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生活に遊び心を
大学時代のこと。
体育会のソフトボール部に所属していた。体育会はサークルとは力の入れ方が違う。
皆、高校時代に「強豪校」と言われるようなチームに所属していて、推薦で引っ張ってもらうメンバーがほとんどなので、特に規制はないけれど、「中学の頃に部活でやってました」くらいの経験者はみなついてくることができずに辞めていってしまう。
私も一応推薦で入った組なので、ある程度本気でソフトボールをしてきていたのだが、うちの大学に決めた理由は「楽しく主体性のあるソフトボールができそう」と感じたからである。
中学もまぁまぁ厳しかったけど、特待生として入った高校は、もう地獄みたいなところだった。
東京の中でも4強と呼ばれる強豪校の練習は体力的にももちろん、監督の厳しさから聖心的にも酷く辛かった。
お盆の1日と大晦日と元旦、一年の中で休みがあるのはこの3日間だけだった。
いつからかソフトボールも楽しくなくなり、完全に「やらされている」気持ちになった。
しかし、私が入学を決めた大学の練習は本当に楽しかった。監督はおじいちゃん先生だったが、技術以外のことに口を出したりしない。
キャプテン・副キャプテンと上級生たちが練習メニューを決め、メンバーが一丸となって楽しそうにプレーしていた。
他の大学との大きな違いは、姿にも現れていた。大学生といえど、体育会でソフトボールをやろうと思ったら、髪染め禁止・ショートカット ・日焼け止めも塗らずに真っ黒になって、泥臭くやらねばならない。
しかし、私の大学は髪もみんな染めているし、ロングヘアの人もパーマをかけている人もいた。休憩中に日焼け止めを塗りつつ、でもチャラチャラしているわけではない。
それはそれ、これはこれ、とケジメを持っている感じもいいなと思った。
ここでなら、やらされつつ嫌いになりそうだったソフトボールを、また楽しくできるかもしれない。
そう思って入学を決めた。
・・・
私たちの大学は、試合の時のアップで「体を動かすゲームをする」というのが定番だった。
どこの大学のチームも掛け声を出しながらランニングをし、軍隊のように決められた運動をしているのに対し、私たちは本気の鬼ごっこやドロ警、猛獣狩りなどの遊びで体を温め、試合の準備をする。
他から見たらふざけているように思えただろう。
でも、実力としては他に劣らない自負があった。これでもほぼ毎日練習はしているし、メンバーの結束が深い分チームワークがいい。何よりどこのチームよりもうるさいくらいに盛り上がって楽しくプレーしているから、私たちが1番強いと確信していた。
監督に怒られることもない。
ミスをしたら誰よりも大きな声で盛り上げるというルールのおかげで、試合中に凹んだりすることもない。
そんな私たちが関東1位になった時、他の大学から「なんであの大学が…あんなにふざけてるのに」という声が聞こえてきたほどだ。
・・・
婚約者の彼と暮らし始めて1週間以上が経った。
最近の私たちのルールは、お風呂の順番を「クアルト」というボードゲームで決めることだ。
今年の夏頃に彼が購入し、そのシンプルなルールとお洒落なビジュアル、そしてそこからは想像もできないくらい頭を使う「クアルト」にハマっている。
先に2勝したほうが、順番を決めていいというルールで食後のお楽しみになっている。
話し合いで決めたり、ジャンケンしたり、順番を交代制で決めたりしてもいいんだろうけど、やっぱりお互いが楽しい方がいいなと思う。
生活の中に「ちょっとしたゲーム性」を入れることは、心の余裕にもつながる気がしている。
ソフトボール部のアップのように、ちゃんと体を温めるまで鬼ごっこだのドロ警だの猛獣狩りをするのは時間はかかる。
最終的には全員で、本気のマイムマイムなんかをして無理やり体を温めることもあったけど、やっぱり「ちょっと楽しい」が散りばめられている方がいい。
大人も子どもも関係なく、遊び心は大切かと。
今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。