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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #86_277

 月明かりに照らされた部屋。劉は見回す。壁の隅に事務処理用の台式計算机《デスクトップパソコン》。電源を入れ、劉は電脳の裏を覗く。猫《モデム》電纜《ケーブル》が電話線に繋がっていることを確認する。
 顕示器の光。月明かりに代わり、部屋の中を青白く照らす。網絡に接続しようと、劉は何度も試みる。たが無駄だ。認めざるをえない。徐が網絡を完全に封じたことを。
 椅子に座ったまま、劉はうたた寝を始める。はっと眼を覚ます。台式計算机《デスクトップパソコン》の画面。そこには、炎が燃えたぎっている。あの電脳病毒の日輪の炎。やがて炎は衰え、本文画面に切り替わる。そこには、こう記されている。
『不法訪問《アクセス》!この網端末は政府により管理されている。不法使用は厳罰に処せられる。直ちに使用を中止せよ』