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『半笑いのポッキーゲーム』② #毎週ショートショートnote

*夜の公園のベンチで



「少し・・・歩こうか?」

「・・・うん。」


同じマンションの別部屋に住むふたりは
マンションに続く公園の手前でタクシーを降りて
並んで歩いた。

先程までの喧騒が嘘のように
都会の狭間の静かな空間だった。

二人は商社で働く同僚だった。

Y美は実家の高級旅館を継ぐ必要があって
女将修行のために退職を選んだ。

T男は長期の海外プロジェクトのリーダーに
選ばれて日本を離れることが決まっていた。

数刻前まで、Y美の退職とT男の送別を祝しての
同僚たちとの喧騒の中にいたのだ。


恋人同士だったふたりに
形だけではない別れが待つことは
言葉には出さないままの
必然の流れだった。


ふたりは公園のベンチに並んで座った。
両手に抱えていた花束を横に置こうとして
Y美が 何かに気付いたようだった。

「あ、これ・・・」

「んっ? どうしたの?」

Y美が花束の中から取り出したのは
《 ポッキー》だった。

「フフッ、これね、U子が持ってきてたの。
私たちにやらせるつもりだったのよ?」

「やらせる・・・ 何を?」

「ポッキーゲーム!
趣味が悪いかもって・・・あきらめたのね?
あ、でも、こんなとこに仕込んでおくんだから
やっぱり悪趣味だったかも?」

「・・・どんな目的で?」

「私たちが・・・別れるか別れないか?・・・だって。」

「・・・!」


「やってみる?・・・せっかくだから。」

T男は半笑いのまま頷いた。


Y美はポッキーの箱から一本だけ取り出して
プリッツの部分を咥えて・・・

チョコの先を
T男の口元に突き出す。

T男はチョコの先を咥える。

至近距離で向かい合ったまま
お互い、眼の合図で食べ始める・・・

僅かの時間に
ふたりだけの思い出が
走馬灯のようにフラッシュバックする・・・


☆☆☆


ふたりの唇が触れ合った瞬間☆

便宜上の必然がその化粧を落とした。


別れること・離れている時間・・・
そのふたつに科せられていた
意味もなき冤罪が解かれて

ただ・・・


ふたりで一緒の

未来だけが見えていた・・・・・・!!


【祝】



*この物語はフィクションであり、実在の人物・出来事・場所
名称・事件等とは一切の関係がありません。


*こちらに参加させていただいております。よろしくお願い致します☆
今回のお題は 『半笑いのポッキーゲーム 』
裏お題が・・・『半タライのウッキーゲーム』でした。

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