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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #99_289

 暫く歩く。向こうで火の手が上がっている。その火に向かって散らばった残骸を放り込んでいる人影。テント村の住人たちだ。近づきよく見る。管理棟は焼け落ちた後だ。
「中の連中は?」劉は火事場見物の男に声を掛ける。
「さあね。逃げたか、それとも炭になったか?俺が来たときは燃えていた」
「爆弾だったのか?」
「さあね」
「開放されたってことか?」
「開放?ここから出られたらな。ここは、どんなところだかわかってるだろう?」男は劉を見てにやっと笑う。首をすくめると、劉はそこから離れていく。