念願だった100歳の誕生日
今日は祖父の100歳の誕生日だ。
とは言え、すでに他界をしてしまっているので、「生きていれば」100歳の誕生日で、偉人風に言えば生誕100周年である。
祖父はある分野では有名人である。
すごい人だったらしい。
「あの方のお孫さんなのか」と感心されたこともあるが、そんなのは本当にごく一部の人だけだ。
それに、私から見る爺ちゃんは「すごい人」というイメージは全くない。
ちょっとお茶目で、少し変わってた。
ひょうたん水筒とヘチマたわし、尺八を作るのが上手でだった。尺八は吹くのももちろん上手で、何度教えてもらってもなかなかうまく吹くことができなかった。
漢詩を作っていたり、好きな作品を筆で書き、大きな掛け軸にして飾っているくらい書道も上手だった。
声が大きくて、朝の4:30にフライパンとお玉を持って起こしてくるようなこともあり、迷惑に思うこともあった。
でも、私が小さい頃はスーパーカブの後ろに乗せてくれた優しい爺ちゃんだ。
私たちが帰省するたび喜ぶだろうとお菓子をたくさん買ってきてくれていた。
薄皮クリームパン。
ポッキー。(何故かメンズ&極細)
ココナッツサブレ。
ブルーベリーガム。
どれも爺ちゃんが好きなものだった。
私とチキチキボーンを取り合うことも恒例だった。どれだけ取り合っても最後の一個は必ずくれる爺ちゃんだが、「はんぺん」だけは独り占めしていた。
私にも誰にも、一口も譲らなかった。
一度だけ「何故はんぺんだけはくれないのか」と聞いたことがある。
純粋に好きだということもあるが、爺ちゃんのお父さんも「はんぺん」が大好きで、独り占めをしていたという話をしてくれた。
その頃は滅多に食べれるものでもなかったので、小さい頃から憧れて食べたい気持ちがあったが、はんぺんはお父さんのものだから爺ちゃんはずっと食べられなかったらしい。
だから、大人になったら「はんぺん」だけは独り占めしてやろうと決め、婆ちゃんもそれを分かっているから必ず爺ちゃんの前にだけはんぺんを出していたんだとか。
夏休みのお小遣いは、将棋や囲碁で決められていた。もちろん普通にやっても勝つ事はできないのでハンデをもらって勝負をしていた。
勝ったら500円。
爺ちゃんはそのために500円玉を貯めていた。囲碁をやるときは、碁石を入れる容器の蓋に溜まった500円玉を入れ、勝負の際に私から取った碁石と500円玉でいっぱいになっていた。
将棋の時は、爺ちゃんの玉将を500円玉にしていた。それでも勝てない時は、歩を100円玉にして、将棋ルール無視の100円取りをしたりもした。
戦争の話もたくさんしてくれた。
そして、最後には毎回「一緒に戦い、散っていったあの仲間たちのためにも、わしは100歳までは絶対生きるのだ」と言っていた。
繰り返し、何度も。
・・・
仕事で遅くなってしまったが、今日はたくさん買い物をして帰ってきた。
薄皮クリームパンとポッキー(極細)、ココナッツサブレ、チキチキボーン、そしてはんぺん。
全部は食べきれないし、時間も時間なので…
はんぺんを独り占めしつつ、無口でポッチャリしていた私に「石臼」と呼んで笑っていた爺ちゃんを思い出しながら、100歳の誕生日を締めくくろうと思います。
今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。