ていねいな暮らし

晩ごはんにふたりでカップラーメンをすすっていたとき、あなたが「ていねいな暮らしをしよう。」と言った。ちょっとよくわからなかったので無視した。

晩酌にふたりで酒を飲んでいたとき、あなたがまた「ていねいな暮らしをしよう。」と言った。私は次の日の帰りに、スーパーで半額の惣菜ではなく野菜と鶏肉を買って、無印良品で白いプレート皿を2枚買った。あなたは花を買ってきた。花瓶は?と聞くと、忘れた。と言うので床に投げてあった空き缶に白い花を挿した。

19時すぎにふたりで晩ごはんをつくった。あなたが包丁を持っていることが新鮮で、悪くないのかもしれないと思った。あなたの「美味しいね。」と言った顔を私は好きだと思った。ていねいな暮らしに晩酌があるのかは知らなかったけれど、ロング缶を分け合って晩酌をした。つまみのブロンはやめた。意識がはっきりしていて、夜がこんなに長いことに驚いた。あなたは終始幸せそうだった。私も幸せだと思った。ていねいな暮らしをはじめて良かったと思った。

晩ごはんにふたりで出来たてのコロッケを食べていたとき、あなたが「ていねいな暮らしをやめよう。」と言った。私はうん、と頷きコロッケを平らげた。

夜中にふたりでプレート皿を割った。

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