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至高の時間(ショートショート)


至高の時間

比較的大きな仕事を終えて、オフを得た。
雑踏を避けて・・・静かな街並みを目的もなく散策し、夕刻。
ひっそりと街外れにある、馴染の小さな映画館に入った。
ここでは今では誰も知らないような古い映画を上演している。

上演前。いつものまばらな客席・・・
スクリーンからはそれほど離れてはいない中段。 
やや右寄りの私が決めた私の指定席に着座する。
オフにおける至高の時間が待っている。

館内の明かりが落ちた頃、私の左後ろの座席に人が座った。
若い女性だ。私の職業勘がすぐに察知する。

ほどなく別の人物が私の真後ろに座った。男だ。
私はイヤな予感を抱えながらも上映を待った。 開始・・・☆

開始早々、男が周りをはばからぬばかりに
ガシャグシャと音を立てながら食い物の用意を始めた。
足の臭いまで合わせて伝わってくる・・・!?

バリッ!・・・バリバリバリッ☆ モシャモシャ、、ゴクゴクッ!!ゲハッ!! グシュシュ・・・  ブシュッ!  ケハハ‥ハァ・・・

ガホゴホン!!! ゲホホホン!!! 

・・ってかあ?!  グァッ!!


私の知る同業の彼が私なら・・・すでにこの男の命は無いだろう。

「や・・・やめてくださいっ、、!」
囁くような小さな声で女性が悲鳴をあげている・・・?

この男・・・となりの女性に何をしている?
何より、、私の至高の時間をどうしてくれる?!!

ついに・・・私は

依頼されたでもない一瞬の仕事を終えた。


どんな方法でかは極秘。
言い忘れていたが・・・私の職業は『殺し屋』

女性は気付きもしないで、やっと映画に集中し始めたようだ。

遅まきながら・・・私も至高の時間を愉しむとしよう。。。

(完)






〇この作品は、娯楽ないみさんの書かれた短編『音』の
オマージュ的なものです。
つい、遊び心で・・書いてしまいました☆

本日2作目。 これで私のショート・・は3本となりました。w

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