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Doors 第22章 〜 運命の人

 運命の人は誰にでもいる.ただし,最初に注意しておかないといけないことが一つだけある.それは,多くの人が思い描く"運命の人"は少し限定的なイメージになっていて,実際はもっと広義な意味を持っているということ.
 結論から言うと,運命の人とは『必ず出会う人』のことである.その出会いがたとえ瞬間的なものであったとしても,その人の人生に必要不可欠な登場人物であれば,その人は立派な運命の人と言えるのである.

 大事なことなので,もう少し具体的に説明する.たとえば,とあるRPGをプレイしているとする.そのゲームには仲間や村の人たち,敵といった登場人物が数多く存在していて,その中には,序盤から最後まで共に戦う仲間,途中でパーティを外れてしまう仲間,町の名前だけを呟く村人,サブイベントで戦うボスなど,ゲーム中におけるそのキャラクターの重要度というのが各自備わっている.大別すると,ゲームを進行する上で絶対に関わらないといけない存在か,関わらなくてもクリアに支障のない存在か.
 そう,運命の人とは,このゲームをプレイする上で絶対に出会わないといけない存在のことを指している.何も一生を共に過ごす必要性は一切ないのだ.村人に話しかけた結果,新たな情報が得られ進むべき道が決まったとき,その村人はゲーム内において運命の人といえる.このことを勘違いしてはいけない.

 2020年12月31日,運命の人の感覚が降りてきた.正直言うと自信はない.というのも,それはかなり直感的で非論理的であるから.おまけにフェイクの存在である可能性もある.そこまでの判断が自分にできるかというと微妙である.だが,その可能性を十分に感じさせる感覚だった.

 その人はアルバイトとして新しくお店に入ってきた子だった.とても綺麗な瞳をしている.目が合った時,心の中を見透かされたような感覚になって,思わずドキッとした.過去に何処かであったような気もした.いや,過去を辿れば絶対に合流できる確信があった.だからか何故かすごく気になった.
 LINEで友達になり,ちょくちょくやり取りをするようになった.好きな音楽の話など他愛もない話がどこか懐かしかった.何でも話せるような,そんな安心感があった.

 そして"Run To You"と出会った.その歌詞を見たときに気づいた.全てを捨てて夢を追ってきた,そう思っていた,思い込んでいたが,実は現実から逃げ続けていただけなんじゃないかって.自分には夢しかないと言ってきたけど,本当はそれを言い訳にして色んなことから逃げ続けていただけなのかなと.そう思い返してみると,全て辻褄が合った.

 

Oh what's the sense of trying hard to find your dreams without someone to share it with
Tell me what does it mean

 
 この歌詞で目が覚めた.確かにこのまま音楽を続けていけば夢は叶うと思う.いや,夢というかもはや目標で,叶えるつもりだ.50歳までに音楽関係の仕事で生計を立てるという夢を.だけど,その通りになったとしてどうなるんだろうか.そんなに頑張ったのに心から抱きしめて喜んでくれる人がいないなんて,さすがに寂しいと思った.そんな時に浮かんだのは輝く瞳だった.

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