あの子について

「どうしてあんな子と友達なの?」

男は続ける。

「だって、あの子は君と違ってバカみたいに大きな声で笑うし、化粧は濃いしスカートは下着が見えそうなくらいに短い。ピアスもたくさん開けていて、爪はゴデゴテ。周りからはビッチって言われているし、おまけに学生の手になんて届くはずのない高級なブランドの指輪が左手できらきらしている。なんていうのかな、君にはふさわしくない…ような気がするんだ。」

男は続ける。

「だって、君はもっと静かで淡白な人間だよね?化粧っ気もないし短いスカートも履かない。必要以上に人と関わらないし、必要以上に笑わない。君はひとりで静かに本を読んだり音楽を聞いたりして、世間をちょっと見下して、自分だけの世界でていねいに暮らしていくタイプでしょう?…そう、人生のベクトルが正反対だと思うんだ。正直君は同世代の女の子のことを軽蔑しているよね?少なくとも君は他の女の子に自分から話しかけに行ったりしない。でも君はあの子には進んで関わろうとするし、あの子の前ならよく笑うよね。決して大きな声ではないけれど。僕はいつもそれを見るたびにすごく違和感を覚えるんだ。だから君があの子と友達であることがすごく気になる。ねぇ、どうして?」

私は答える。

「あの子が、世界でいちばん、どうしようもないくらい、顔がかわいいから。」

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