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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #94_285

 数日後。僻地にある難民露営《キャンプ》。見渡すばかり、数千のテント、仮設住宅が建ち並ぶ。一万人近く収容者。そこに劉と薫陶は加わる。
 休みなく働く日々が続く。農地の開墾や灌漑作業に、収容者の多くが割り当てられている。
 ある晩、劉と薫陶は夜空を何気なく見上げている。遠くで殲撃機《攻撃機》の爆音。迫撃砲も響く。
 その時、閃光がテントを包む。続いて爆風が襲う。導弾《ミサイル》が着弾。テントや収容者の大半を吹き飛ばす。劉は薫陶に覆い被さり地面に伏す。劉の背中を熱風が吹き抜けていく。爆風が収まり、劉は身を起こす。背中がひりひり痛む。劉は背中に手を回す。衣服はぼろぼろに破けている。薫陶は気を失ったまま眼を開かない。