ちなみに、個人的に思うCtoCビジネスの成功パターンの1つは、1人のユーザーが両方のCになる可能性があるサービスだと思っています。
そうすれば、集客コストを抑えることができます。
例えば、メルカリだと、売る人が時に買ったりする。
ココナラだと、スキルを売る人が今度はスキルを買ったりする。

そして、マネタイズは取引額から手数料をいただく形にして、事業KPIは、取引総額(取引回数)の最大化にする、というのが1つの成功パターンかなと思います。

C側が"無料"で使えるという魅力

BtoBtoCのビジネスは、インターネットの普及を背景としたものです。
インターネット普及前も、マッチングのサービスはありましたが、例えば、不動産業だと買主・売主の両方から手数料を取ります。
なんらかのサービスを受けているのだから、その対価を当然もらうというのはシンプルな発想です。
そして、仲介者は、マッチングさせるための両方の情報を持っており、その情報は貴重なもので、お金を払う価値のあるものでした。

それがインターネットの普及によって、これまでは容易に手に入らなかった情報が簡単に手に入るようになり、自分自身でその情報を元にサービスを選択することができるようになりました。
情報の透明化によって、仲介という情報の非対称性の元で、両方をつなぐというビジネスの意義は薄れていきました。

そんな中で生まれたのが、BtoBtoCでしかも、C側が無料というビジネスモデルだと思います。

BtoBtoCビジネスにおける顧客とは?

BtoBtoCの事業でややこしいなと思うことは『顧客』という表現がチームメンバーによってB(事業者)であったり、C(ユーザー)であったりすることです。

ちなみに、私のなかでは、顧客は「お金を支払ってくれる人=自分の給与を間接的に支払ってくれている人」という明確な定義があるので、BtoBtoCでC側が無料で使えるサービスなら、顧客はB(事業者)のみです。
有料のCがいるなら両方ですね。

BtoBtoCのリボンモデルのサービスを立ち上げる場合、事業規模がまだ小さいうちは、細かな情報も共有できるので、上記のような認識の相違があっても都度潰したり、共通目的を持つチームの人間関係でなんとなく乗り越えたりできます。

しかし、事業規模が大きくなって分業化が進んでくると、B側はを顧客と考えるメンバーと、C側を顧客と考えるメンバーの間での認識の相違による影響が大きくなってきます。
事業者(B)に向かっている営業の人はユーザー(C)に対する認識は薄くなりますし、ユーザー(C)に向かっているメディア運営や集客の担当者は事業者(B)に対する認識は薄くなります。

そうなると、それぞれの担当者から出てくる事業上の課題やそれに対する施策は、それぞれの考える『顧客』に対するものとなり、事業全体を見たときに、それが果たして正しい施策なのか(内容だけでなく優先順位も含めて)を各メンバーが腹落ち感を持って判断することは難しくなります。
もちろん、そうならないように事業責任者がいるわけですが。

自社の利益をどう考えるべきか?

また、BtoBtoCの真ん中のB、つまり自社の方針も重要です。
BとCをつなげるという仲介というモデルなので、自社がどの程度のフィーを「抜く」のかは難しい問題です。
フィーは顧客にとっては確実なマイナスで、自社の利益と顧客の金銭的マイナスはトレードオフの関係です。
適切な水準でフィーをもらわないと事業者との中長期的な取り組みに響いてくることでしょう。

また、あまりに低すぎる水準も営利事業としてやる以上は、自社の成長という観点からも望ましくないでしょう。

ただ、何より、高いフィーをもらうなら、それに見合った質の高いサービスを提供しているという事実が重要とは思いますけどね。

BtoBtoCモデルではどのように事業方針を決めるべきか?

今までは、事業責任者として、個人的な考えから、B(事業者)のことを第一に考えてきたのですが、事業規模が拡大すると、それでは「もっとも大きな成果」を上げることは難しいなと考えるに至りました。

最近、BtoBtoCの事業において、中長期のビジョンやミッションを決める際には、常に次の3つの面から考えてみてはどうかと思っています。

①B(事業者)
 事業者の課題は何か?
 どんな課題を解決するために我々はサービスを提供するのか?
 事業者に提供する価値は何か?
②B(自社)
 事業者からどのくらいの報酬をいただくのが適切か?
 質の高いサービスとは何か?
 どうすれば売上・利益・利益率を高めることができるか?
③C(ユーザー)
 ユーザーの課題は何か?
 どんな課題を解決するために我々はサービスを提供するのか?
 ユーザーに提供する価値は何か?

常にこの3つの軸を関わるメンバー全員が意識して、そして、この3つの軸のバランスをチームで合意していくことが、事業の健全な成長に必要ではないかと思っています。

そのため、事業・サービスとして、対外的に公表するミッションがたとえ1つであっても、チーム内では、この3つの軸で持っておくべきだと思います。

(さらに)より深くBtoBtoCビジネスを考えてみよう

ビジネスにおいて、どんな価値を顧客に提供しているかは非常に重要です。

私は、リボンモデルのBtoBtoCビジネスにおいて提供している価値は、
B側に対しては、集客チャネルの提供
C側に対しては、選択の負担の軽減
だと思っています。

B側に対する価値

事業者にとって、自社のブランドが強くて、自社のブランドだけで集客ができるなら、わざわざ比較サイトに広告費を投下する必要はないと思います。

ただ、
・業界において商品・サービスが多様でユーザー側に選択ニーズが強い
・業界においてブランドが確立しきっていない、競合のブランドも強い

こういったケースだと、ユーザー側には、いくつかの選択肢を比べた後に意思決定をしたいというニーズがあるので、比較サイトからの集客も一定数が見込めます。
また、もし、自分たちがそこに出稿しないという選択をすると、他社にその分のシェアを奪われることになってしまうので、広告費が見合う範囲で、出稿するという選択を取るのが合理的です。

なので、事業者側からすると、比較サイトは、業界で圧倒的なブランドを持ち、集客に困っていない限りは、有望な集客チャネルとして、必要とされるものです。

ただし、比較サイト上には、同業界の各社のサービスと一緒に掲載されるという性質から、獲得を増やそうとすると、メディアへの支払い条件(単価)を上げて露出を増やすという方法が効果的です。
そのため、競合に獲得を奪われないようにしようと、事業者同士で単価の上げあいになってしまうという構造はあります。

ただ、支払い条件を上げる以外にも、
・自社のブランド価値を高めたり、商品としての差別化を図ることで、比較サイト内でもユーザーに選ばれるようになる
・メディアから情報をもらった後のKPI(CVR、成約率、LTV)を改善することで許容CPAを上げる
といった手はあります。

C側に対する価値

C側に対して提供する価値は、"比較"ではなく、選択の手助け(負担の軽減)だと私は思っています。

確かに、きっちりしたデータベースを準備して、サイト上で横断的にいろいろな商品・サービスを比較できる状態にするというのは重要な機能です。
ただ、ユーザーが本当に求めているものは、比較ではなく、"決定"だと思います。
納得する決定をするための過程として、比較というものが存在しているすぎないのです。

「ドリルを買いにきた人が欲しいのはドリルではなく『穴』である」的な話ですね。
本当は、選択肢を求めているのではなくて、決定を求めている。
ただ、決定をするために、いくつかの選択肢を比較するという行動をしている。
そのため、極端な話、選択できなくても、納得できる意思決定ができるなら、選択肢は必要ない、そう思います。

なので、最近、web広告で単品通販系などに多いですが、記事系LPで、いくつかの商品を並べて比較させなくても申込に至るというのは、その記事コンテンツにおいて、ユーザー側が納得できる意思決定をできている、からだと思います。

テレビを買おうと思ったときに、家電量販店に行ったり、比較サイトで調べたり、詳しい人に聞いたり、決めるまでの過程はさまざまだと思います。
中には、その過程を楽しみたいという人もいるでしょうが、大部分の人は、そこは極力簡単にしたいと思っていると思います。
何を簡単にしたいか、それは決めるまでの過程です。

私は、テレビを買おうと思ったとき、比較サイトやECで比較するのは面倒だなと思ったので、家電に詳しい人に聞いて、その人のおすすめをそのまま買いました。

よく言われますが、現代人は選択することが多いと言われます。
選択の科学』の中にこういう話があります。

会場に足を運んでくれた協力者(筆者注:旧共産圏の人)をもてなすために、コーラ、ダイエット・コーラ、ペプシ、スプライトなどの七種類の一般的な炭酸飲料の中から、好きな飲み物を選んでもらった。
ところが、何人目かにこの取り揃えを見せて、どれを選ぶか待っていたとき、こんなことを言われたのだ。
「いや、別にどれでも構わないですよ。全部ソーダじゃないですか。どっちにしろ一種類なんだから」。

これは個人的に非常に面白い話だなと思いました。

今の時代って、選択肢が多すぎると思いませんか?
コンビニで水を買うにも何種類もあり、お茶を買うにも何種類もある。
さらに言うと、"飲み物"を選ぶとなると目の前の冷蔵庫の中に何十種類もある。
もしかしたら、百種類を超えているかもしれない。
そんな時代に私たちは生きています。

飲み物くらいならいいですが、自分自身が全然興味がないものを選ばざるを得ないときに、すごく面倒だったり、選択肢が多すぎるので今度でいいやと後回しにした経験はありませんか?

極端な話、インターネットの普及で誰でも手軽に情報が手に入るので現代では、比較サイトを使わず、各事業者やサービスのサイト、それを使った人の感想が書いてあるページを回って、いろんな情報を入手して、そこから自分で比較・検討して決めることも不可能ではありません。
ただ、それが面倒、手間なので、1サイト内で比較できる比較サイトを利用する人が多いと思います。
そこでは、いろいろなサービスをスペックで比較したり、ソートしたり、希望条件をフィルターで絞って選択肢を狭めたりできます。
これによって、かなりの手間、苦痛を軽減できています。

でも、結局、条件を絞ったとしても、比較サイトの掲載されている複数の選択肢の中から選ばなければなりません。

ユーザーの選択→決定への一連の動きを詳細にブレイクダウンしていって、自分たちのサービスがそれらのどの部分を担っているか?という観点でサービスを見ていくと面白い姿が見えてくると思います。

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