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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #92_283

「権力者が何を迷う?」
「権力者ならではの譲歩だ。昔馴染みの君たちへの」
「どうしろと?」
「政府は大規模な軟件《ソフトウエア》工場を立ち上げる。U自治区にあって少し遠いが。同房の連中は既に送り込んだ。二人と同じ、通信攪乱罪で引っ張った奴らだ」
「選択の余地はない、と言うことだな」
「利益交換《ギブ・アンド・テイク》だよ。楽な机上仕事かキツい労改送りか、選べるということだ」
「何が目的なんだ?」
「目的は達成された。旧政府の汚職や悪弊は排除した。経済開放政策も見直した。よその国の下請けの時代は、もう終わった。これからは、この国が技術的標準《デファクトスタンダード》になっていく」
「劉、君は協力してくれるだろう。それに薫陶も」
「協力しないと、どうなる?」