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【短編選集 ‡3】電脳病毒 #96_287

「劉、君は夢を見ていたんだよ。果てしない夢をね」
「電脳病毒は?」
「始めから存在しない。そんなもの」
「顕示器が熔け、この研究室は消失したはず・・・」
「見ろよ。何も変わっていない」
「今までのことは?」劉は改めて周りを見回す。煙の臭いを嗅ぎ取ろうと鼻腔を拡げる。
「故事《ストーリー》。俺の見果てぬ夢物語さ」徐は劉の肩を軽く叩き研究室を出ていく。
「待てよ」劉は徐の後ろ姿を睨む。
 
 背中に悪寒が走る。劉は眼を覚ます。
「劉さん、大丈夫?」薫陶の顔が覗いている。
「ここは?」
「テント村だよ。あらかた吹き飛んだけどね」