第一話

 目覚ましの騒がしいアラームで無理くり1日の行動をスタートせざるを得ない。
 せめてこれはアラームの音をマックの来店BGMにしたせいなのだろうか、寝室にはポテトのにおいが充満している。(無論思い込みである)
食パンの耳をかじりながら急いで家を出る。
しかし考えてみると食パンをかじりながら家を出るというシーンはよく見るが耳だけかじりながら慌てふためく人間は見たことがない。きっと耳だけだと卑しい感じが漂うからなのだろうか。

しかし僕の人生にはなぜこれほど事件が起きないのだ。有名人すら見たことがない。近くでちょっとした警察沙汰もない。友達が捕まったりもしない。言うならどこまでも真っ直ぐなコースを適度な負荷で後ろで誰かに押されるボブスレーのようなものだ。誰とも競うことなく、目に映る景色はいつまでも遥か遠い曇り空なのだ。

努力をしてないからだろ、と言う声が聞こえる。僕はその言葉に自信を持って否定できない。それが僕の弱さだ。

時間を割くこと、寝る間を惜しむことを努力というなら僕はしていない。できていない。
誰かのために人生を送りたくはない。
道ゆく人に時間を割きたくない。彼らは手段であり、目的にはなり得ない、、

そんなことを考えていたら私はあっという間に職場での午前中の時間は終わっていた。
何もすり減ってはいないのに疲れた。
一体なんのために生きているのかわからない。そうなってくると全ての行動に意味がなくなり、快楽だけを求め始める。
私の中での快楽はなんだろう。
自問自答の中で思わぬ答えがかえってきた。

「面白いことを考える」
「誰も思いつかないことを思いついたとき」

ありきたりで誰しもが理想と思うかもしれないこの2つだ。

世界を自分の思い通りに動かすことはできないが、そんな世界を想像することはできる。(秩序とか三権分立のような難しいことは抜きにして)。

だから私はたった一人、自分のための世界を創り上げることに決めた。

この世界は悪くない。そう思えた気がする。



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