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道端に生える万能薬|ハーブ界の女王と呼ばれる雑草


1.はじめに



色には不思議な力があります。
赤色には活力があり、やる気や闘争心が芽生えますし、青色には心を静め落ち着かせる働きがあります。
そして、緑の色は大自然の色で心が癒されます。
大地に根付く草木は緑の葉を広げ、大きく成長し癒しを与えてくれます。
植物には強いパワーが宿り、その力で病気やケガを癒してくれることもあります。
現代の医療は西洋医学が主流となっていますが、明治時代より以前にさかのぼりますと、漢方や鍼灸しんきゅうをメインとした約2000年の歴史を持つ東洋医学が主流でした。
植物には薬に劣らない力が秘められ、現代の医療にも受け継がれています。
漢方や鍼灸の中でも、雑草として扱われている「ヨモギ」(蓬)があります。

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ヨモギは「ハーブの女王」と呼ばれるほどの万能薬ともいわれています。
なぜ、雑草扱いのヨモギがハーブの女王や万能薬とよばれるのでしょうか?
今回はハーブ界の女王、ヨモギに秘められたパワーについてご紹介します。

2.ヨモギの生態


さて、ヨモギはどのような生態なのか、簡単にご紹介しますね。
ヨモギはキク科の多年草で、北海道以外の日本全国に分布しています。
(多年草…季節が変わっても枯れることなく、毎年花や実をつける植物)

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春先には新芽を付け、草餅(ヨモギ餅)や天ぷら、おひたしとして食べられています。
秋には草丈が50~120㎝と大きく育ち小さな花をたくさん付けます。

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ヨモギの印象といいますと、道端や庭先をはじめ、どのような場所でも比較的によく見かけますよね。
根をしっかりと張りめぐらせ繁殖力も強いために、厄介な雑草として除草剤を散布し駆除をされる方も多いようです。

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ヨモギはキク科ですので、キク科のアレルギーをお持ちの方は取扱いに注意が必要です。
また、毒草と呼ばれる「トリカブト」と葉っぱの形状が似ているために、採取する時にも注意が必要です。
ヨモギとトリカブトを見分ける方法があります。
トリカブトにはヨモギ特有の匂いがしないので、嗅ぎ分けることで見分けができるようです。

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3.霊草ヨモギ


さて、「万能薬」「ハーブの女王」と呼ばれるヨモギには不思議な霊力があるとされてきました。
現代ではどこにでも生えている雑草、そして草餅のイメージが強く、それほどありがたい霊草といった存在ではないかもしれませんが、万葉集、枕草子といった古い文献の中にはヨモギが登場しています。

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「ほととぎす 鳴く五月さつきの あやめぐさ よもぎかづらきさかみづき 遊びぐれど…」
『万葉集』巻十八4116長歌の一部
【訳】ほととぎすが来て鳴く五月のあやめ草やよもぎを髪飾りにして、酒を飲み、遊んで気分を紛らわそうとするが・・・
これは大伴家持が詠った長歌の一部で、万葉集に記されています。
この歌はショウブとヨモギを髪に飾り、お祝いをする風習があったことを示しています。

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このことからもショウブとヨモギは邪悪なものを祓う力があると信仰されていたことが分かります。
また、清少納言によって書かれた枕草子の一部では

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菖蒲しょうぶよもぎなどのかをりあひたる、いみじうをかし。」とあります。
【原文の一部】 節は五月にしく月はなし。菖蒲・蓬などのかをりあひたる、いみじうをかし。九重の御殿の上をはじめて、いひしらぬ民の住家まで、いかでわがもとにしげく葺かむと葺きわたしたる、なほいとめづらし。いつかは、こと折利にさはしたりし。
この時代(平安時代)から端午の節句にはショウブとヨモギを家の軒に下げて邪気を祓う習慣があったことが記されています。
ヨモギは古くから邪悪なものを祓う霊草として、大切に扱われてきたのです。

4.ヨモギの効能


ヨモギは霊草として、魔除けや厄払いに使われてきました。
そして、霊草としてだけでなく、万能薬としても使われてきました。
葉の部分は日干しにすることでガイヨウとよばれる生薬になります。

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ケガをした時にはガイヨウを患部に当てることによって止血の作用があります。
また、漢方としても使われ、けいれん・痛みを和らげる作用もあります。
食物繊維はほうれん草の約10倍あり、クロロフィルという成分が小腸の絨毛じゅうもうに蓄積したダイオキシン・残留農薬・有害金属(水銀・鉛)を取り除いてくれる働きがあります。

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また、万病のもととなる血液を浄化する作用があります。
血液の汚れが浄化されることによって、コレステロールの低下、高血圧、アトピーの改善にも期待できます。
更に、ヨモギの成分は、健康的な細胞を傷つけることなくガン細胞だけを選択し、死滅させる特別な作用があるという研究結果まで出ています。
また、葉の裏にうっすらと付いている綿毛わたげを集め精製したものを「もぐさ」といい、お灸に使われます。

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お灸は約2000年も前から中国で発明された、歴史のある民間療法です。
もぐさに火をつけ、身体を温めツボを刺激することによって、細胞の活性化、免疫力をアップする他、さまざまな体の不調が改善されるといわれています。

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ヨモギの関する効能を調べてみますと、ここでは紹介しきれない程の効果が記されており、万能薬といわれていることがよくわかります。
(ヨモギ茶・ダイエット・肌荒れ・美容・水虫・ヨモギ蒸し・かゆみ・風邪・咳の緩和・薬酒・化粧品・不妊・生理痛・デトックス・冷え性・リラックス・発汗作用・安眠作用・抗酸化作用・肩こり・貧血・腸内環境・利尿作用・便秘)

5.まとめ


いかがでしたか?道端で生えている雑草に、驚くほどの力が宿っていました。
ヨモギといった植物に限らず、私たちの身の回りには、当たり前のように存在しているものの中に、驚くような影響を与えているものもあるのかもしれません。
先人の知恵は、何らかの形として残され受け継がれています。
現代人はその知恵に、もう少し目を向けてみる必要があるのかもしれません。

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