『 あの時のヒーロー 』文化祭① #シロクマ文芸部
＊文化祭
文化祭のメインテーマは『 あの時のヒーロー 』だった。
特に定められた宇宙歴がある訳ではないが、とある宇宙歴の狭間で
どこの誰の発案かも謎のままに･･･その会場は、とある銀河系の
とある太陽系の宇宙空間の《特設人工惑星》に用意された。
メインテーマの時代は限定されていて、かつて太陽系・第三惑星として
その記憶を継ぐ者たちには懐かしい催しとなった。
当然、集まる人々もその時代に関わったか、単純に興味を魅かれたか
あるいはオタクと呼ばれる少数の研究者などである。
彼らの大半は肉体を持たない《生命魂》として、各ブースを観覧している。
人気ブースでは、まるで花火に包まれたかのように光の玉が飛び交っている一方で、人気のないブースでは寂しさを湛えたヒーローが静かに
閲覧者を待っていた･･･
メインテーマ『あの時のヒーロー』は、かつて地球と呼ばれた星で
ほんの僅かな一瞬を『スーパーヒーロー』として称えられた存在である。
例えば賑わう【米国ブース】には
『スーパーマン』『スパイダーマン』『バットマン』『アイアンマン』
『ワンダーウーマン』etc･･･
他にも各国のブースで時代を席巻したヒーローたちが
実体となったその姿をブースの中央で見せていた。
【日本ブース】においても他国を圧倒するその数において賑わいを
見せていたが、ヒーローのキャラクターは主に《マンガ》と呼ばれる
媒体からの出演だった。
『黄金バット』『鉄腕アトム』『鉄人28号』『ウルトラマン』
『仮面ライダー』『セーラームーン』『スーパー戦隊』『ドラゴンボール』
『アンパンマン』『北斗の拳』etc･･･ その数はあまりに多い。
もちろん架空とはいえ、《人間》のヒーローたちも無数に出演している。
『明智小五郎』『多羅尾伴内』『月光仮面』『8マン』『筋肉マン』
etc･･･
そこかしこのブースで･･･
人々の《生命魂》は懐かしさに酔いしれ、涙していた。。。！！
会場には無数の出店が立ち並び、、
盛大に打ち上げられた花火が《特設人工惑星》の大イベントを
惜しげもなく飾った。
各ブースが賑わいを見せている中、閲覧者がいないブースも多かった。
淋しさの漂う一角にも･･･稀には誰かが訪れる。
「こんばんは。お邪魔します･･･ここは、、誰もいないんですね？
あ、失礼ですが、あなたのお名前をお聞きしてもよろしいですか？」
「･･････」
ブースの中央に立つ、かつてのヒーローは無言で応えた。
「あ、あの･･･？」
「･･･紋次郎と申しやす。 木枯し紋次郎とも呼ばれておりやした。」
「あっ、そうなんですね。 他のブースとか賑やかですけど、、
ここでお一人は･･･寂しいですね。。」
「あっしには関わりねえことでござんす。」
紛れもなく『あの時のヒーロー』だった紋次郎の決めセリフは
悠久の時を経て尚 ･･･人知れず 健在だった。
【了】
（1147字）
＊このお話はフィクションであり、登場する全ての存在は
架空のものです。失礼しました。
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締切は9/3(日)21:00
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