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日本の消費者物価指数にはなぜ上方バイアスがあるのか

消費者物価指数(CPI)は基準年を決めて計算する。
基準年は~0年or~5年に改定される。
消費者が日常生活で買うものの値段を総合しているので原油とか関係ない。
夫婦と子供二人という標準モデルを指数にしているので個人の実感とは差がある。
CPIは年金の給付額に影響する。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/rev_2005/data/rev05j14.pdf

CPIは固定基準ラスパイレス指数という算式で計算されている。

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式を見ればわかるようにウェイト$${w_i0 = p_it / p_i0}$$が基準年で固定化されている。

採用品目は家計の消費支出で重度が高く、価格変動を代表し、継続調査可能な598品目。
価格調査は毎月12日を含む集の水曜日か金曜日のいずれか一日に全国で実施。
翌月公表。

計測誤差の要素に
1. 代替効果
2. 品質変化・新製品登場
3. アウトレット代替
4. その他
がある。

代替効果とは似た品目に対して相対か価格が変動している品目に対しての影響を過小・過大評価して上方バイアスが生じるもの。
これは結局は固定基準ラスパイレス指数が支出ウェイトを固定している問題に帰着する。

例えば上位代替効果というものがある。
これは品目間の代替のお話。
コーヒーとお茶の嗜好品を考える。
これらは互いに代替品。
仮にコーヒーの値段が上がると消費者はお茶に移行するはず。
つまり現実では支出ウェイトが変化している=コーヒーのウェイトが下がるお茶のウェイトが上がる。
しかし計算式上はウェイトは固定なのでコーヒーの上昇効果が過大評価される。
すなわち上昇バイアス。

下位代替効果というものもあり、これは同一品目内におけるお話。
例えばコーヒーであってもメーカー、豆の種類などで複数商品ある。
計測方法として売れ筋商品一銘柄に絞ってるが、仮にこの一銘柄の同一品目代表性が弱いとバイアスが生じる。

品質変化も価格調整に含める必要がある。
つまり品質に変化があった場合は同じ値段でも実際の価格は名目分よりも上下することになるからだ。
以下の計算式で計算。

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ただし品質変化率は観測できないので推計する必要がある。
ここでバイアスが生じる余地がある。

新製品の影響も考慮する必要がある。
新製品は一般家庭にある程度普及した後に計測対象に組み入れられる。
ここにバイアスの入る余地が生じる。
なぜなら新製品は消費者にとって品質調整済みベースで相対的に割安であるはずである。
この状況では既存商品は調査対象外品目に対して相対価格が上昇する。
これが上方バイアスをもたらす。

アウトレット代替もバイアスをもたらす。
アウトレット店舗での購買は消費者にとって割安であるはずだ。
しかし調査上は店舗は固定されている。
すなわち上方バイアス。

他の問題でも計測誤差が起きる。
家計調査では単身世帯が除外されていて、専業主婦世帯の構成比が高く、主婦の把握しない夫・子供の支出がある可能性がある。
家賃については、新規賃料を計測せず継続賃料のみ含まれている、帰属家賃については民営家賃のデータが代用されているが質的に大きな差異がある、住宅の質的な部分が反映されていないなど。
医療費については、診療代・出産入院料・マッサージ料金・人間ドックしか入っていない。

計測誤差に関する推計では、品質変化・新製品が上方バイアスの最大原因、アウトレット代替の影響も大きい、低インフレで相対価格ばらつきが小さく上位集計代替バイアスは小さそう、ということがわかる。


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