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期待するという身勝手な行為

スタバのご当地タンブラーを集めていた。

これらは日本のものだけでなく、海外でも所謂「ご当地土産」とされており、私は国内外のものを合わせ13個のタンブラーを持っているが、その殆どは自分自身で買ったものではない。

だから集めていた、という表現は正しくないかもしれないが…。

様々な色や柄が描かれたタンブラーは魅力的であり、欲しい、集めたいと言いふらしていたが、旅行をほとんどしない。そんな私を見かね、家族や知人が買ってきてくれたものがほとんどである。

一つひとつのタンブラーを手に取り、私は買ってきてくれた人々を思い浮かべる。両親が初めて2人で海外旅行をしたロンドン、兄夫婦が結婚式を挙げたセブ島 、後輩が卒業旅行で行ったチェコ。

タンブラーを手にした時に、その人々の顔や土産話を思い出すことができる。

また 自分が購入したものも同様で、その時の思い出や誰と一緒に居てどんな話をしていたかなど、鮮明に思い出されるのだ。

・・・

スタバのご当地タンブラーなら、何でもいいというわけではない。

容器はプラスチック性で、日本には日本の、海外には海外に統一されたフォルムとデザインがあり、国によってカラーやイラストが違うものを集めていた。

ある時、仕事でテキサスに行く友人にお土産は何がいいかと聞かれ、スタバのタンブラーをねだったことがある。

実際テキサスの土産もよく分からないし、何でもいいといえばその友人が困ってしまうのではないかと思った。そして、この友人のセンスを信用していなかったこともあり、そういう面でも「スタバのタンブラー」というのは非常に便利なものだった。

いくつかのタンブラーの写真を見せ、もしもこれと同じシリーズがあったら欲しいと言った。

友人が帰国後、私にくれたのは陶器でできたタンブラーだった。

話を聞くと、私の見せた写真に似たものもあったが、こちらの方がデザインや色味が良く可愛かったからと話してくれた。

そこには、よりいいものをという友人の思いがあった。そして重い陶器のタンブラーをわざわざ買ってきてくれて、その思いや行為は本当にありがたいし嬉しかった。

ただ、家に帰ってからそのタンブラーを見つめ、小さなため息が出たのも事実である。

・・・

他人に期待するな。
高校生の時、部活の監督に言われた言葉だ。

友人にも、他人から期待されることを酷く嫌う人がいるのだが、その意味が少しずつ分かってきた気がする。

他人の行動によって作られる未来を想像することは、現実が思い通りにならなかった時、無実の他人に原因を作るに他ならない。それはあまりに身勝手な行為である。

自分は何もしない。
でも、自分が理想とする未来がある。
それを他人に作ってもらおうと願うのが「期待する」ということなんだと思った。

これからは「Texas」と黄色で書かれた陶器のタンブラーを見るたびに、他人への期待はしないことという戒めを思い出すことになるだろう。

今後も有料記事を書くつもりはありません。いただきましたサポートは、創作活動(絵本・書道など)の費用に使用させていただきます。